「調べもの」がビジネスマンのストレス? 働き方改革の盲点にも

 
※写真はイメージです(Getty Images)

 ビジネスマンの大半が「調べもの」にストレスを感じている-。オウケイウェイヴ総研(東京)がビジネスマンを対象にした調査からそんな実態が浮き彫りになった。日本全体では毎日1000億円超相当の賃金が「調べもの」に費消されていることも判明。企業の生産性向上に向けた議論や働き方改革の盲点にもなりそうな結果だ。

「調べもの」にかける時間は?

 オウケイウェイヴ総研は、国内最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」グループの研究機関。働き方改革関連法が今年4月より施行され、特に「労働時間」について焦点があてられている中で、社内業務における「調べもの」の実態に関して調査を行った。全国の20~50代の会社員(正社員)が対象で、回答者は1000人。

 1日の業務のうち調べものにあてている時間を聞いたところ、最も多かった回答は「1~2時間未満」(69.2%)で、「2時間以上」(30.8%)も3割に上った。平均は1.6時間だった。日本全体では実に1日当たり約1057億円相当の賃金が調べものに充てられている計算になる。

 仕事で調べものをしていて時間を取られてしまっていると思うかどうかも聞いた。「思う」と回答した人は、「とても思う」と「やや思う」を合わせて全体の62.9%を占めた。そのうち、仕事上での調べものによって時間を取られることにストレスを「感じている」と回答した人は、「とても感じている」と「やや感じている」を合わせて75.4%にも上っている。

 さらに、「調べものに時間を取られていると思う」と回答した人に、その理由を質問したところ、「新しい知識を多く必要とする業務のため」(57.6%)、「知りたい情報が一箇所にまとまっていないため」(56.4%)、「知りたい情報がどこにあるか把握できていないため」(32.4%)がトップ3を占めた。

調べもののツールはネットが圧倒的

 そして、仕事中に調べものをする上で職場に望むこととしては、「あてはまるものはない」(35.9%)を除くと、「社内ツール・システム関連の整備」(34.3%)と「社内の情報共有体制の整備」(34.0%)がほぼ同率で上位を占め、「情報収集の時間」(24.3%)、「社内外の資料拡充」(20.0%)が続いている。

 また、仕事中に調べものをする際に利用するもの・人を聞いたところ、「インターネット検索」(93.3%)が圧倒的な多数を占め、職場でのITの普及を背景に調べものは基本的に自力で行っていることもうかがえる。一方で、「職場の上司や同僚」(44.2%)も目立った。「社内にある新聞・書籍・雑誌など活字資料」は19.1%にとどまった。

 オウケイウェイヴ総研は調査結果について、「今回の調査により、多くの企業において従業員が業務上行っている『調べもの』が、改善の余地がある可能性が示唆された」と分析している。

 さらに調査結果を踏まえ、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は「現在、世界中で第四次産業革命が進行しており、テクノロジーによってリアルタイムに付加価値を出すことがさまざまな領域で可能となってきている」と指摘。

 そのうえで、「自社のさまざまな業務について、ヒトよりもテクノロジーの方が高い生産性を出せる業務、テクノロジーよりもヒトの方が付加価値を出せる業務を棚卸しし、テクノロジーでできることはテクノロジーを活用し、ヒトはヒトでしかできない業務に集中することが、自社の生産性を飛躍的に高めるには重要となるだろう」とコメントしている。

 「調べもの」が欠かせない学生や研究者だけでなく、ビジネスマンにとっても「調べもの」は仕事をするうえで大事で必要な社内作業だ。ただ、調査結果からは一般に想像されている以上に多くの時間が「調べもの」にあてられている印象も受け、企業の生産性の向上や、政府の推進する働き方改革においても、もっと注目されてもよさそうだ。(SankeiBiz編集部)