全盲で初、国立国会図書館採用試験に合格 大阪の杉田正幸さん
大阪府立中央図書館(東大阪市)で障害者サービスを担当する司書で全盲の杉田正幸さん(48)が今年7月、国立国会図書館の障害者対象採用試験に合格した。全盲の人としては初めての快挙。杉田さんは来年から、東京か京都の国会図書館で勤務する予定で、「国会図書館や全国の図書館が、誰にとっても使いやすい施設になるよう全力を尽くしたい」と意欲を示している。(勝田康三)
杉田さんは埼玉県出身。先天的に弱視で中学校入学後は視力を失った。盲学校を卒業後、マッサージ師の仕事に就いたが、点字の書籍が少なかったことから「障害者と健常者の情報格差を埋めるような仕事をしたい」と思い立ったという。
近畿大の通信教育を受けて平成11年、司書の資格を取得。12年に全盲の人として初めて大阪府の図書館司書試験に合格し、府立中央図書館で、20年近く勤務してきた。
業務には、音声ソフトが入ったパソコンや点字用機器を使う。視覚障害者が読みたい本を音読するサービス「対面朗読」の日程調整のほか、誰もがアクセスできる図書館ホームページの作成や郵送物の点字表示、音声図書の利用方法の指導などに当たってきた。
昨年には、図書館運営の中核を担う人を認定する日本図書館協会の「認定司書」に選ばれた。
一方で、杉田さんは、地方の県立図書館などで行われる障害者サービスの研修にも講師として参加してきた。杉田さんによると、地方の図書館では都市部と比べて障害のある司書が少ないこともあり、障害者向けのサービスが充実していないのが現状という。
たとえば、書籍の内容を音声データとして収録したCDやデジタル資料などの「録音図書」の存在を知る司書がその図書館にいなければ、利用者に紹介することもできない。「録音図書は買うこともできるし、ほかの図書館から借りることもできるが、知識がないと分からない」と杉田さん。視覚障害者の立場や実務経験も交え、こうした障害者へのサービスに必要な知識を伝えてきた。
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国会図書館で働こうと決意したのは、こうしたノウハウをさらに多くの図書館に伝え、「障害者や寝たきりの人など図書館の利用が難しい人たちに充実したサービスを提供したい」との思いから。合格したのは係長級の試験で、国会図書館によると、実務経験や調査・研究の実績がある人が対象。競争率は7倍だった。
今年6月、誰もが読書できる環境整備を国や自治体に課した「読書バリアフリー法」が施行され、国会図書館も障害者らへの読書サービスの充実が求められている。杉田さんは「まず国会図書館を国民に身近な存在にしていくことが目標。そして、全国の図書館のレベルアップにつながるお手伝いをしたい」と話している。