【働き方ラボ】10連休後の「五月病」対策、小さな変化を見逃すな 「充実した私」も注意

 
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 ゴールデンウィークがやってくる。いや、10連休がやってくるとも言う。みなさん、予定は決まっただろうか? どうせ、どこに行っても混むので、私はゆるりと過ごそうと思う。毎日娘とデートするのと、ライブに数本行くのと、映画を数本見るのと、アパレルのファミリーセールに行くのと、矢沢永吉の写真展に行くのと、積ん読になっている本を読むのと、お待たせしている本の原稿を書く以外はあまり予定が入っていない。

令和の10連休 五月病が多発の恐れ?

 それはそうと、10日も休むと、普通の生活に戻れるかどうか不安になってくる。ここから真面目な話をする。小中高では、このような長期休暇後の不登校や、自殺などの最悪の事態をいかに防ぐかが課題になっている。会社に置き換えると、五月病だ。五月病という病気は医学的には存在しないが、とはいえ、5月になると会社が嫌になったり、テンションが落ちたりする。4月になり、妙に意識が高くなり前のめりに物事に取り組んでしまう「四月病」の反動もあるだろう。

 新しい期が始まったばかりで変化も多い。昇進昇格、異動、転勤など環境の変化を経験した人もいることだろう。自分自身の変化がなくても、上司が変わったり、新人が入ってきたりという変化もある。このような変化は、本人にも変化をもたらすものなのである。

 五月病は、メンタルヘルスの問題につながることもある。いや、問題そのものだ。私も会社員時代に、五月病で苦しんだことがある。いや、それをこじらせ、心身の失調につながったこともある。

 早めに気づくこと、「五月病だ」で済ませずに、自分の変化に気づくことが大切だ。具体的な対策もだ。どうすればいいか。考えることにしよう。

小さな自分の変化に気をつける

 メンタルヘルスの問題で休職した経験、休職までには至らないものの体調不良でスローダウンした時期を意識的につくった経験から助言をさせて頂く。五月病対策には、自分の中の小さな変化に気づくということだ。

 「五月病かな、ちょっと憂鬱だな」と自覚している人だけでなく、「忙しい俺」「毎日が充実していて、楽しんでいる私」な人も注意してほしい。小さな変化、しかも当たり前のようなことの中に、心身の失調の兆しがある。

 例えば、酒の量だ。「ついついこの時期は飲む機会が多くて」「夜、遅くなるので思わず飲んでしまう」など、いかにも自然な変化に見えるが、それは偶然ではなく、実は自身が酒を欲しているということだ。ストレスなどがたまっている証拠である。

 酒を飲むと朝が辛くなる。しかし、朝が辛いときは、そもそも職場のことが嫌になっている証拠かも知れない。深酒のせいかと思っていると、判断を誤ってしまう。

 よくタクシーを使ってしまうのも悪いクセだ。「ちょっと贅沢しちゃったな、まあいいや」と思いつつ、実は電車に乗って会社に行くという行為そのものを嫌いになっているのである。

 ボーナスも近づいてきた。ボーナス一括払いでついつい買い物をしてしまうのも、疲れている証拠である。

 休み時間が微妙に長くなっていることにも注意してほしい。疲れている証拠だ。

 よく「楽しい仕事なら頑張れる!」というフレーズがある。ただ、無理してしまっているケースもある。環境が変わり、頑張りすぎて疲れていないか。

 やや余談だが、最近では、タイムカードの打刻の変化をAIやビッグデータを活用して分析し、誰が離職しそうかリスクを調べるサービスもあるという。

 離職リスクを察知するのだ。HRテックの時代だが、このようなサービスが出るということは、それだけニーズがあるということだろう。

 自分の、さらには職場の同僚や部下(いや、上司さえも)含め、五月病の対策には、このような小さな変化に気づくべきである。何か変化が起こっていないか?

小さな成功を認識してみよう

 春を迎え、新しい環境になり、戸惑っている人もいることだろう。特に異動を経験した人や、昇進・昇格した人はそうだろう。新しい業務や難易度の高いミッションをこなせず、気分が落ちる人もいるかもしれない。

 そんなとき、おすすめするのは小さな成功を発見するということである。大成功には至らなくても、小成功くらいはしていないだろうか。

 いきなり新しいこと、難易度が高いことを完璧にこなすことは無理である。ただ、自分の強みを活かして、何か他の人ができないことを成し遂げた体験、成長を感じたことはないだろうか。

 このような小さな成功体験は励みになるものである。いきなりは成功しなくても、小さな成果を喜びたい。テンパっていて気づかないかもしれないが、周りの人も心配しているし、応援しているものである。

 というわけで、小さな変化に気づくことこそ、五月病対策なのだ。所詮、仕事である。悩み過ぎずに前に進もう。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちらから

【プロフィール】常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長

北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。