働き方

就活解禁、学生内定率は既に5割超内定 企業、優秀人材確保に知恵絞る

 来春卒業見込みの大学生らに対する採用面接などの選考活動が1日付で、主要企業で解禁された。しかし学生の内定率は5月時点で5割を超え、過去最高。経団連の就活ルールに縛られない外資系企業やITベンチャーに加え、人手不足に悩む国内企業からの内定も進んでいるようだ。ルール順守を重視する企業も新卒一括採用に加え、キャリア(中途)採用や通年採用を拡大させるなど、優秀な人材の獲得に知恵を絞っている。

 本命はこれから

 「周りの学生の半分以上は内定をもらっている」

 1日に損害保険ジャパン日本興亜の面接を受けた私立大学4年の男子学生は今年の就活戦線について打ち明けた。別の男子学生も「流通や建設はがんがん内定を出している」と話す。

 就職情報サイトなどを運営するリクルートキャリアの調査によると、5月1日時点の大学生(大学院生除く)の内定率は前年と比べ8.7ポイント増の51.4%と、2012年に調査を始めて以来、過去最高だった。

 とはいえ、就職戦線は終盤戦というわけではなく、損保ジャパンの面接会場にも約800人が集まった。同調査でも82.1%の学生が内定獲得後も就活を続けるとしており、学生らは「本命はこれから」と気を引き締めている。

 一方、採用する側には「予想以上の(内定)早期化を実感している」(損保ジャパン人事部の福元利一グループリーダー)との危機感がある。損保ジャパンは今年から秋にも募集や面接を行う通年採用を本格化。29歳までを新卒扱いとし、「就業経験者でもう一度チャレンジしたい人、留学経験者らに幅広く門戸を開く」という。

 経団連と大学も4月、新卒一括採用に加え、通年採用も含めた多様な形態への移行を提言。三菱商事や三井物産はすでに欧州や米国などの海外の採用フォーラムなどにも参加し、優秀な留学生や外国人の採用を実施した。日立製作所は19年度採用実績で新卒650人中、外国人が10%弱、キャリア採用は300人にのぼった。三菱ケミカルホールディングスも一部で秋採用を始めている。

 企業が求める人材も変化している。人手不足に悩む建設業界は人工知能(AI)やロボット化による生産性向上が急務。清水建設は今年から建築や土木を専門とする学生だけでなく、機械や情報工学などの学生への接触も強化している。

 書類選考にAI活用

 人材獲得競争は人事部の仕事にも影響する。東京ガスは採用担当以外の部署からも応援を求めて面接官を増員。ソフトバンクは17年から書類選考の判定にAIを活用し、選考時間を75%削減した。今後は学生の公開データを集め、入社後に活躍した社員との相関性をAIなどで分析し、選抜することも検討している。

 企業にとっては離職抑制も課題だ。厚生労働省によると、新入社員の3割は入社3年以内に最初の会社を辞めるという。サッポロビールは12年、先輩社員が入社前の内定者とコミュニケーションする取り組みを開始。他の対策ともあわせ、22.9%あった入社3年後の離職率は昨年末時点で3.5%まで下がっている。

【用語解説】就活ルール

 経団連は学生への会社説明会は3月1日、面接など選考活動は6月1日、内定は10月1日と解禁日を決めた自主的な「就活ルール」を定め、会員企業に順守を求めてきた。しかし経団連に非加盟の外資系企業などが内定を前倒しする採用活動への不満もあり、2020年春入社(今の大学4年生)を最後に廃止される。21年春入社については政府がルールを決定。現行日程の順守を経済界に要請している。