【社長を目指す方程式】偉大な企業を創った経営者たちが絶対に妥協しない「3つの円」とは

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 こんにちは、経営者JPの井上です。

 新元号施行から2週間、新しい時代のスタートとして意を新たにされている方も多いかと思います。

 新元号「令和」の考案者とされる中西進 大阪女子大名誉教授はその元号の意味を「令(うるわ)しく平和を築いていこうという合言葉だ」と述べています。一方で経営者や識者の方々が想い想いの「令和」の意味についてコメントされ始めていて興味深いですね。

 拝見しますと、「規範の大切さを実感」「最新技術と匠(たくみ)の技の融合を図る時代」「人本経営が企業存続のための教科書となる」「サラリーマン・素人は平成をもって捨て去り、高度化・複雑化の一途をたどる最先端の経営インフラを使いこなす良識・ビジネスマインドのようなものを再構築する必要がある」などの言葉が挙がっています。

 平成での様々な社会課題や経営問題などを受け、令和の時代テーマとして「良識、見識ある事業」「規範・規律、人を活かす」「社会に対する使命の追求」などがあるように感じています。

 これを受けて私の頭に思い浮かんだのは『ビジョナリー・カンパニー』シリーズでの、あるコンセプトです。

 偉大な企業を創る経営者は、事業、ビジネスを進める際に、絶対に外さない3つのことがある。その著者、ジム・コリンズがそう述べている箇所があります。

 令和スタートにあたり、今回はこの部分に注目してみたいと思います。

 ビジョナリー・カンパニーを創るには?

 せっかくですので、『ビジョナリー・カンパニー』シリーズ全4冊についてまず概括してみます。4冊精読しますと数日を要すると思いますので、なかなかお得なまとめですよ(笑)。

 世界中を席巻した『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の法則』(原書名:BUILT TO LAST)が発売されたのは米国で1994年、日本版は1995年です。

 日本においてはバブル崩壊に喘ぐ時期、事業や経営の本質を見つめ直すものとして時宜を得る一冊だったのではないかと思います。

 永続して偉大な企業であり続ける企業は何が違うのか。その要素を「時を告げるのではなく、時計をつくる」「ANDの才能を活かす」「基本理念を維持し、進歩を促す」「社運を賭けた大胆な目標(BHAG)を掲げる」「カルトのような文化を築く」「大量のものを試して、うまくいったものを残す」「生え抜きの経営陣」「決して満足しない」「一貫性を追求する」ことにあるとしました。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ジム・コリンズ「針鼠の概念と三つの円」「弾み車を回す」

 経営者が座右の書として挙げることがおそらく最も多いのが、第2作『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(原書名:GOOD TO GREAT)です。私もまた、本書を初版で購入して以来、折々読み返す一冊です。

 発刊は2001年、ちょうどネットバブルとその崩壊というイベントがありましたが、ムードとしてはシリコンバレーベンチャーが続々とメガ企業へと至る初動の時期にあり、日本でもまたネット系を中心としたベンチャーブームに湧き、新進気鋭の企業が続々と登場し始めた時期でした。そんな中にあって本書が「普通の企業がいかにして偉大な企業へと変化し得るのか」を明らかにした書であり、起業家たちから大手企業経営者までが、「これから自社を偉大な会社にするには」の解を求めて貪り読んだという側面があったかと感じます。

 「第五水準のリーダーシップ」「誰をバスに乗せるか。最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」「厳しい現実を直視する。だが、勝利への確信を失わない(ストックデールの逆説)」「針鼠の概念(三つの円の中の単純さ)」「人ではなく、システムを管理する。規律の文化」「新技術に振り回されない。促進剤としての技術」「弾み車と悪循環」。これらにより、普通の企業、良い企業が、偉大な企業へと至る。ジム・コリンズは、本書をまとめてみて「これは『ビジョナリー・カンパニー』の続編ではなく、前編なのだと気が付いた」と述べています。

 ビジョナリー・カンパニーから転落するとき、復活するとき

 『ビジョナリー・カンパニー1・2』で名声を得たジム・コリンズでしたが、同時に様々な批判も受けることとなりました。その大きな理由が、この2冊で紹介された事例企業の幾つかが、その後「偉大ではない企業」に転落したからです。これについて追分析を行い、その衰退の理由を明らかにしたのが『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』(原書名:HOW THE MIGHTY FALL:AND WHY SOME COMPANIES NEVER GIVE IN)です。そのリサーチは2005年から開始されましたが、出版された2009年(日本版は2010年)はおりしもリーマンショックに全世界が揺らぐ時期でした。

 いかに偉大な永続企業であっても、その原理原則を忘れればその座から転落する--第一段階として「成功から生まれる傲慢」に陥り、第二段階で「規律なき拡大路線」に走り、第三段階として「リスクと問題の否認」が社内に蔓延し、第四段階には「一発逆転の追求」に走る。そしてついには、第五段階として「屈服と凡庸な企業への転落か消滅」が待っている、と。段階ごとに警鐘を鳴らしつつ、最後に、ここからどう復活し得るのかについても解明しているのがジム・コリンズらしいと思います。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ジム・コリンズ「針鼠の概念と三つの円」「弾み車を回す」

 現時点でシリーズ最新作となっているのが『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』(原書名:GREAT BY CHOICE)、発刊は米国2011年・日本2012年です。前3作から更に無秩序化する世界の中で、企業や経営者はどうそれを切り抜ければ良いのか。出版から7年が経ちましたが、まさに今私たちが最も知りたいことですね。そういう意味では現時点ではこの「4」まででビジョナリー・カンパニーシリーズが出すべき回答は提出されているとも言えそうです。

 ジム・コリンズは、不安定な環境下、脆弱な経営基盤からスタートし目覚ましい成長を遂げ偉大な企業になった企業を「10X(十倍)型企業」、それを率い成し遂げた経営者を「10X型リーダー」と命名。10Xリーダーは「レベルファイブの野心」を持ち、主要行動パターン「3点セット」を備えていると分析。3点セットとは「狂信的規律」(二十マイル行進)、「実証的創造力」(銃撃に続いて大砲発射)、「建設的パラノイア」(死線を避けるリーダーシップ)です。

 そして具体的で整然とした一貫レシピ(SMaC)を持ち、運の利益率(ROL)を高め、何より重要なことは「自分の意志で偉大になる」ことなのだと、ジム・コリンズは総括します。痺れますね。

 絶対に妥協してはいけない、3つのこと

 さて『ビジョナリー・カンパニー』シリーズ全4冊を概観し、偉大な企業の創り方、永続のさせ方、危機回避について見ましたが、中でもぜひ皆さんに、令和スタートに当たって特に着目いただきたい部分が、今回のテーマとした、事業をブレイクスルーさせる「3つの円」です。

 それは、

 「情熱をもって取り組めるもの」

 「自社が世界一になれる部分」

 「経済的原動力になるもの」

 の3つ。先にご紹介しました『ビジョナリー・カンパニー2』の中の「針鼠の概念と三つの円」がこれに当たります。

 「情熱をもって取り組めるのは何か。偉大な企業は、情熱をかきたてられる事業に焦点を絞っている。どうすれば熱意を刺激できるかではなく、どのような事業になら情熱をもっているかを見つけ出すことがカギになっている」

 「自社が世界一になれる部分はどこか(同様に重要な点として、世界一になれない部分はどこか)。この基準は、中核的能力(コア・コンピタンス)がどこにあるかよりもはるかに厳しい。中核的能力があっても、その部分で世界一になれるとは限らない。逆に、世界一になれる部分は、その時点で従事していない事業かもしれない」

 「経済的原動力になるのは何か。飛躍した企業はいずれも、鋭い分析によって、キャッシュフローと利益を継続的に大量に生み出すもっとも効率的な方法を見抜いている。具体的には、財務実績に最大の影響を与える分母をたったひとつ選んで、「X当たり利益」という形で目標を設定している」--ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』

 偉大な組織、企業はこの「単純で一貫した概念」に一致する優れた決定を幾つも積み重ねていくことで築かれるのだと、ジム・コリンズは断言します。

 これは、最近取り上げられることの多くなった「3つの輪」の企業版・事業版とも言えるでしょう。

 「やりたいこと」「できること」「求められること=結果として提供価値が出せること」の重なりの中に、個人であれ、組織・企業であれ、そのベストパフォーマンスが存在するのです。

 ジム・コリンズは、この3つを特定することについて一切の妥協を許していません。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ジム・コリンズ「針鼠の概念と三つの円」「弾み車を回す」

 特に難しいと思われるのが「自社が世界一になれる部分」です。針鼠の概念を確立しようとするときに、最も大切なことは、厳しい現実(「現状、世界一と言える部分はどこにもないし、これまでにもなかった」)を直視し、三つの円に基づく問いに導かれ、適切な人たちが活発に議論を交わすことです。

 事例として分析された偉大へと至った企業は、自社が世界一になれる部分を見いだすのに平均4年を要していたとのこと。私たちに求められることも同様に、信念を持って諦めず、自社の理念に基づき、これまでのものに固執せず、自社のGREATを見いだすことに全精力を注ぐ執念ではないでしょうか。

 「世界は変化している。この難題に組織が対応するには、企業として前進しながら、信念以外の組織の全てを変える覚悟で臨まなければならない。(中略)組織にとっての聖域は、その基礎となる経営理念だけだと考えるべきである」--トーマス・J・ワトソン・ジュニア(IBM2代目社長)

 偉大な企業を創るリーダーの、意外な姿

 これを外さず、PDCAをしつこくしつこく回すことで「劇的な転換がゆっくり進む」(ジム・コリンズ)結果、ブレイクスルーは起こります。

 意外なことに、ある局面から偉大な企業へと転換を遂げた企業の共通項はカリスマ経営者の登場でもなければ一発逆転の大ヒット事業でもなかったことを、ジム・コリンズはビジョナリー・カンパニーシリーズ4作で明らかにしました(逆に、カリスマ経営者の就任によるハロー効果的な短期的事業拡大や一発逆転大ヒット事業での売上急拡大は、数年後に同じ企業を概ね事業の急落と経営危機に陥らせているという事実を、私たちは認識すべきです)。

 偉大な組織、事業、企業を築く時に、決定的な行動や壮大な計画、画期的なイノベーション、たったひとつの大きな幸運、魔法の瞬間といったものがある訳ではありません。

 偉大な企業への飛躍は、地道で最初はなかなか動かない重たい弾み車を、正しいひとつの方向に押し続け、回転数を徐々に上げて勢いを増し、それがある時、突破の段階に入り、それでもなおさらに押し続けるということなのです。

 ジム・コリンズは『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で「第五水準のリーダーシップ」と表現していますが、これは謙虚さと不屈の精神、自分にではなく会社や社会に対する野心を持つリーダーだと言います。

 私もここ最近、クライアントの経営者各位や当社運営の経営者・リーダー向けサイト「KEIEISHA TERRACE」での注目社長インタビューでお話を伺っている経営者の方々から、まさにこの「謙虚さと不屈の精神、自社や社会に対する野心」を共通して感じます。

 令和時代に活躍するリーダー、社長になる人の条件とは、まさに、社会に対する提言やメッセージを強く持つ、謙虚さと不屈の精神で自社の弾み車を回す変革リーダーなのだと確信します。既に名前の挙がっている次代を担うであろう経営者の方々のご活躍に注目しつつ、これからデビューされる「第五水準・変革リーダー」の登場が楽しみでなりません!それはいま、このコラムをお読みのあなたかもしれませんね。

【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。

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【プロフィール】井上和幸(いのうえ・かずゆき)

株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO

1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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