【エンタメよもやま話】AIが仕事の自動化を加速 米国では3600万人以上が失職か?

 
JR大阪駅で行われたAI技術を活用した案内システムの実証実験。シンクタンクも変わる?=昨年10月、大阪市北区(柿平博文撮影)

 今回ご紹介するエンターテインメントは、オートメーション(自動化)とAI(人工知能)に関するお話です。

 産経ニュース2014年3月30日付の本コラム「記事3分間で完成“ロボ-ジャーナリズム”…あらゆる職業の半数が機械任せとなる“驚愕の未来”」でご紹介したように、英国オックスフォード大学が2013年9月に発表した研究・調査結果によって、昨今のロボット工学や人工知能(AI)の飛躍的な進化によって、米国では702種類の職業のうち、約半数にあたる47%の職業が10年から20年後、機械化される可能性があるとの報道がありました(2014年3月22日付の英紙ガーディアン電子版など)。

 いま、AIがもたらす将来の産業構造の激変が、さらにはっきりしてきたのです。今週は、AIがもたらす未来についてご説明いたします。

 あなたの仕事も、7割…

 AP通信を引用した1月24日付の米金融系ニュースサイト大手、マーケットウォッチやロイター通信、米経済誌フォーチュン(電子版)などが、米の有力シンクタンク、ブルッキングス研究所(米ワシントンDC)の研究調査結果を引用し、報じているのですが、米ではAIが既存の仕事の自動化をさらに加速化させることで、2030年までには、全労働者の4分の1にあたる約3600万人の仕事が無くなる可能性が極めて高く、残りの約75%の人も自分の仕事が他の人に取って代わられたり、ロボットや自動化機器に置き換えられる危険性にさらされるとしています。

 実用化に向けた計画が世界で進んでいるAIを搭載した自動運転車や、「アマゾン・ゴー」のようなAI技術を駆使したレジなしの無人店舗、米グーグルが実験をスタートさせている数カ国語に対応可能なAI搭載型の音声アシスタントによるホテルのロビーの無人化といった技術が本格的に普及すれば、われわれの仕事がどんどん自動化され、職が無くなってしまうというというのです。

 ブルッキングス研究所が1月24日に発表した108ページに及ぶ研究調査報告書「オートメーション(自動化)とAI 機械が人々や、その仕事にどんな影響を与えているのか」では、全米の約800種類の職業にAIとロボットがどのような影響を与え、今後、こうした職業に就いている人々と彼らが住む地域やコミュニティーにどんな影響を与えるかについて研究・調査しています。米シンクタンク、マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の過去の研究結果も参照しながら、1980年から2016年という過去と、2016年から2030年という未来について、詳細にリポートしています。

 それによると、2016年時点の米の全労働者1億4500万人のうち、今後、AIが仕事の自動化をさらに加速化させ、全体の25%、約3600万人が2030年までに7割以上というかなり高い確率で今の仕事を失い、36%の約5200万人が3~7割の確率で失職。残りの39%も低い確率ではあるが無職になる可能性があることが判明したとしています。

 AIに奪われにくい職種は…トランプ大統領お膝元では…

 例えば、食品の製造・加工に携わる仕事(平均年収2万3000ドル=約250万円)だと、AIやそれを駆使した自動化機器に置き換えられる確率は91%。製造業(平均年収3万7200ドル=約410万円)が79%、軽トラックや配送車の運転手(平均年収3万5000ドル=約385万円)が78%、農業、漁業、山林管理業(平均年収2万7800ドル=約300万円)が56%、建設・採掘業(平均年収4万8900ドル=約540万円)が50%-といった具合なのだそうです。

 一方、職を失う確率が低かったのは経営アナリスト(平均年収9万2000ドル=約1000万円)で4%。コンピューターのソフトやアプリの開発者(平均年収10万5000ドル=約1千150万円)が8%、教育関係や図書館司書(平均年収5万4500ドル=約600万円)が18%、メイドやハウスキーパー(平均年収2万4000ドル=約260万円)が18%、建築・エンジニアリング(平均年収8万4300ドル=約930万円)で19%-なのだそうです。

 さらに、この報告書によると、米国の中でも、保守的で伝統的な価値観を尊ぶといわれている中西部を中心とした19州で、こうした“失業リスク”が最も高かったというのです。前述のロイター通信などは、米大統領選で、保守・共和党のドナルド・トランプ大統領の大票田となったこうした州では、製造業などに就いている人が多く、AIがマネジメントを担うことで仕事の自動化を加速させ、今の仕事を奪われる確率が47%であることが分かったとしています。ウィスコンシン、オハイオ、アイオワの3州では、全職種のうち、近い将来、自動化される仕事が全体の27%と4分の1を超えているというのです。一方、ニューヨーク州やメリーランド州といった、リベラルな民主党を支持するといわれる東部の沿岸州では、失業リスクにさらされる職業は全体の5分の1なのだそうです。

 こうした失業リスクは米中西部に加え、インディアナ州やケンタッキー州といった米北部五大湖周辺の各州にまたがる「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の小都市を直撃。例えば、人口25万人未満の小都市に暮らす平均的な労働者の場合、今の仕事の48%が自動化されるかもしれないといい、インディアナ州のココモやノースカロライナ州のヒッコリーといった小規模な工業都市では、将来、自動化が可能とみられる仕事の割合が55%と半数を超えているそうです。

 カナダ・トロントのヨーク大学のマティアス・コルテス助教授は、前述のマーケットウォッチに「明らかな“勝者と敗者”が出てくるのは間違ありません」と警告しています。今回の報告書は、ほとんど影響を受けないのは、高度な教育関係の仕事や対人関係において高度な技術を求められたり、人々の感情に訴える知性が必要な仕事だけだと明言。AIが仕事の自動化を加速させることによって、全米のほぼ全ての産業は、数年後、混乱に陥るだろうと警告しています。

 州や都市、小規模な地域社会がこうした危機に対応するための戦略として、経済成長を促進するためのテクノロジーの採用や現在の労働市場を再編成するための投資、低賃金の仕事に就く人々への支援の拡大などを挙げています。日本でも将来、こうした対策が求められるときがくるかもしれません。(岡田敏一)

 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュースで【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。