働き方改革で一番悲鳴をあげているのは誰? 実態調査で見えた冷たい現実

 
※写真はイメージです(Getty Images)
働き方改革で自社で取り組んでいる施策(経営者JP調べ)
一日の平均残業時間(経営者JP調べ)
働き方改革で感じるデメリット(経営者JP調べ)

 政府が旗を振る「一億総活躍社会」の実現に向け、働き方改革関連法が4月に施行された。残業は減ったのか。より働きやすいオフィスになったか。あなたの会社や職場ではどんな変化があっただろうか。他の会社やビジネスパーソンの様子が気になる人も多いことだろう。管理職以上のエグゼクティブを対象にした働き方改革に関する実態調査で、興味深い現実が浮き彫りになった。

 経営幹部層に特化した人材紹介・コンサルティングサービス会社「経営者JP」が課長職以上の男女(個人事業主を含む)を対象に調査(有効回答180人)。働き方改革について現状感じている課題などを聞いた。調査期間は5月13日~24日。

「賛否どちらでもない」が目立つわけ

 まず、働き方改革について、そもそも賛成か反対かを聞いたところ、「賛成」(43.3%)が「反対」(13.3%)を大きく上回った。総じて賛成派が多いわけだが、気になるのは「どちらでもない」(43.3%)が賛成と同率を占めたこと。

 それぞれの具体的な理由についても、反対の理由で多かった「健康管理は重要だが国が一様に決めるべきではない」「労働時間の削減が前面に出過ぎている」といった声は、どちらでもないと答えた人の間でも「一律対応を強要すべきでない」「時間に偏ったイメージを与えている」などの疑問として渦巻いているようだ。

 一方、賛成の理由として「日本人の従来の働き方では生産性は上がらない」といった意見が聞かれた。

 さて、実際に自社で取り組んでいる施策をたずねたところ、「有給休暇取得促進」(77.8%)と最も多く、「残業時間の削減」(73.3%)も7割を超えた。続いて「女性の活躍推進」や「時短勤務導入」も4割前後に達している。

 企業規模別に見ても、従業員数1001人以上の企業では「有給休暇取得促進」と「残業時間の削減」がともに全体平均を大幅に上回り9割近くが取り組んでいると回答した。だが一方で、100人未満の企業ではどちらも全体平均以下と大きな差が見られた。

しわ寄せは「部長」にやってきた?

 注目されやすい残業時間について一日の平均時間を聞いたところ、全体平均では1.5時間(月29.4時間)と、政府が打ち出した「原則月45時間」という上限におさまっているのだが、これを役職別でみると濃淡が浮かび上がる。経営者は1.1時間(月21.5時間)にとどまるのに、課長クラスは2.5時間(月49時間)と国の基準をオーバーしてしまい、部長クラスも1.5時間(月30.8時間)と月30時間を超えている。

 役職別でやはり明暗が分かれるのが、働き方改革によって感じているデメリットについてだ。部長クラスは「従業員の主体性・創造性が低下している」(31.7%)、「業務が遅延している」(29.3%)、「経営陣・管理職クラスは労働時間が長くなっている」(29.3%)など6つの項目のすべてで全体平均を上回った。働き方改革で一番悲鳴をあげているのは部長クラスといえそうな結果だ。

 働き方改革でデメリットを感じる理由についても、「若手を帰らせ、管理職が残務処理をしている構図がある」「じっくり考える時間が減った」といった声が聞かれた。また、「現場の意識改革が追い付かず、経営サイドと現場での齟齬が生まれている」といった心配を訴える人もいた。

本質的に生産性をあげる働き方が必要

 経営者JPの井上和幸代表取締役は調査結果について、「有給休暇取得促進と残業時間の削減が7割と、日本人の働き方について『労働時間』のあり方は間違いなく大きく変化している」と企業の取り組みについては一定の評価を与えた。

 だが一方では、「そのことが管理職の皆さんには、主体性や創造性への悪影響や業務の遅延懸念を感じさせている姿も浮き彫りになった。『そうはいってもやるべきことをちゃんとならないと…』という意識の強い管理職層にしわ寄せがきているのも事実の模様だ」と指摘する。

 その上で井上氏は「今後どれくらい本質的に生産性をあげる働き方を実現していけるか、令和の日本企業群が突きつけられている宿題だと感じる」とコメントしている。

 働き方改革ではどうしても「時間」や「休み」など分かりやすい物差しを基準に施策を進める企業が多い。しかし、管理職など一部の社員にしわ寄せがいったり、企業全体の生産性が停滞してしまっては、本来の改革の狙いから遠くなる。「働き方改革元年」からしばらくは試行錯誤が続くのかもしれない。(SankeiBiz編集部)