【元受付嬢CEOの視線】悲哀に満ちた「サラリーマン川柳」から読み解く ビジネス新時代の生き残り方

 
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 第一生命保険が今年も「サラリーマン川柳」の入選作100句を発表しました。平成最後ということで、今年は例年に比べてより多くのメディアで取り上げられていた印象です。

 今では毎年恒例となっていますが、もともとは第一生命の社内報の1コーナーだったとか…! 企業内部の小さな企画が社会の一つの文化になるとは素晴らしいことですね。いつか弊社からもそんな企画を世に出したいものです。

 さて、サラリーマン川柳の入選作を見ていると、心の嘆きを面白おかしく表現しているものが多いなと思いました。「お上手!」「あるある!」と思わず拍手を送りたくなるような作品もあります。

 今回はその中で、「職場」や「仕事」を詠んだ川柳を私なりに詠み手の感情や背景を独断と偏見で想像し(笑)、前向きになれる解説をしていきたいと思います。

共感したらヤバイ!?

人事異動 オレの後任 人工知能

 新元号になったら、こういう経験をする方も増えるかもしれませんね。実際、機械に人間の仕事がリプレイスされるという将来が少しずつ近づいてきていると思います。

 しかし、自分の仕事をすべて機械や人工知能に容易に置き換えることが可能だとしたら、それは今の仕事の仕方について見直す必要があるかもしれません。なぜなら、それは自分の“エッセンス”を入れた仕事ができていない、仕事に自分なりの付加価値を加えられていないといえるからです。

 これからどんなにテクノロジーが進化しても、人にしかできない仕事は残るでしょう。テクノロジーが進化するからこそ、人にしかできない仕事や価値も生まれてくるはずです。

 もしこの川柳に共感された方がいたら、ご自身の仕事の一部でも、機械に取って代わることのできない価値を提供できているか一度振り返ってみてください。

職場の目の付け所を「改革」せよ

効率化 提案会議で 残業か

 これもたくさんの企業で起こっていそうな現象ですね。「働き方改革」を実践するために、残業をなくしていくための会議で残業が増える…みたいなことですよね。「何のためにこの会議をやっているんだか…」なんて思って参加していたら、そこでは何も生まれず、単純に余計な仕事が増えるだけです。

 効率化を図るためにはまず、自分の会社のどこが非効率なのかを把握するべきではないでしょうか。どうせ会議に時間を費やすのなら、効率化の提案よりも先に、非効率な部分を洗い出す会議をするべきだと思います。その非効率のために何が犠牲になっているのか。これを把握すると働き方改革は道が拓けると思います。

身につまされます…

「夢を持て」 そういう上司(あなた)も 夢見せて

 この句を読んで耳が痛いという方は多いのではないでしょうか。実際「夢を見せる」って誰に対しても難しいですよね。でも、ついつい部下や若者たちの口にしたくなるセリフだと思います。

 これは私も考えさせられる一句でしたが、ふと立ち止まり、自分の会社で働いてくれているメンバーに夢を見せられているか? と自分と向き合えました。自分では伝えているつもりで、「言わなくてもわかってくれるだろう」ではいけないですね。

 壮大な夢でなくとも、ここでは「夢=目標」という解釈でいいのかもしれません。「一緒にその目標を達成した先にはこんな世界が待っている」といったことであれば、部下や後輩にも伝えやすくなるのではないでしょうか。私も実践していきたいと思います!

立場より仕事

再雇用 昨日の部下に 指示仰ぐ

 実際のところ、「再雇用」はうまく機能しているのでしょうか。よほど残ってもらってその人にお願いしたい仕事がない限り、難しい制度という印象です。

 過去に、起業家の先輩が「俺は今の会社をクビになっても(社長なのに)、また自分の会社で働きたい。なぜなら自分が職場のメンバーたちと共にやってきた仕事がとても素晴らしいものだったから」とおっしゃっていたことを覚えています。きれい事に聞こえるかもしれませんが、私もこんな風に言えるようになりたいと思いました。

 素晴らしいチームで素晴らしい仕事ができていれば、自分がどうしてもやり遂げたい仕事であれば、たとえ自分の立場が納得のいくものではなかったとしても現場に残りたいと思えるということだと思います。

 今の私は同じことを言えると思います。「誰と仕事をしている」ということより「どんな仕事をしている」のほうが私にとってはとても重要だからです。もちろん、一緒に仕事をしている仲間は誇りですし、「この人と一緒に仕事をし続けたい」と思うこともあります。しかし、こればかりはどうしようもありません。それぞれの人生です。ずっとこの時間が続くことは非常に難しいことも承知しているからです。

 これからの時代、「組織」において、上司から部下へ一方通行の指示よりも、部下から意見を吸い上げて動ける上司なのかどうかが重要視されるのではないでしょうか。

◇◇◇

 サラリーマン川柳、こうしてみると本当に奥が深いです。

 さらっと読んでも十分楽しめますが、こうしていくつかの句にフォーカスしてみると普段見落としがちなことに気付けます。これも、こうして毎年話題になっている理由かもしれません。

 平成最後の大賞はどの句になるのでしょうか!? きっと平成という時代を象徴する川柳になり、語り継がれることでしょう。

【プロフィール】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社代表取締役CEO

1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら