【ビジネスパーソン大航海時代】スマホでグローバルビジネス実現 クールジャパンと起業家~航海(7)
【ビジネスパーソン大航海時代】 今回は、大学生の時に掲げた「グローバルビジネスを手掛ける」を35歳を超えてから実現させた池喬(いけ・たかし)さん(OKKO代表取締役)についてお話させてください。
時代の変化を感じさせるメッセージのひとつひとつにインタビュアーの私は目から鱗が落ちました。
売上の80%はフランス語・英語圏から
女性を対象にしたエンタメスマホアプリ『ハニーマガジン』が好調です。私は投資業をおこなっていることから伸びはじめているサービスを知る機会は多くあります。
以前からクールジャパンと叫ばれていたものの、成功事例はなかなか聞きません。一体何があるというのか?
そのような中で、日本の週刊誌を彷彿とさせる日本のマンガを毎週連載というフォーマットでグローバルにスマホアプリで提供している『ハニーマガジン』は注目すべき存在です。すでに10億話が読まれているといいます。
従来の雑誌と異なるのは徹底したスマホ対応。たとえばスマホの利用シーンを考え、3分ほどのスキマ時間で読めるようにしていることや、各国の文化に合わせてコマ・セリフを変更しています。紙ではできない展開を縦横無尽に果たしています。
その結果、なんと日本よりも海外の売り上げ比率が高いらしい。これぞまさにクールジャパンです。
なぜこのような事業を企画でき、手掛けているのかを聞いてみよう。
冒険家のお父さんから生まれたビジネス挑戦マインド
海外でビジネスを手掛ける原体験は子供時代に遡るそうです。池さんのお父さんがきっかけとのこと。
「父は公務員をする傍ら、冒険家でもありました。日本のみならずベーリング海を渡る挑戦をするほどでした。子供心に父親はカッコいい存在でした。生活はしっかり整えたうえで他の人がやらないことを背中で示してくれていたのです」
やがてその子は大学に入ります。
「2000年の時でした。時はインターネットバブル。ヤフーBBを手掛けている会社がソフトバンクと知り、孫正義さん(会長兼社長)のプレゼンをPCで見たのです。スケールの大きさと様々な事業に挑戦する姿に衝撃を受けました」
お父さんの姿と孫さんの姿がオーバーラップしました。
「人がやらない未踏のことに挑戦していきたいと思いました。ひとつ目はインターネット、特にモバイル領域でいこうと。なぜならモバイル端末は当時使われていたPCが手のひらに乗ることになると理解していたからです。この領域で仕事を行うことは最先端になれますから。そして父のようにやがてはグローバルで勝負をしたいと思いました」
池さんはまずじっくりとモバイル事業を検討していきます。
「事業領域は決まりましたが自分が打ち込むサービスは決めていないわけです。そこで方針はひとつ。出来るだけ多ジャンルの会社のモバイル向けサイト制作を受託で行うということでした。とにかくたくさんの事業をインプットして自分が深堀りすべきサービスを決めていこうと思ったのです」
池さん自身は言いませんでしたが、私はこれもお父さん譲りだなと思いました。しっかりと地盤を固めながら、本来自分がやりたいことを戦略的に手掛けているということなのです。
「自分のコンサル先は、先方の実力もあって売上高が数十億円規模になりました。これを見たときにいよいよ自分のターン(順番)が回ってきたのだと思いました。協力した会社がここまでうまくいくのであれば、自分で事業を手がけるべきだと。将来的にグローバルでビジネスしたいという思いもあって、日本のエンタメ、特にマンガ・アニメ・映画というテーマでモバイルビジネスを手掛けることに決めたのです」
常識を疑うべき時代が来ている
そこからの池さんの展開スピードは早いものでした。
「今までの余力を活かして4本のモバイルゲームをリリースし、実績も出たので10の銀行から3億円の融資を受けることもできました。ガラケーからスマートフォンへのシフトに伴って、いよいよ念願のグローバル展開が出来る時代が来ました。国内だけのガラケーと違って iPhone や Android はグローバル配信が可能なのです。
その後も着実にストーリーコンテンツの制作と複数言語対応のノウハウを積み上げ、ついに昨年リリースしたのが『ハニーマガジン』でした」
グローバルビジネスであればグローバルプレイヤーから支援を受けることも夢ではないようです。米国でよく知られているスタートアップ支援機関500startupsにも評価されました。
「ようやくですが、学生時代に願ったグローバルビジネスが本当になってきました」
これから池さんはどこを目指すのでしょうか。
「このエンタメコンテンツ領域のひとつである動画ではNetFlixが市場を持ち始めています。しかし、私が手掛けているスキマ時間でマンガやインタラクティブアニメを見る市場はまだ誰も押さえていません。私は先日資金調達も行い、この市場のプラットフォーマーとして世界に名乗りを上げて挑戦していますから、日本の主要プレイヤーもどんどん協力してくれるでしょう。コンテンツが集まれば自ずとNetFlixのようなインフラになり得ます」
これは壮大・愉快な話ですね。池さんはなぜそんなに自由に考えられるのでしょうか?
「私は突拍子もないことは言っていません。継続して学び続けているだけなのです。学んで見えてきたことは、今の時代は過去と180度異なる状況が増えつつあるということです。事例を挙げます。大企業を見てみてください。1社での終身雇用よりも今や副業を推奨しています。それ以外にも、昔は遊びだと思われたエンターテイメントビジネスはモバイルの浸透とともに今や実業になっています」
「そしてもはや日本は豊かな国でもありません。グローバルの方が売上規模が大きい私のビジネスは、実は“順張り”なんです。過去の常識にとらわれると10年先には間違った方向に行ってしまうかもしれません。そんななか、持つべきは若い友達です。彼らと話をすると日本の変化が感じ取れますよ」
池さん、ありがとうございました。
【プロフィール】小原聖誉(おばら・まさしげ)
1977年生まれ。1999年より、スタートアップのキャリアをスタート。その後モバイルコンテンツコンサル会社を経て2013年35歳で起業。のべ400万人以上に利用されるアプリメディアを提供し、16年4月にKDDIグループmedibaにバイアウト。現在はエンジェル投資家として15社に出資し1社上場。
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【ビジネスパーソン大航海時代】は小原聖誉さんが多様な働き方が選択できる「大航海時代」に生きるビジネスパーソンを応援する連載コラムです。次回更新は5月1日の予定。
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