地方発26歳女性プロゲーマーの素顔 (上)ゲームが「部活」だった

 
ゲームの技の精度を磨いたり、対策を練ったりと、練習を重ねるたぬかな選手=大阪市福島区

 対戦型ゲームの勝敗を争う「eスポーツ」。2018年のジャカルタ夏季アジア大会で公開競技になり、海外を中心に人気が広がっている。その世界で格闘ゲーム「鉄拳」専門の女性プロとして世界で活躍しているのが、たぬかな選手(26)だ。「好きなこと」を仕事にした女性プロのパイオニアの素顔は、堅実に未来を見据えて技を磨く、ストイックな女性だった。(小松大騎)

 大会前は12時間プレー

 --今年でプロゲーマー3年目。eスポーツは昨年、新語・流行語大賞のトップ10に選出され、今後さらに注目を集めそうです

 たぬかな 正直に言うと、昔からゲームをしてきた人間としては「いきなりスポーツと呼ばれても…」という戸惑いはありました。メディアに取り上げていただく機会も増え、盛り上がりを感じます。

 --女性プロゲーマーのパイオニア的存在です

 たぬかな 女性プロとしては国内で2人目でした。そもそも、趣味の鉄拳でご飯が食べられるようになるなんて夢にも思いませんでしたね。「女子もプロとしてやっていけるんだ」と興味を持ってもらい、新たなプレーヤーが出てくればうれしいし、やりがいになります。

 --プロゲーマーの主な活動内容を教えてください

 たぬかな プロeスポーツチームと契約を交わし、国内外の大会に出場して賞金を稼ぎつつ、大会の実況解説やイベント、メディア出演などです。もちろん練習も欠かせません。私は国内外で年間約20の大会に出場しますが、大会前は1日に12時間くらい鉄拳をプレーして、技の精度を磨いたり、対策を練ったりしています。

 --12時間ですか。ゲームが相当好きでないと耐えられそうにありませんね

 たぬかな eスポーツ選手というより、ゲームオタクなんですよ。鉄拳をしない日はほかのゲームを8時間くらいしますし、自宅には大量のゲームソフトもある。最近は「プレイステーション4」のゲームをすることが多いです。

 --生活拠点はチームが用意した「ゲーミングハウス」ですか

 たぬかな 当初は家賃が安いし、ゲームに集中できるハウスで暮らそうと考えたのですが、チームで女性は1人で会社から「やめてくれ」と言われたので、一人暮らしです。チームワークが問われるゲームの選手たちはハウスで共同生活を送っていて、衣・食・住を共にしながら、ゲームに没頭する生活を送っています。

 父が大のゲーム好き

 --ゲームにはまったきっかけを教えてください

 たぬかな もともと父が大のゲーム好きで、小さいときから家に「スーパーファミコン」や「プレイステーション」がありました。当時はゲームセンターも盛況で、父がパズルゲーム「テトリス」がめっちゃ強かったのを覚えています。その父が夜中になると「いまからゲームやるぞ」と私たちを呼び、ホラーゲーム「バイオハザード」をプレーするのを、姉弟3人で観戦する日々でした。それで、小学校1年生くらいから自然とゲームをするようになりました。

 --私は「ゲームばっかりしないで勉強しなさい」とよく叱られました

 たぬかな 真逆ですね(笑)。私にはそれぞれ2つ違いの姉と弟がいて、同じ部屋だったのですが、テレビがあったので夜10時ごろになると3人で集まり、ゲームを楽しんでました。姉がやっていたスーパーファミコンの「ドラゴンクエスト」には熱中しましたね。

 --格闘ゲームと出合ったのはいつですか

 たぬかな 高校生のときです。高校を卒業したら就職すると決めていたので、建築科がある工業高校に進学しました。男子ばっかりで、27人中女子は3人だけ。放課後にゲームセンターに行って格闘ゲーム「鉄拳」をするのが男子の間ではやっていて、ゲーセンで男子が鉄拳をプレーするのをみてやり始めました。

 --“部活”感覚で鉄拳に打ち込んだ

 たぬかな そうです。みんなで放課後に制服を着たままゲーセンに通っていました。大勢の男子に混じって、制服をきた女子が格闘ゲームをするというおかしな状況で、プレーすると物珍しさから、ギャラリーができたり、写真を撮られたりしました。どんどん上達してきて、アルバイト代は全て鉄拳に注ぎ込みました。徳島に1プレー50円のゲーセンがあるのを見つけて、高校から片道45分かけてみんなで自転車で通ってました。部活動みたいで、本当に楽しかった。

 --女の子が毎日ゲーセンに通うのは、両親から心配されなかったのですか

 たぬかな ゲーム好きな父ですが門限は午後8時で、結構厳しかったです。学校が午後4時半に終わるので、平日は2時間程度しかプレーできませんでしたが、土日になると昼間からゲーセンに通っていました。そんな生活を高校卒業まで続けました。

 --なぜ、そこまで熱中したのでしょう

 たぬかな ゲーセンに通っていると、いろんな人と知り合えます。性別、年齢、肩書を問わず、鉄拳を通じて自分の世界観がどんどん広がっていくというか、知り合いが増えていきました。まさに「拳と拳を交えて友になる」みたいな感じです。鉄拳自体が楽しいというのもあったのですが、ゲーセンで知り合った人と連絡を取り合って、徳島県外のゲーセンに遠征して対戦するのがおもしろかった。ゲーセンに通った日々が、いまの自分のベースになっています。(下は明日掲載します)

 【プロフィル】たぬかな 平成4年11月、徳島県徳島市生まれ。同県立科学技術高校卒業。28年11月にプロeスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」(大阪市福島区)と契約し、国内2人目の女性プロゲーマーに。専門は対戦型格闘ゲーム「鉄拳」で、愛用キャラクターは「リン・シャオユウ」。昨年、サウジアラビアで開催の世界大会「マンガコン2018 鉄拳7 3vs3」で優勝。国内外で年間約20大会に出場している。

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