【ワークスタイル最前線】属人化の解消で意識改革 「日本型」脱却へ トップの旗振り重要
働き方改革関連法が4月に施行、仕事の見直しは待ったなしだ。トップの指導力、社員の意識改革が不可欠で、家庭生活を犠牲にしても仕事を優先させる「日本型」脱却に向け正念場を迎える。
所定労働時間を短縮
2008年から労使協議を本格化、改革を進めてきた大手食品の味の素。人事部の古賀吉晃さんは「17年4月が転換点だった」と振り返る。
テレワークやフレックスタイムを拡充してきたが、繁忙職場に効果は及びにくかった。08年度に約2000時間だった総労働時間は15年度1970時間台で高止まり。しかし、17年度までの2年で約130時間減少した。
きっかけは17年度、7時間35分から同15分へ20分間、所定労働時間を短縮したことだった。午後4時30分に終業、家族と夕食をとりやすくなった。業務の進捗が他メンバーにも分かるようにして仕事の属人化を解消、働き方を見直す意識、風土が醸成されたという。20分の所定時間短縮は月1万4000円分の金銭価値で、管理職を含め全社に波及。5000円のベースアップも実施、手当を集約し計1万円を月の基本給に上乗せした。
リードしたのは15年に就任した西井孝明社長だった。ブラジルに赴任時、社員が家族との時間を大切にしていた。「日本特有の働き方を打破しないとグローバル企業にはなれない」。改革で生み出された原資は人材育成など従業員に還元する。
労組の前田修平事務局長は「職場で対話を続け、会社と組合が一緒に取り組んできた成果だ」と強調。その上で「取引先、グループ企業にしわ寄せがないようにせねば」と指摘、改革の流れを社外に広げたい考えだ。
IT大手のSCSKは、技術者が難しい仕事を抱え込んだりトラブル対応に追われたりして、長時間労働を迫られるシステム会社特有の悩みから脱却しようと、12年度から改革を進めてきた。当時の中井戸信英社長が昼食後にオフィスで疲れて寝ている社員を見て、健康でないと良いサービスはできないと健康重視へかじを切った。
取引先のシステムは24時間稼働、「夜遅くまでいる」「休まない」社員が高く評価されがちだったが、長時間労働の是正へ全社で意識を改革。個人の業務を「見える化」して社員間で共有、自宅の個人パソコンでの遠隔操作による作業を推進し、育児や介護をしながらでも働きやすくした。
所定時間を7時間40分から10分短縮し、社員には月20時間の残業代を固定支給(超過分は別途支給)。残業は08年度の月平均35時間から17年度16時間強に減少、有給休暇取得は13日から約19日に増加した。営業利益は10年度の140億円から増加を続け17年度346億円となった。
取引先企業に対しては「社員の計画的有給休暇取得に関するお願い」の文書をトップ名で送付、理解を求めた。取引先の反応が懸念されたが、自社の参考にするため取り組みを聞かれるという。人事グループ労務課の南政克課長は「トップが強く旗振りして、組織的に進めてきたことが大きかった」と指摘する。
定型作業は自動化
パソコンによる業務負担を軽減したい-。天然水の宅配会社プレミアムウォーターはソフトウエアで作業を自動化する「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」を昨夏、営業支援の部署に取り入れた。
導入したのはFCEプロセス&テクノロジーの「ロボパット」。専門のエンジニアがいなくても職場の業務担当者が簡単にソフトを作成でき、販売やキャンセル、解約のデータ集計、メール送信など日々の定型作業を自動化した。
6~10人が1日20~30分ほど携わっていた作業で月計約86時間の時短になった。勉強会を開き社員間で知識を共有、社内でさらに約60項目の作業の自動化を検討しているという。
山口佳奈事業管理課長は「人任せでなく、自分の工夫で効率化できることに担当者が気付いたことが一番の効果です。何となくルーティンでやっていた業務の整理にもつながります」と語る。
FCE広報室の安宅奈津子室長は「働き方改革は生産性を上げながら業務の見直しができるかどうかが重要で、企業の取り組みを後押ししたい」と語る。
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