今年も5月からクールビズが始まりましたが、みなさんの会社はどうでしょうか。地球温暖化対策の一環として、オフィスの温度適正化や気温に適した軽装を推進する取り組みですが、認知度はかなり高いようです。しかし、その「実態」はどうでしょうか。今回は受付嬢から経営サイドに転身した経験を踏まえ、「クールビズ」について考えてみました。
話が入ってこない… ノーネクタイは本当に失礼なのか
受付嬢時代、夏に汗だくで到着するお客様に対応することがしばしばありました。暑い中、スーツ姿やネクタイ姿でいらっしゃるお客様です。ご到着後、受付嬢としてお茶をお出ししますが、その時点でもまだ汗をかいていらっしゃいました。おそらく、お客様ご本人も汗が引かないことで商談に集中できていなかったと思いますし、聞いている担当者も話が耳に入ってこなかったと思います。
給茶で入室した際に、空調の温度を下げるように頼まれたことも多々ありました。しかし、最終的に、お客様ではなく担当者側が寒く感じてしまい、「早く話を終わらせたい」という気持ちになってしまうようでした。
もしも、「スーツで伺わないと失礼なのでは!?」と思うのであれば、一言「クールビズ実施企業ですので、カジュアルな格好で失礼します」とお伝えすれば、問題ないのではないでしょうか。本当にお互いにとって有意義な商談・会議にするには、服装よりも大切なことがあるように思います。
「ネクタイを締めてこない営業担当者の話なんて聞かない」。私の社会人経験においてこのような発言を聞いたことはありません。みなさんはありますか? クールビズ期間中は、ネクタイをしているかどうか、ジャケットを着ているかどうかで営業担当者の姿勢を問う商談相手はそんなに多くはないのではないでしょうか。
クールビズを実践していたら嫌味 イメージ落とす残念な会社
弊社にも、起業してから様々なお客様にご来社いただいております。IT系は弊社と同じく、普段からカジュアルな服装の方が多いのですが、やはり金融系や人材系は今でも「スーツにネクタイ」といった出で立ちでご来社頂く方が多いです。
私は、真夏にご来社頂く際には「弊社はカジュアルでご来社いただいて結構ですので…」とお伝えしています。しかし、たいていの方が「うちもクールビズ実施企業なのに、誰も実践していないんですよね。上司が実践してくれないと自分たちもできないです。それに、営業成績が思わしくないとクールビズを実践している人に嫌味を言う人もいて…」なんて言うのです。私はそんな人が世の中にまだいるのかということにも驚きましたが、こうして社員が自社への不満を客先で漏らしてしまうことに会社として危機を感じないのかと衝撃でした。
経営者と社員の相乗効果 「循環させる」クールビズ
起業以来、弊社でもクールビズを実施しています! 弊社にはエンジニアやデザイナーといったクリエイティブな仕事を担当するメンバーと、いわゆる「営業」的なお客様とFace to Faceで仕事をするメンバーがいます。IT企業ではよくあることですが、どちらにも明確な服装の規定はありませんし、それでトラブルになったことはありません。それはきっと、自分たちの役割を理解し、TPOをわきまえて仕事上のファッションを選んでいるからだと思います。
私は会社の代表として、かなりTPOを意識した格好を心がけています。そうすることで、社内メンバーが「自分の役割」を認識し、衣装を選ぶという習慣ができてきていると思います。私は社員がそういった立ち振る舞いをしてくれているのを見て、より自分の立場と見せ方をブラッシュアップしようと意識するようになりました。
クールビズもセンスが大切
とある会社の大きなイベントに招待していただいた際のお話です。毎年1度開催されるそのイベントのスタッフは、昨年までは必ず全員がスーツを着用していました。しかし今年は全員お揃いのポロシャツを着用していたのです。その企業にとっては非常に大きな試みで勇気が必要だったとお聞きしました。来場者からは大変好評で「スタッフと参加者の見分けがはっきりしてわかりやすい」「参加するほうもリラックスして参加できる」などといった声があったようです。
一方で残念に感じる点もありました。それは「ポロシャツの下に合わせるのはスーツパンツのみ。足元は革靴のみ」というルールです。トップスはカジュアルなのに、ボトムスや足元は堅さが拭えません。
制服や衣装と同じようにビジネスシーンで身に付けるものもセンスは非常に重要です。その会社のイメージやブランディングにもつながります。せっかく新しい試みでいい評価を得られる機会なのに残念なポイントがある…。ポロシャツを取り入れる際に、全身のバランスを考えてルールを決める。これはビジネスにおいても同じことが言えると思います。どこか一部だけを改善したり強化しても意味がない。会社全体でバランスを見ながらアップデートしていく。クールビズにも同じことが言えると思います。
苦手意識を逆手に クールビズ・ファッションお悩み解消法
とはいえ、もともと服選びが苦手な人にとってクールビズが推進する「軽装化」は苦痛にもなり得る取り組みなのかもしれません。毎日スーツさえ着ていればあれこれ言われなかったのに、少しカジュアルダウンしたら自分のセンスを試されるという側面もあるからです。そんな方に「クールビズ・ファッションお悩み解消法」として提案したいのはこの2つです。
ひとつはアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏のように、毎日同じ服を着ることです。「○○さんといえば…」と、自分自身を象徴するお決まりファッションにしてしまうのです。営業や渉外をご担当されている方なら、お客様の記憶にも残りやすいかもしれません。
もうひとつは、雑誌やネットで特集されているクールビズ・ファッションを参考にすることです。シンプルながら、意外と発見や気付きがあると思います。クールビズをきっかけに、いつもの自分なら手に取らない新しいアイテムや形を取り入れてみましょう。私は最近、私生活でよく歩くようになったためスニーカーを履くことが多くなりました。仕事でもスニーカーを格好良く履きこなしたいと思っていた時に「スニーカー特集」の女性誌を目にして思わず買ったことがあります。私にとって、いまではスニーカーもビジネススタイルをつくる大事なアイテムのひとつです。
クールビズという言葉が定着したからこそ、改めて考える機会が減っていると思います。客観的に考えてみると真冬にTシャツに違和感があるように、真夏にスーツ・ネクタイも違和感をおぼえませんか。受付嬢のように制服があるお仕事ではないのであれば、毎日着用するビジネスファッションも楽しんでもらいたいと思います。そしてせっかくクールビズという習慣が根付いてきているので、単純に実践するだけではなく、クールビズから自身や会社をブランディングしてみてはいかがでしょうか。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら