男性の「名ばかり育休」広がる 6割は5日未満、改善へ義務化の企業も
女性の社会進出の加速に伴い、夫ら男性の育児休業取得も求められる中、男性側の実際の取得日数を尋ねた調査で「5日未満」との回答が約6割を占め、大半が「名ばかり育休」である実態が、厚生労働省のまとめから分かった。中には育休を実質義務化し、働きやすさをうたいながら実際は1日しか認めていない企業もあるという。厚労省は全国的な啓発活動など改善に乗り出す方針。
「すべての女性が輝く社会」を最重要施策に掲げる政府は令和2年までに男性の育休取得率を13%に引き上げる目標を掲げる。しかし、厚労省によると、30年時点で男性の取得率は6・16%にとどまる。
さらに、雇用均等基本調査(27年)によると、男性の育休取得日数は「5日未満」が56・9%と突出。次いで「5日~1カ月未満」は26・2%で、「1カ月以上」は16・7%だという。
“イクメン”も違和感
厚生労働省の調査から男性の育休取得日数が少ない「名ばかり育休」が横行している状況が明らかになった問題では、実際に育児休業を取得した会社員らも現状に対し、違和感を覚えている。
金融機関に勤める男性会社員(28)は平成30年4月、次女誕生に際し、育休を取った。会社は育休取得率の向上を目指したワークライフバランスの推進を掲げ、対象社員と上司に取得を促すメールが届く仕組みがあったという。
取得しないと何回もメールが配信されていたが、周囲に男性の取得経験者はおらず、自ら「取得したい」と言いづらかった。ただ、何度も届くメールに上司から「1日だけ取るように」と指示されたという。
男性は「結局、何もできず、普段の休日だった。取得の実績ありきで制度の趣旨が理解されていない」と振り返る。
夫が1日だけ育休を取得したという女性(29)も「子育ての観点では意味がない。1カ月程度、育休があれば子供の成長や大変さも分かるはず」と憤る。
こうした現状を打破しようとする企業も出始めている。積水ハウスは昨年、男性社員に合計1カ月以上の育休完全取得の義務化に踏み切った。
また、三菱UFJ銀行も5月から2歳未満の子供がいる全行員を対象に約1カ月間の育休取得を強く促す取り組みを始めた。部下の取得状況が上司の評価に加わるため、実質「義務化」になる仕組みだという。
担当者は「元々、育休は最大10日間取得可能だったが、平均取得日数が2日にとどまっていたため意味がなく、改善を加えた」と説明している。
企業の関心は徐々に浸透
一方、企業の育休への関心は徐々に浸透している。
厚労省は17年から、育休取得を促すといった行動計画を策定した企業を厚労相が認定し、優遇する「くるみんマーク」制度を導入。31年3月時点で認定企業は約3400社にまで拡大した。
認定制度を利用する背景には、企業側が働きやすさを社内外にアピールする目的もあるとみられる。ただ、取得率自体を引き上げるのに躍起になり、取得日数については1日だけしか認められないなど、実態の伴わない企業も少なくないとされる。
さらに、管理職が長期職場離脱に難色を示すケースもみられるという。厚労省も、こうした事態を把握。「現状の取り組みだと不十分だと考えている」(担当者)としており、育休取得や育児参画を促す全国的な啓発キャンペーンを今年度中に展開する方針を示している。
法政大の松浦民恵教授(労働政策)は「企業も育児休業の取得率に関心を持ち、男性の取得という風土が醸成されている過渡期にあるとみられる。取得率や取得日数だけでなく、その取得期間に夫婦がどんな役割を担うのか。成熟した子育て環境の実現に向け議論を加速する必要がある」と話している。
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