伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。みなさんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。 第4回は「休み明けの憂鬱」がテーマです。今年は長いゴールデンウィーク(GW)でした。そのぶん仕事に行くのが憂鬱だという人も多いのではないでしょうか。
気分を前向きにする方法のひとつに、心の中の独り言(=セルフコミュニケーション)の改善があります。セルフコミュニケーションの改善は、いわゆるポジティブ思考とは違います。休み明けの気分を緩和する方法を試してみませんか。
休み明け「憂鬱を強く感じる人」とそうでない人の違いとは
日常生活と比べ、やりたいことに時間を使うことができた連休が終わり、やるべきことを優先する生活が始まりました。このような状態の場合、ほとんどの人が多少なりともストレスを感じるはずです。しかし全員が同じように辛いわけではなく、憂鬱を強く感じる人と、それほど感じない人がいます。その理由はなんだと思いますか。
仕事内容? 立場? 働く人との相性? たしかにどの要素もストレスに影響します。では同じ環境、同じ条件でも、憂鬱を強く感じる人とそれほど感じない人がいるのはなぜでしょうか。
ストレス研究で有名なラザルス氏とフォークマン氏は、出来事そのものよりも、どのように受け止めて行動するかが、心身の健康に影響するという理論を提唱しています。たしかに、同じストレスでも深刻な受け止め方をする人と、楽観的に捉えることができる人ではストレスの度合いは変わります。
休み明けに憂鬱を感じている人に試してほしいのが、少しだけ受け止め方を変えて、気持ちを楽にするということです。セルフコミュニケーションを変えて憂鬱な気分を緩和する方法をご紹介します。
ポジティブ思考だけではうまくいかない
私たちは毎日、無意識のうちに心の中でセルフコミュニケーションを行っています。例えば、休み明けに憂鬱だと感じる人なら「今日から仕事か。嫌だなぁ」「会社に行きたくないな」といったつぶやきを無意識のうちにしているはずです。いわゆるポジティブ思考を試したことがある人は、こういったつぶやきを打ち消して「楽しい!」「頑張るぞ」と考えようとします。しかし、ただポジティブな言葉に置き換えるだけのやり方では、効果は感じにくいはずです。
セルフコミュニケーションを変えるときには「嘘はつかずに」「少しずつ」というのがポイントです。「今日から仕事か。嫌だなぁ」というつぶやきが出てしまったのであれば、「休日は楽しかったな」や「仕事を頑張って、次はどこに行こう」といった、同意できる前向きなフレーズに置き換えます。強引にポジティブ思考をしようとしたときよりも、こちらのほうがストレス緩和を実感できるはずです。
心から同意できるような言葉が見つからない場合、同意できそうなことに「かもしれない」をつけるというテクニックを試してみましょう。「仕事があるからこそ休日が楽しい…のかもしれない」「ここをのりきれば仕事も楽しくなる…かもしれない」といった具合です。明らかに事実と違うことを自分に言い聞かせるのは難しいものですが、この方法を使い始めると、自分が納得できる前向きな側面を見つけやすくなります。
休み明けに試したいセルフコミュニケーション4選
ストレスの捉え方に影響を与える4つの要素(脅威性、嫌悪性、影響性、コントロール可能性)を考慮して、休み明けの憂鬱を緩和するおすすめフレーズを作成しました。ネガティブなつぶやきをしてしまった後に、付け加える形で試してみてください。
1.脅威をやわらげる
単に楽観的なフレーズをつぶやくのではなく、根拠となる理由をつけることで脅威をやわらげます。
▼おすすめフレーズ例:「そうはいっても、これまでやってきたのだから、またすぐに慣れるだろう」
2.嫌だと考えすぎない
嫌悪感情をそのままにしておくと辛くなります。嫌だと感じたらすぐに、変換しましょう。
▼おすすめフレーズ例:「でも、はじめてしまえば嫌な気持ちもなくなるだろう」
3.影響を少なくする
休み明けは仕事が溜まるといった事実は変えられません。しかしこれを自分にはあまり関係がないと考えることはできます。
▼おすすめフレーズ例:「大変そうだけど、俺は大丈夫じゃないかな」
4.コントロールできると感じる
ストレスの感じ方は、自分でどの程度コントロールできそうかという見積もりに影響を受けます。
▼おすすめフレーズ例:「まぁ、なんとかできるだろう」
しっくりこない場合には「かもしれない」をつけるか、同意できるフレーズにアレンジして使ってください。
休み明けのストレスはあたりまえ! 責めずに数日かけて回復を
厚生労働省の調査によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスがある人の割合は58.3%。主にストレスを感じるのは「仕事の量・質」で62.6%となっています(平成29年労働安全衛生調査)。
およそ6割の人が普段からストレスを感じています。それに加え、休み明けは規則的にこなしていたものを中断し、再度はじめるため、通常運転にもエネルギーが必要です。仕事がたまっているという意味でもストレスを感じやすい状況と言えるでしょう。
休み明けに憂鬱な気分になるのは、ごく自然なことですので、やる気が出ない自分や部下を責めないようにしてください。心のエネルギーが低くなっているときに、叱咤激励は逆効果です。
通常、休み明けの憂鬱は数日で回復しますが、積み重なっているストレスがある場合、長引いてしまう可能性もあります。その場合には、他者のサポートを受ける、対処レパートリーの拡充を考えるといったことも必要になります。
自分の心に耳を傾け、無理をし過ぎないよう注意しましょう。
【藤田尚弓の最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。【最強のコミュニケーション術】アーカイブはこちら