【今日から使えるロジカルシンキング】この店の売り上げを増やすには? フレームワークを使って施策を考えてみよう

 

第5回 モレなく考える<応用演習>

 この連載では、子供にロジカルシンキングを教える学習塾ロジムの主宰・苅野進が、SankeiBiz読者のみなさんに、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであるロジカルシンキングの基本スキルを伝えていきます。第5回は、前回扱った「モレなく考える」について、実際に問題を解いてみましょう。

 まずは、前回の復習です。

「モレなく考える」の基本を復習

・「考えモレ」とは

ある問題について考えるべき対象を見落としてしまうこと

(例)算数の成績を上げようとして、計算練習をたくさんしていたけれど、実際には文章の読み取りに問題があった

 →考えモレ「文章の読み取り能力を上げること」

・フレークワーク

モレをなくすためにはフレームワークと呼ばれるチェックリストを活用するのが有効

 では実際に問題に取り組みながらさらに理解を深めていきましょう。

問題1

よういちさんはドラッグストアの店長です。売り上げを伸ばしたいと考えています。広告などで認知度を高めて新規の顧客を増やすだけでなく、来店回数を増やすために毎週火曜日と金曜日にポイントアップキャンペーンをすることにしました。この「顧客数×来店回数」という考えにモレはないでしょうか? モレがあるとすれば何が漏れていますか?

※画像はイメージです(Getty Images)

問題1の解説

 顧客数だけでなく、来店回数を増やすという視点は良い気づきです。しかし「売り上げ(売上高)」ですので「購入金額」が必要です。1回あたりの購入金額(客単価)を上げるために、多くのドラッグストアでは本来の医薬品という商材以外にお菓子や日用品などを扱うようにしているのが実際です。

 「フェルミ推定」という名前で紹介されることが多いのですが、

  売り上げ=1回あたりの購入金額×顧客数×来店回数

 のように、ビジネスでは、実際に調査してみないとわからないような上で重要な「数字」を概算してみるのです。この時、どのように計算されるのかを確認してみることで考えモレを減らすことができます。「因数分解」に似ているのでそう呼ばれることも多いですね。

 普段気にすべき数字がどのような計算式で成り立っているのかを確認し、フレームワークとして活用することはモレなく考えることの基本になります。

計算式に必要な要素=売り上げを増やすためのフレームワーク

【1】顧客数

【2】来店回数

【3】1回あたりの購入金額

 つまり解答は、以下のようになります。

問題1の解答

考えモレがある

 →漏れているのは「1回あたりの購入金額(客単価)」

 では2問目です。

問題2

えりかさんは大島家具店のマネージャーです。新たな店舗を出店するにあたって、その店舗を取り巻く状況について分析することにしました。競合他社のイケアやニトリなどの動きだけでなく、フレームワークである「5F(ファイブフォース)」分析を使ってどのような相手を考えなくてはいけないかをモレなくピックアップし、その特徴や強さについて分析してみましょう。

問題2の解説

 5Fは業界を分析するためのフレームワークでしたね。家具・インテリア業界を想定して、自社を取り巻く5つの勢力をチェックしましょう。

問題2の解答

<1>競合他社

イケア、ニトリは安いだけでなく、意外とおしゃれ

<2>新規参入業者

匠大島はより高品質で営業力が強い

<3>代替製品

フリマサイトなどの再利用品。ビンテージ家具。持たない生活ブーム

<4>顧客

独自、独占的な商材がないと顧客が強い。買い替えが少ない

<5>原材料納品業者

既製品は大量発注が必要。売れるデザインのものは納品業者が強気の価格設定

 代替製品についてはしっかりと考えないと思わぬ相手にシェアを奪われることになります。たとえば、余暇の取り合いということを考えてみるとテレビはスマホなど全く別のコンテンツに取って代わられたといえます。

 では3問目です。

問題3

たえこさんはコピー機の営業部で4人のチームをまとめる主任です。チームの成績を高めるために新規顧客開拓のための電話営業を増やそうとしてきましたが、もはや限界にきていると感じています。そこで、自分たちの「営業活動」を分析して改善点を探すことにしました。「営業部の仕事の流れ」をモレなく分解してみましょう。

問題3の解答

アポイントメント→提案→契約→納品→集金→アフターサービス→買い替え→追加製品の営業

 図に落とし込むとこのようになります。

 これはあくまで一例です。このように時系列でサービスの内容を整理するフレームワークを「バリューチェーン(VC)」分析といいます。このフレームワークの良いところは、時間軸で書き出して確認していくことでモレを物理的になくすことができるということです。問題2のように、概念を分類するよりも扱いやすくなります。

 「なぜ問題が発生しているのか?」を考えるときに、「いつ・どこで問題が発生しているのか?」というように時間と場所を特定することができると原因の特定や解決策の検討が容易になるのです。

モレなく考えた後のステップも大事

 検討すべき項目をモレなくピックアップするという作業にはこれで完璧というゴールがありません。しかし、フレームワークを活用したり、経験を活かしたりすることで致命的なミスをしないという効果は大きいので、「モレなく考える」にこだわりすぎずに、ある程度の検討で切り上げて、あとは注意深く進んでいきながら考えることにも慣れていきましょう。

 また、この作業はあくまで検討項目のピックアップです。そこからどの点に重きを置いて優先的に手を打っていくかというのはさらに先のステップで決断しなくてはならないものです。それはさらにリスクを背負ったものなので、企業などでも分析は若手や専門部署がやり、それを使って経営判断をするのはさらに上役というのが普通です。

 成長を目指すみなさんもモレのない分析のスキルはもちろんですが、「自分だったら次にどこに手を打つか?」を常に考える練習をしておいてほしいと思います。

【プロフィール】苅野進(かりの・しん)

子供向けロジカルシンキング指導の専門家
学習塾ロジム代表

経営コンサルタントを経て、小学生から高校生向けに論理的思考力を養成する学習塾ロジムを2004年に設立。探求型のオリジナルワークショップによって「上手に試行錯誤をする」「適切なコミュニケーションで周りを巻き込む」ことで問題を解決できる人材を育成し、指導者養成にも取り組んでいる。著書に「10歳でもわかる問題解決の授業」「考える力とは問題をシンプルにすることである」など。東京大学文学部卒。

【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら