1人焼き肉の「焼肉ライク」が郊外初出店 加速する「5年で300店」の野望

 
焼肉ライクの郊外1号店となる松戸南花島店

 「提供3分! バラカルビセット(ごはん、スープ、キムチ付き)570円~」

 3月29日、こんなのぼりを掲げる店舗がオープンした。

 ここはJR松戸駅(千葉県松戸市)から車で10分弱のところにある1人焼き肉専門店の「焼肉ライク松戸南花島店」。車の通行量の多い幹線道路沿いにある。もともとは、大手ラーメンチェーン「幸楽苑」の店舗があったが、改装して焼き肉店に生まれ変わった。

 この店を運営する幸楽苑ホールディングス(HD)は、牛角を創業した西山知義会長率いるダイニングイノベーションとフランチャイズ契約を締結している。焼肉ライク松戸南花島店はフランチャイズ契約の締結後、初めてオープンした店だ。また、ダイニングイノベーションがこれまで都市部に出店してきた焼肉ライクの郊外1号店となる。「5年で国内300店」という目標を達成するには、郊外型店舗の成功がカギになる。

 郊外型店舗は都市部の店舗とどのような点で違うのだろうか。オープン当日に行ってみた。

 1人焼き肉の仕組み

 まず、焼肉ライクのビジネスモデルについて解説しよう。

 焼肉ライクはファストフードのようなスタイルとなっている。店内には1人1台の無煙ロースターが導入されており、いつでも好きなときに1人で楽しめるようになっている。お客の注文を受けてから3分以内に提供できるように、メニューはあえてシンプルにしている。2018年8月にオープンした新橋本店(東京都港区)の場合、「うす切カルビセット(100グラム)」はごはん、スープ、キムチがついて530円(税別)から提供している。サイドメニューの数も通常の焼き肉店より少なくしている。

 お客の滞在時間は25分(通常の焼き肉店の4分の1)になるよう設計している。「低単価、高回転」を実現することで、肉の原価をアップさせ、お客の満足度を高める。また、高回転を実現することで、炊き立てのごはんを提供する狙いもある。

 セットメニューに加え、さまざまな肉の部位を50グラムや100グラムといったように、お客の好きな量で注文できる「カスタム焼き肉」もアピールポイントだ。店内はスタイリッシュな内装にしており、お客全体の35%を女性が占めているという。このように、スピーディーに、安く、自分の好きなように楽しめる業態が焼肉ライクなのだ。

 焼肉ライクは東京都内に3店、横浜市に1店オープンしており、松戸南花島店は国内5店目となる(19年3月末時点)。海外への出店準備も進めており、4月中に台湾とインドネシアにそれぞれ1号店がオープンする予定だ。西山会長は18年に「今後5年間で国内300店舗を目指す」と語っている。

 郊外店の特徴

 郊外店は都心部の店とどのような点で異なるのだろうか。

 松戸南花島店の店舗面積は約138平方メートル、席数は50席超となっている。駐車場は28台分ある。

 無煙ロースターが1人1台ある席もあるが、ファミリー層の来店を促すため、半分以上がゆったりと座れるファミリー席になっている。ファミリー席では、2人で1台の無煙ロースターを共有する。また、子どもが利用しやすいように席の高さを低くしており、子ども向けメニューを新しく用意した。具体的には、そぼろごはん、玉子スープ、フライドポテト、から揚げ、ウィンナー、枝豆、ゼリー、ソフトドリンクがセットになった「お子様セット」(480円)や、「離乳食」(200円)などがある。焼き肉を食べたいという子ども向けには、「お子様ごはんせっと」(330円)を用意した。提供するメニュー数は都心部のお店より増えるが、「3分」という提供時間は超えないようにしている。

 幸楽苑を運営していたときよりも厨房スペースが狭くできるため、その分、店内のスペースを広くとった。1人で食べるテーブル席も、都内のお店より広くなっている。各テーブルにはタブレットがついており、席に着いたお客が自分で注文するメニューを選んで入力する仕組みは共通している。

 国内300店舗は達成できるか

 それにしても「国内300店舗」という野心的な目標は達成できるのだろうか。

 ダイニングイノベーションから分社化して新たに発足する「株式会社焼肉ライク」の有村壮央社長は、「FCについての問い合わせが殺到している」と自信を見せる。ただ、300店舗を実現するには、ロードサイド1号店となる松戸南花島店で成功する必要がある。有村社長は、郊外1号店をブラッシュアップさせ、全国に一気に広げようとしている。

 オープン初日には、限定メニューを目当てに100人以上が開店前に行列をつくったが、その真価が試されるのはこれからだ。