【働き方ラボ】なぜか「なかなか会ってもらえない俺…」 こうしてアポの命中率を上げよ

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 突然だが、あなたと会うことは、相手にとって有益なものになっているだろうか? 社内外でミーティングを設定する際に、相手がなかなか時間をとってくれない、アポ設定の返信が遅いなどということはないだろうか?

 あなたとのアポは面白いのか?

 「オレ、嫌われているかも…」

 このように疑心暗鬼になる人もいることだろう。たしかに嫌われているのかもしれない。ただ、嫌われているならまだわかりやすい。残酷なのは、別に嫌われてはいないが、アポの優先順位を下げられているケースだ。これまでのやりとりから「この人とのアポは有益ではない」と判断されてしまっているケースだ。

 これはプライベートでも同じである。友人・知人であれ、意中の異性であれ、食事などに誘っても返事が遅かったり、やんわりと断りの連絡がくる場合は、あなたが相手にとって優先順位が低い可能性があることを意識しておきたい。

 もちろん、相手が本当に忙しかったり、都合が悪い場合もある。相手が誰だろうと付き合いの悪い人、自分の時間を大切にするために公私ともにアポに対して乗り気ではない人もいる。

 しかし、自分に会う優先順位が低いのではないかと立ち止まって考えることをオススメする。その場合、これまでの仕事で十分な信頼を勝ち得ていないのだと心得るべきだ。特に、ミーティングで滑っていなかったか、振り返ってみよう。会っても有益ではないと判断されたから、アポが取りにくくなったというわけだ。

 もちろん、何がなんでも人と会う時間を増やし経験を積むという考えは否定しない。無知なりに相手に一生懸命ヒアリングすることによって、好印象を与える手もある。特に営業の若手社員に関しては、とにかく客先を回るようにと上司から指導されていることもある。

 ただ、その分、ガッカリの連鎖が広がっていたりしないか? 結果として自分や、自社の価値を落としていないか?

 一昔前に、セルフブランディングなるものが流行った。ただ、「盛った」プロフィールを作るよりも大事なことは、仕事での信頼を勝ち得ることだ。そのためにも、コミュニケーションの命中率、相手にとっての満足度を上げるべきなのだ。

 今回はこの、自分のブランド価値を上げるコミュニケーションとは何かということについて考えてみよう。命中率を上げるのだ。

 ネタ帳のススメ

 相手にとって「この人と会って得だ」と思われるためのコツとして、私はネタ帳を持つことをオススメする。まるでお笑い芸人のようだと思うだろう。ただ、これはビジネスの会話を弾ませる上でも、アイデアを生み出す上でも取り組むべきことなのだ。

 このネタ帳は、紙のメモ帳、ノートでも、スマホやPCのものでも構わない。何か面白い発見があったら記録する。ただ、それだけだ。たまに読み返すと発見があるのだが、別にそうしなくても良い。ネタ帳をつくり、記録するという行為そのものが、情報感度を高めるし、発想に良い影響を与える。

 私は、モレスキンの手帳と、EVERNOTEをネタ帳に使っている。気になる話があったらメモしたり、クリップするようにしている。

 単に集めるだけではなく、誰にどの話をしたら響くかをいつも考えている。しかも、単に面白い小話にするのではなく、相手にとって有益かどうかを意識している。

 仕事柄、経営者、人事部や広報部の社員、官庁や自治体に勤務する公務員、メディア関係者と会うことが多い。彼らが関心がありつつ、生の情報を仕入れることができていないのは、就職・転職活動をする若者の実態、若者の就労意識だ。普段から大学での接点や、取材活動、このテーマに関する情報収集をもとに、伝える。それが相手にとってどういう意味があるのかを意識しつつ、ポイントを話す。この積み重ねにより「わかっている人」「有益なネタ提供をしてくれる人」として認識されるようになる。

 私の場合は、テレビやラジオの仕事が増え鍛えられた部分もある。ただ、会社員時代も、売れる営業マンほど情報が豊富で、有益なネタ提供を行っていた。

 仕事に関係ある分野でも、それ以外でも構わないので、ビジネス用に滑らない話をストックしておこう。きっと会話を弾ませるきっかけになるし、情報感度も研ぎ澄まされるはずだ。

 相手をとことん理解する

 コミュニケーションの命中率を上げるにはどうすればいいか。当たり前のことであるが、相手はどんな人で、何に困っていて、何をしてもらうと嬉しいのかを考えてみよう。

 初回訪問の前に、その企業のことや、その人のことを可能な限り調べておいた方が良いことは言うまでもない。もっとも、事前に調べたことで相手について決めつけてしまってはいけない。あくまでイメージする材料とする。また、いかにも「ちゃんと調べましたよ」とアピールするのも良くない。事前に調べた上で、あくまで教えて頂く姿勢で質問をする。自分が話す量を減らし、相手に7割は話してもらった方がよい。

 このやり取りは、医者と患者の理想のコミュニケーションを目指したい。相手が何に敏感に反応するのかを見極めたい。

 何かを伝える際は、相手の立場を意識したい。立場といえば役職や年齢もそうだが、話題との距離を意識してどれくらい丁寧に説明するのかを考えよう。

 例えば、プライベートで親の介護や、実家の片付け、あるいは自身の成人病の話をするとしよう。相手がその当事者かどうかによって、話をどこまで伝えるかは変わってくる。当事者ではない場合は、前提から伝えなくてはならないし、相手が関心を持ちそうなポイントを中心に話すべきだろう。相手にとって、すぐに役にたつ話ではない。将来に役に立つ、あるいは身近な話題として役に立つように、切り口や表現方法を工夫して伝えるべきだ。

 ミーティングは常に真剣勝負だ。相手の言動を深く分析する時間にするべきだ。なぜ、そのような発言をしたのか、その意図は何か、それに対して自分の答の内容と伝え方は最適だったかどうか。いちいち意識してみよう。

 単にお互いの存在を確かめあうだけではなく、コミュニケーションが機能しているかどうか、命中率が高いかどうかがモノを言う。振り返ってみよう。

 このように、「会って得する奴」になることを目指せば、ビジネスもプライベートもうまくまわりだす。相手にとって得するアポになっているか、会話の命中率は高いか、立ち止まって振り返ってみよう。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちらから

【プロフィール】常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長

北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。