最強のコミュニケーション術

褒められた時の上手な返し方 謙遜が招く残念な心理

藤田尚弓

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。みなさんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第7回は「褒められたときのリアクション」がテーマです。みなさんは人から褒められたときに、どのようなリアクションをしているでしょうか。謙遜し過ぎて、せっかく褒めてくれた人を不快にしてしまったり、恥ずかしさや居心地の悪さを無意識のうちに顔に出したりしていませんか?

 どのような反応をすればスマートなのか。褒められたときの返し方を確認しておきましょう。

実は失礼!? 謙遜し過ぎは逆効果

 褒められたときの一般的な返しとして謙遜があります。

「さすが優秀ですね」

「とんでもございません。私なんて、まだまだ未熟で…」

 このようなやりとりはビジネスシーン、特に儀礼的なやりとりでよく見られます。もう少しくだけたシーン、例えば同僚に褒められたときなどでも、反射的に謙遜するという人は多いと思います。しかし、本気で褒めてくれている相手に全力で謙遜をすると相手に不快な思いをさせてしまうことがあります。

〈謙遜し過ぎな例〉

「○○部に栄転なんですね! さすがだなー。そもそもの才能もさることながら、いつも誰よりも早く来てますもんね」

「いや、運が良かっただけですよ」

「いや、あれだけ努力できるってすごいと思う、本当に尊敬します」

「いや、本当に運だけですから…」

 人から褒められると、私たちは恥ずかしさや居心地の悪さを感じて、意図しない表情をしてしまうことがあります。舞い上がらないように気をつけているときは特に、冷たい表情に見えやすくなります。

 このような態度で謙遜を繰り返されたら、褒めたほうは「せっかく褒めたのに、そんなに否定しなくても…」といった残念な気持ちになってしまいます。中には「ご機嫌とりだと思われた? そんなつもりはないのに」と不快に感じる人もいるかも知れません。

謙遜が引き起こす可能性のある残念な心理とは

 私たちは相手に受け入れられることを好み、拒絶されることを恐れます。謙遜のつもりでも、褒めた側が否定されたと感じてしまうと防衛本能がはたらき始めてしまうことがあります。

「なんだよ、あんな言い方をしなくてもいいのに。まぁ、そもそもあの人のことは好きじゃないけど…」

 キツネが高いところにあるブドウを食べようとして失敗し、「あのブドウはどうせ酸っぱいから食べられない」とつぶやく。このような反応は、私たちにもよく起こります。せっかく褒めてくれた人に、そんな反応をさせないためにも上手な返し方を確認しておきましょう。

プラスワンで解決 謙遜するときのコツ

 褒められたときのリアクションでおすすめなのは謙遜のあとに、ひとこと感想を付け加えるという方法です。

「いや、それほど早く出勤しているわけでもないですし…でも見ていてくれる人がいるというのは励みになりますね。ありがとうございます!」

 感想を付け加えることで、謙遜をしつつも、相手が褒めてくれたことを受容するニュアンスや感謝の気持ちを表現することができます。

褒められたら褒めで返すのはあり? なし?

 ひとことを付け加えるパートで、反射的に相手を褒める人は多いです。

「僕なんか、まだまだで。○○さんこそ、××がすごいじゃないですか」

 咄嗟の褒め返しは儀礼的に聞こえます。お返しのように褒められても嬉しく感じる人は少ないのではないでしょうか。お返しであっても、褒められた相手は照れや居心地の悪さを感じますし、中には自分が褒めたことをうやむやにされたように感じる人もいるでしょう。

褒めはマイナスにもなる

 人から褒められるということは基本的に嬉しいことですが、負担になることもあります。

 言語が持つ対人関係機能を研究した言語学者のブラウンとレビンソンは、褒められた人が謙遜しなくてはならないこと、場合によっては褒め返さなければならないことなど、褒めにはマイナスもあるとしています。

 本来人間関係を良くしてくれるはずの褒めで、お互いが気まずくなってしまうのはもったいないことです。どんなリアクションをとればよいのでしょうか。

覚えておくと便利 褒められたときの返しフレーズとは

 リアクションにぜひ込めたいのは、謙遜の気持ち、わざわざ褒めてくれたことへの感謝です。相手への褒めは、あくまでさりげなく入れ込むのがよいでしょう。おすすめは「○○さんに褒めてもらえるなんて」というフレーズです。

「いえ、僕の力ではないんですが…でも、尊敬する○○さんに褒めてもらえて嬉しいです」

「お祝いしてもらえるような賞ではないんですが…○○さんに褒めてもらえると、やった甲斐があるなと感じます。わざわざありがとうございます!」

「いや、オジサンがなにを着ても似合わないのはわかってるんだけど…○○さんに褒められるんだったら、また頑張ろうかな。ありがとう」

 「あなただから嬉しい」というフレーズをプラスすれば、多少謙遜し過ぎたとしても、褒められた照れのせいで表情が硬くなっていたとしても大丈夫。褒めた側も褒められた側も気持ちのよくなるリアクションですので、ぜひ使ってみてください。

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら