【働き方ラボ】人事異動で抜擢…経営側の狙いや管理職を考察し「なりたい上司」を考えろ
春だ。フレッシャーズシーズンである。ちょうど勤務先の大学での卒業式が終わったばかりだが、来週には早くも入社式だ。会社に新人が入ってくる。(常見陽平)
理想の上司と言うけれど
新入社員に関する調査結果の発表が相次ぐ時期でもある。明治安田生命の「理想の上司」アンケート調査も名物企画の一つだ。2019年春の新入社員を対象とした調査が2月15日に発表された。理想の男性上司1位は内村光良(昨年1位)、2位はムロツヨシ(昨年ランク圏外)、3位は同率で博多大吉と設楽統(二人とも昨年13位)、理想の女性上司1位は水卜麻美、2位は天海祐希、3位は吉田沙保里だった(女性上司は1位から3位まで昨年と同順位で顔ぶれ変わらず)。
自分からテーマをふっているのにも関わらず申し訳ないのだが、私はいつもこのランキングを冷ややかな視線で傍観している。というのも、アルバイト、インターン以外で働いた経験がない新入社員に対して、理想の上司を聞いても単なる人気投票になりがちだからだ。実務経験があれば、選択する基準も変わってくるはずだ。たとえば、入社後に調査すると、一見すると厳しくても成果を出すことにこだわる人などの評価が高くなる可能性がある。
また、その前年の活躍や認知度に左右されがちである。1位の内村光良は2年連続で紅白歌合戦の総合司会を務めたし、バラエティ番組の司会も務めてきた。ランク外からの大躍進となった2位のムロツヨシは、ドラマ「大恋愛」で病気を患った妻を支える夫役を演じたことで大ブレークした。要するに、調査前に露出が多かった、高感度の高い著名人から選んでいるのではないか。
もっとも、中長期で見ると変化のようなものも見えなくはない。経済環境が悪化したり、大震災などの国難があった場合は強く、実行力のあるリーダーが求められる。最近は、優しく、面倒見がよく、様々な人を巻き込む、包み込むようなリーダーが人気を集める。内村光良が受賞したのは、そういうことだろう。
この「理想の上司」ランキングは、データの取り方の特性を理解した上で読まなくてはならない。あくまで意識調査だ。とはいえ、どんな上司が求められるのか、大まかな流れを掴む意味では参考にはなる。
あなたは、どんな上司になりたいか?
このランキングをキッカケに考えたい。「あなたにとって理想の上司は誰か?」。さらには、「あなたはどんな上司になりたいか?」と聞かれたらどう答えるか?
「2つ上の役職の視点で考えろ」は、よく聞くサラリーマンの処世訓だ。「IQよりも愛嬌」「男のハイは、死んでもハイ!」「飲んだ翌日こそ一番に出社する」などこの手の処世訓は多々あり、中には昭和の匂いを感じるものや、今どき上司が部下に言うとパワハラだと言われそうなものもある。ただ、この「2つ上の役職の視点で考えろ」は単に、意識高く成長を促す言葉というだけではなく、会社を深く理解するための姿勢について投げかけるものである。別にえらくなれという意味ではなく、この視点で考えると、物の見え方が変わるのである。自分の仕事の意味がより深く理解できるし、言動の周りへのインパクトがよく分かるのだ。
前述したように、「新入社員(予備軍)が選ぶ理想の上司」なる調査には、限界がある。ただ、上司を自分の視点で考えるのは、自分のキャリアを考える上で有効だ。さらには、経営側はどのような管理職を求めているのかも考えてみると良いだろう。そう、会社は部下の視点だけでは動かない。経営側の論理も踏まえて考えなくてはならない。
特にこの春は経営側の論理を理解するチャンスである。人事異動で誰が抜擢されたのか?評価の高い上司は誰なのか?人事は経営からのメッセージだ。自社が今求めている管理職とはどんな人なのか。考察してみよう。
何より自分がどんな上司になりたいのかを考えてみよう。今までお世話になった上司を振り返ってみよう。他にも、取引先などで尊敬できる管理職はどんな人かについて考察するのも参考になるだろう。
このように、自分にとっての理想の上司とはどんな人か、自分はどんな管理職になりたいか。立ち止まって考えてみよう。
デキる管理職の観察日記のススメ
理想の上司像を考える上でのヒントとは何だろうか。もちろん、新入社員の「理想の上司」ランキングがそうであるように、ドラマなどの登場人物や、スポーツの選手や監督からヒントを得ることもできる。より具体的に、著名な経営者や、デキるビジネスパーソンから刺激を受けるのも良い。
ただ、個人的には理想の上司像と、そのマネジメント術などは直接見て、マネするのが一番だと考える。職場や取引先の管理職を観察し、仕事のすすめ方、褒め方や叱り方、職場での振る舞いを真似しよう。
なお、筆者は大学の教員をしているが、学生を指導する上では、会社員時代の上司のマネジメントスキルを真似している。お陰様で理想の上司とも言える人と働いた経験が何度かあり、その時のスキルが役立っている。
より具体的には、褒めるときは劇的に、かつ具体的に褒めること、難易度が高い課題についてはいかに乗り越えることが楽しいかを伝えヒントを与えること、指導するときは人格ではなくあくまで行為について具体的かつ簡潔に指摘することなどだ。課題提出の締切を守らせるために、納期についてさりげなくプッシュするのも、上司から学んだことだ。自分の一挙手一投足を通じて、プロのレベルの差を伝えることも、その一つである。
というわけで、理想の上司ランキングはあくまで面白がりつつ、理想の上司とはどんな人か、自分がそうなるために、何をするべきかを考えよう。4月1日が迫ってきた。新社会人がデビューする。あなたは、新社会人に対して恥ずかしくないレベルの仕事をしているか。成長しているか。この機会に胸に手をあてて考えてみよう。
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【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちらから
【プロフィール】常見陽平(つねみ・ようへい)
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。
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