元受付嬢CEOの視線

経営者はプライベートこそ目標設定する 夫婦の課題も1on1で解消を

橋本真里子

 経営者になって、もうすぐ4年が経とうとしています。未だに至らない点が多々あり過ぎて、毎日反省と奮闘の日々を過ごしております(笑)

 受付嬢から経営者に転身し、すべてのことが初めての経験でした。その中でも多くの時間を割いていることといえば、「営業」活動と社内外との「コミュニケーション」です。そして、その経験から学んだことがビジネスにはもちろん、プライベートにも活かせることだと気づきました。そしてそれが今では、私の考え方の“癖”にもなっています。自分で言うのも何ですが、この“癖”はビジネスパーソンが身につけておいても損はないと思います。今回はその“癖”について、おすすめ理由とともにご紹介します。

時間は命 MTGやアポにはゴールをつくる

 「時間は命です。時間は誰にも平等な速さで与えられています。その時間を自分に割いてくれるということは、命を割いてもらっているということと同じです。それくらい相手の時間は大切にすべきです。」

 これは、私がこれまで働いてきた会社の経営者がよくお話ししていたことです。経営者になった今、この話には私も非常に共感できます。

 時間に対する姿勢が変わり、私はこう考えるようになりました。それぞれが大切な時間を割き、共有する上ではまず初めに、もしくはMTG(ミーティング)やアポイント(メント)を取得したタイミングで目的とゴールのすり合わせをするべきだと。これを実践し始めてから、アポイントやMTGのクオリティと生産性が飛躍的に上がったと思います。

 例えば、弊社の社員はMTGの前に必ずといっていいほど、アジェンダ(題目)を事前に共有してくれます。「MTGは〇〇の目的で時間を確保していて、その中で〇〇について話したい」ということをMTG前から認識することができるのです。こうすることによって、私自身も準備をすることができ、アジェンダを追加したり、事前に回答を用意しておくことができます。これは時間の短縮だけでなく、参加者がどういう意図で議論したいかを把握することもできるので、とても有意義で中身の濃いMTGにすることができます。

 営業の際も同じです。アポイント(メント)を取る際には必ず目的を伝えます。そして商談の冒頭にも、(私たちのゴールは「成約」になるわけですが)弊社のサービス導入によるクライアントへの明確なメリットを提示し、クライアントの成功体験を導き出すことをゴールとして伝えます。「そのゴールに必要なメンバーで参加させていただいています」ということまでお伝えします。そうするとクライアント側も話を聞く体制になり、「結局何が言いたいがよくわからなかった…」という商談になることを防ぐことができます。

 今では、「何かお役に立てることがあると思うので、お時間ください」といった抽象的な提案での時間を割くことは優先度を下げて対応しています。もちろん私自身もアポイントを取る際は、上記のことを徹底するようにしています。

プライベートこそ目的とゴールを設定

 ビジネスパーソンは日中、MTGやアポイントの連続です。その上、夜は会食や社内の懇親会などもあります。週末もゴルフや家族サービスで「プライベート(自分ひとりの時間や仕事を切り離した時間)」を取ることが難しかったりします。

 そこで私が実践しているのは、仕事以外の時間でも目的とゴールを設定することです。時折、飲み会や久しぶりに友人や親戚などと集まることもあるかと思いますが、幹事になった際はぜひ目的とゴールの設定を意識してみてください。私の経験上、プライベートこそ目的とゴールを明確に持つことで、有意義な集まりにすることができます。

 「飲み会」と一言でいっても、そこには様々な目的を持つ人がいるでしょう。出会いを期待する人もいれば、男女関係なくざっくばらんに飲みたいという人。仕事目的で来る人もいるかもしれません。特にプライベートの場合は共通テーマがないことがほとんどです。参加してみて、そのうちの一人でも「自分がイメージしていたものとは違った」となってしまうと、その気持ちはその場にいる人に伝わり、空気感に影響が出てしまいます。一人だけ暴走してしまって、「場がしらける」という経験、誰しも一度はお持ちじゃないでしょうか。

 逆に結婚式などは初対面の人が100名以上集まっても、その場が温かく有意義な時間になると思います。それは「新郎新婦を祝福し、いい結婚式にしよう!」といった目的とゴールが明確だからです。

 私は起業してから、プライベートでもこういったことを念頭に、声をかけるメンバーを考え、連絡する際に集まる目的を伝えるようにしています。そうすることで相手も時間を割くべきなのか、優先順位をつけてスケジューリングできると思います。例えばお誕生日会なら、「参加は難しいが、プレゼントだけ参加したい」などという代替え案も出し合うことができます。

 目的とゴールを共有することで、「ただ誘われた」という意識ではなく、自分ごととして参加することもできるようになるのではないでしょうか。

一番長いプロジェクトメンバーは誰か

 「家族」について考えてみてください。赤の他人だった男女が結婚をし生活を共にします。子供を授かり、家族が増えることもあります。「ずっと一緒にいる」「家族になる」という目的のために結婚するわけですが、共同生活となると一緒にいることが当たり前になり、ついつい目的とゴールを忘れてしまいがちになりませんか。 そんな時に必要なのが、「家族はプロジェクトメンバーである」という考え方です。

 思い描く「家族」は人それぞれです。家族ひとりひとりが、その「家族」というひとつのプロジェクトを実現するメンバーです。そう考えると、家族は大事な、そして長年付き合うことになるプロジェクトメンバーになるわけです。そして、簡単にメンバーを変えることはできません。

 私は、家族だからこそ、折に触れて自分の考えや時間を共有する必要があると思います。世界的にみても日本人は愛情表現が得意ではないと言われています。正直、私も苦手です…(笑)でも自身が代表を務める会社に置き換えてみると、社員のみんなには毎月必ず一度は全体会で自分の考えを共有し、折に触れて感謝の気持ちを伝えるようにしています。

 一方プライベートはどうでしょうか。母の日やお誕生日などのタイミングにはプレゼントを送ったり、お祝いしたりしますが、折に触れてというほど自分の口で感謝の気持ちを伝えられていないと思います。恥ずかしいからですね(笑)社員のみんなに気持ちを伝えることと同じくらい家族にも伝えていくことは大切だと思っているので、少しずつですが家庭でも私なりの方法で実践しています。

プライベートこそ1on1

 弊社では月に一度は1on1(ワンオンワン)を実施するようにしています。1on1とは一言で言うと個人面談です。日々の業務の成果や気づき、困りごとなどをざっくばらんな雰囲気で話します。これを取り入れた企業が成功事例として発表しているのもよく目にします。

 私はこの1on1こそ、プライベートに取り入れるべきだと思います。仕事上、トラブルや認識の違いを解決しようと1on1を行います。一方プライベートはどうでしょうか。ついつい「見ないふり」「気づかないふり」をして、時間が解決してくれるであろうと他力本願になっていないでしょうか。

 先ほどもお伝えしたように、家族は一番長く付き合う、誰にも代えがたいプロジェクトメンバーです。家族だからこそ、他力本願ではなく、自分たちで解決すべきではないでしょうか。

 とはいえ、「デート(二人きりの時間・空間)」と考えるとなかなかパートナーを誘いづらいという気持ちもあると思います。そう言う時は「1on1」というワードを使ってみてください(笑)。最初は「1on1」だったタイトルが、解決したらいつの間にか「デート」に変わります。どちらかが誘いやすい表現で誘うことにより、相手も誘いやすくなるはずです。そしてちゃんと「目的とゴール」を伝えてあげることにより、共有する時間が有意義なものになり、お互いが満足する時間になるはずです。

 私が尊敬する方がこんなことをおっしゃっていました。

  • 「仕事が上手くいってない部下と話すと、大抵がプライベートに課題を抱えているんです」

 私も本当にそうだと思います。家族やパートナーの支えがあってこその「仕事」だと思います。

 騙されたと思って、ぜひ皆さんも私の“癖”の数々を試してみてください!

橋本真里子(はしもと・まりこ) ディライテッド株式会社代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら