最強のコミュニケーション術

仕事がデキる人の「依頼術」7選 こう言われるとなぜ頼みを聞いてしまうのか

藤田尚弓
藤田尚弓

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。みなさんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第6回は「依頼」がテーマです。ビジネスシーンはもちろん、プライベートでも、人に何かを頼むという機会は少なくありません。みなさんは普段どんな工夫しているでしょうか。頼んだことを承諾してもらうには伝え方が大切です。これまで勘だけでやってきた人は、頼み方のせいで損をしているかも知れません。この機会に様々な依頼の仕方をチェックしておきましょう。

ハッキリ言うのは気が引ける 察してもらいたいとき

 人に何かをお願いするというのは「図々しいと思われないか」「借りができる」「断られたら嫌だ」などの心理的負担が伴います。ハッキリと口にできない人は、こんな頼み方から試してみませんか?

1. 察してもらう 「~じゃない?」

〈こんなときに便利〉

クーラーが効き過ぎている部屋で温度を上げてほしい

「この部屋かなり涼しくない?」

「温度を上げてほしい」といったストレートな依頼はせずに、現状への同意を求めることで察してもらう伝え方です。察してもらえない場合には「実は今風邪気味なんだよね」といったダメ押しを。

2. 規範や大義にからめる 「○○としてやっぱり」

〈こんなときに便利〉

寄付をしてほしい

「人としてやっぱり飢えで死んでしまう子どもたちは見過ごせないよね」

 社会規範や大義にからめて同意を求めるやり方です。「人として」「親として」「社会人として」「管理職として」など、意外にバリエーションは豊富。

相手にとってやや面倒なことを頼むとき

 簡単に引き受けてもらえる依頼の場合シンプルにお願いするのが一番です(例:「塩とってくれる?」)。しかし、ある程度時間や労力などがかかる依頼や、一度断られてしまったときには、お礼や罰などを提示する方法もあります。

3. 条件を伝える 「もししてくれたら…」

〈こんなときに便利〉

アンケートに答えてほしい

「アンケートにお答えいただくと、1000円分のクオカードを差し上げています」

 初対面の相手に何かを依頼するときに承諾されやすい方法です。同僚などに「食事をご馳走するから手伝って」という言い方をしてしまうと「食事のために手伝うのではない」と不快にさせてしまうこともありますし、「対価に見合わない」と考えてしまう人もいます。「お礼というわけではないのだけれど、手伝ってもらった後に食事をご馳走させて」など伝え方も工夫しましょう。

4. しないと罰 「~しないと」

〈こんなときに便利〉

残業をしても間に合わせてほしい

「明日何かあったらどうするんだ。今日中に目処をつけておかないと大変なことになるぞ」

 やらないと悪いことがあるという、脅し系のコミュニケーションと言えるでしょう。「昇給がないのであれば、会社を辞める」といった言い方もこのグループ。子育てや部下の教育で使いがちですが、使い過ぎると信頼関係に悪影響を及ぼすことがあります。

5. お返しの気持ちを想起させる「~してあげたよね」

〈こんなときに便利〉

同僚に休みを代わってほしいとき

「俺も代わってあげたよね」

 お返しの気持ちを起こさせるコミュニケーションです。接待、試食販売、ホームパーティ商法なども、このグループです。いかにもな感じを避けたいのであれば、普段からプレゼントや手伝いをしておくなど、タイムラグを使うのがよいでしょう。

引き受けてもらいやすい状況を作る

 引き受けてもらえるか自信がないけれど、なんとかしたい。そんなときに試してほしいコミュニケーション術をご紹介します。

6. 限定して依頼 「~だけ」

〈こんなときに便利〉

ボランティアを引き受けてほしい

「忙しいと思うから、チラシ作りだけお願いしようと思って」

「~をお願いしたいと思う」と頼まれるのと「~だけお願いしたいと思う」と頼まれるのでは、負担に対する印象が変わります。限定的なニュアンスを使うことで承諾してもらいやすくなります。

7. 理由を言う「実は」

〈こんなときに便利〉

約束を変更してもらう

「実は、どうしても行かなくてはいけない用事ができてしまって」 

 理由を聞くと、聞かなかったときよりも承諾してもらいやすくなります。重大な理由はもちろんですが、その理由がたいしたことのない内容でも「実は」という言葉からスタートすると、許容しやすい理由のように聞こえます。

 なぜあなたにお願いしたいのか、どういう背景なのかという説明をするのも効果的です。特に理由がない場合でも「実は、どうしても○○さんにお願いしたくて」と言ってみればよいのです。

 シーンに合わせて、ご紹介したテクニックを是非使ってみてください。どう頼まれるかだけでなく、誰に頼まれるのかというのも判断に大きな影響を与えます。普段からよい人間関係を作っておくのも忘れずに!

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら