就活生、カジュアル化 「人柄分かる効果」服装自由の企業4割

 
シナジーマーケティングの会社説明会で社員(右端)の話を聞く私服やスーツ姿の学生=昨年12月、大阪市

 就職活動中の学生のスーツ離れが進んでいる。ジャケットとスラックスなどを組み合わせた「オフィスカジュアル」だけでなく、ジーンズ姿も。企業が説明会の参加者に「服装自由」などと呼び掛けており、人事担当者は「人柄が分かる」と効果を話す。かつては「リクルートスーツ」と呼ばれる地味なスーツ姿が大半を占めたが、クールビズの普及など社会の変化を背景に服装も様変わりしている。

 情報通信業のシナジーマーケティング(大阪市)が昨年12月、大阪市で開いた説明会。「服装自由」としたところ、就活生約30人はセーターやカラーシャツ、ジーンズ、スニーカーなど思い思いの服装で参加した。シャツにパーカを重ねた大阪大3年の秦将也さん(21)は「就活用の服はなるべく買わずに費用を節約したい。参加者同士で打ち解けやすい」とリラックスできた様子だ。説明役にはチノパン姿の社員もおり、採用担当者は「型にはまらない学生の素顔が見られた」と手応えを感じていた。

 別のベンチャー企業の担当者は、大学名や成績よりも人柄や能力を重視する傾向が強まっていると指摘する。「画一的な服装に疑問を持つような人こそ欲しい人材だ」と話した。

 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアの昨年8月の調査では、過去1年間で採用面接や会社説明会に「服装自由」や「私服でお越しください」と指定したことがある企業は約4割に及んだ。同社の「就職みらい研究所」の増本全所長は「服装の自由度が高いと、学生がTPOに合わせた立ち居振る舞いができるか見極めやすい」と話し、企業にメリットがあると強調する。

 ただ就活生としては採用側の本音が気になる。「服装自由」と指定した場合、どんな服装を想定したかを人事担当者に複数回答可で尋ねると「オフィスカジュアル」が55.6%で首位。「その人らしさが伝わる普段着」も34.5%を占めたが、「スーツ」も42.7%に達した。IT関連やアパレルは服装の自由度が比較的高いなど、志望業種や社風に合わせた対応が求められそうだ。

 紳士服大手のAOKIによると、就活生の服装のカジュアル化が「ここ2、3年で進んできた」(担当者)。就活生向け販売の学習会の教材に、平成28年度から「オフィスカジュアル」の項目を盛り込んだ。「要望に応じ、普段着としても使えるものを薦める」(同)という。

 採用コンサルタントの谷出正直さんは「社員の服装が多様化する中で、個性が出やすい服装を好む傾向が企業と学生の双方に広まっている」と分析した。