【元受付嬢CEOの視線】改革、裏切り… 成長し続ける組織を率いる経営者の共通点
私は最近、経営塾のほか、起業家や文化人、また官僚の方々など、いわゆる「社会の第一線で活躍する人」が集まる場に積極的に参加させていただいております。同業や同世代など似たような立場の方々との交流に加え、普段はなかなかお会いすることができない方々や、自分とは全く違った世界で勝負している方々にたくさんの刺激をいただいています。
そんな社会の第一線で活躍している方々に触れ、経営者の方々の共通点をいくつか発見しました。そしてその多くは私が意識し続けてきたことと共通する部分がたくさんありました。今回はそのうちの3つにフォーカスしてお話しさせていただきたいと思います。
経営者は「自分の働き方改革」を実践し続けている
みなさんが持つ「経営者」のイメージとはどんなものでしょうか。多くの方が挙げるイメージは「忙しい」「時間がない」ではないでしょうか。その通りです。実際に起業してから、「時間がいくらあっても足りない!」と常々思っています。
そんな時間が足りない毎日を送っている経営者は常に時間の使い方を効率化すべくアンテナを張っています。意識することは、自身の生産性をいかに上げるかということです。生産性の向上は、政府が推進する働き方改革でも重要視されています。つまり、経営者は「自分の働き方改革」を実践し続けているともいえるのです。
前回は、「付加価値」をつける働き方を意識することを提案させていただきました。経済学では「労働生産性」は「付加価値÷従業員数」で算出されます。
これを私の言葉に置き換えると下の図式になります。
時間は24時間365日、誰しも平等に与えられており、増やすことはできません。無駄な作業をなくし、時間を捻出する努力は必要だと思いますが、限界があります。しかし努力で増やすことができるのが労働生産性です。
少ない時間(分母)でいかに大きな成果を出せるか。いかに少ない人数で大きな成果(分子)を上げられるかが労働生産性であることを表したものです。一人でいかに大きな成果を出すかにつながるのが「付加価値の創出」だと思っています。経営者の方々は共通してこの意識を持っていると言えると思います。
私が受付嬢として勤めた会社の代表の方がこんなお話をされていました。
上司に「お弁当を買ってこい」と頼まれたとする。
お弁当を買ってくるだけでは80点。
お弁当プラスお茶を買って来て100点。
さらにサラダや野菜ジュースなど、上司の体を気遣うような「+α」をつけて渡せて120点だ。
ただ気が利くだけの人のように思えるかもしれませんが、経営者の方々はこういったことを無意識にやっています。この話を受付嬢時代から意識して続けています。このように、成果物に自分なりの付加価値をつけるからこそ「あなたしか生み出せない成果物」になるのです。
こういったアウトプットは一度や二度行えば良いということではありません。続けることが大切だと思います。継続することでその人への信頼に繋がり、評価につながり、味方になってくれます。このような連鎖を生むことでチームのまとまりが生まれ、会社全体の生産性を上げることにつながっていきます。成長している会社の経営者は共通して、ここを重要視しているように感じます。
経営者は「裏切り」続けている
私が出会った経営者の方々が裏切り続けているもの、それは期待です。「裏切る」と表現すると誤解が生まれそうなので補足すると、「良い意味での裏切り」です。マイナス方向への裏切りではなく、期待値を超えるという意味の「裏切り」です。みなさんが何か物事をお願いするとき、「おそらくこういう結果がになるだろう」と想像しますよね。
例えば私が受付嬢だった頃、お客様からの「御社に従業員は何人ぐらいいるの? グループ会社の受付は何社くらいあるの?」と質問されたことがあります。お客様はおそらく、質問したと同時に「受付嬢はたいてい派遣社員だから、派遣先の会社のことはあまり知らないだろう」と考えたでしょう。そんな時、私がその場で調べることなく正確な数字をお伝えしたら、それはお客様の期待を良い意味で裏切ったことになると思います。「この会社は受付嬢にもちゃんと会社の情報を教育しているんだ」もしくは「この受付嬢、ちゃんと自分が働いている会社のことを知ろうと努力しているんだ。意識が高いな」と感じていただけると思います。
経営者の方々は、この良い意味での「裏切り」が上手だと思います。
経営者の中には、社会にインパクトを与えることを成し遂げたいと思っている方も多くいらっしゃいます。社会の期待を良い意味で裏切るようなサービスをつくるのは、常にこういった意識を持って行動できる人なのだと思います。
「謙虚」であり続ける
最後に、経営者の方々に共通することをもうひとつお伝えしたいと思います。
経営者の方々の視座は高いですし、目標も高いです。しかし私がお会いした方々に上から目線の方はいないのです。
誰ひとりとして、従業員に対し「雇ってあげている」「働かせてあげている」という上から目線の方はいないということです。むしろ「働いてもらっている」「いつも頑張ってくれている」と感謝している方ばかりです。そうやって頑張ってくれているみんなのために良い会社、成長する会社にするには…と一生懸命な方々ばかりです。「会社を通じて社会に貢献するには」と言った考えも持っています。私もそう考えているひとりです。
しかし、従業員側が「働いてあげている」といったマインドの持ち主だと、会社にもいい影響は与えないと思います。プライベートで例えると、交際相手に対して「付き合ってあげている」や「結婚してあげている」という気持ちでいるようなことかもしれません。会社組織においても、パートナーとの関係においても、良いサイクルにはなりません。
根本に従業員や会社への「愛」
「生産性」「裏切り」「謙虚」。これら3つの共通点の根本にあるのは「愛」です。経営者の方々はみな愛を持って行動しているということです。
経営者の多くは、従業員の方々が想像する以上に、従業員の方々を大切に想っているようです。そして一人一人をよく見ているなとも感じます。それは、私が受付嬢を経験した後に起業したことで、一番強く感じることかもしれません。私はまだ“社長4年生”です。様々なシーンで学ばせていただくことができ、非常にありがたいです。そしていつか自分も良い刺激や影響を与えられる経営者になれるよう、努力し続けたいと思います。
【プロフィール】橋本真里子(はしもと・まりこ)
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら
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