最強のコミュニケーション術

誰も教えてくれない「自分の話」のさじ加減 自虐ネタは逆効果だった

藤田尚弓

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか?

 この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第9回は「自分の話」がテーマです。雑談の中で自分についての話をする。これは職場でもよくあるシーンです。プライベートな話題は、人との距離を縮めたり好感度を上げたりといった効果があります。一方で、タイミング、話す内容、話す量などを間違うとマイナスに作用してしまうこともあります。自分の話はどのようにすればいいのか、失敗を回避し、効果的に話す方法を確認しておきましょう。

個人的な話をすると距離が縮まる3つの理由

 一般的に自分についての話をする「自己開示」は、相手との距離を縮めるのに有効だと言われています。その理由は、3つあります。

 1つめは、プライベートなことを話してもらえたことで親近感を抱きやすくなるというもの。ビジネスシーンでは想像しなかったような一面を知って、相手に好感を持ったという人も多いのではないでしょうか。

 2つめは、個人的な話をしてくれたという特別感です。表面的な会話しかしなかった関係から一歩前進した感じがして嬉しかったというのは、皆さんも経験があると思います。自分には心を許してくれたと感じる人もいるでしょう。

 3つめは、お返しで自分もプライベートな話をしたくなること。相手が自己開示をすると、私たちは相手と同程度の情報を開示したくなるものです。お互いにプライベートな話をすることで、距離が縮まります。

 このように個人的な話は、人間関係に良い効果をもたらしてくれますが、ポイントを押さえないと、その効果は半減します。

 さてここで問題です。相手が個人的な話をしてくれて嬉しいと感じるときと、さほど何も感じないときがあります。この違いは、いったい何でしょうか。

自己開示で好感を持たれるとき、持たれないとき

 せっかくプライベートの話をしてくれたのに、あまり嬉しく感じない。そう感じる大きな理由のひとつに「タイミング」があります。

 知り合って間もない時期に、自分のことをペラペラと話してしまうと「誰にでも、自分のことを躊躇なく話す、開放的な性格な人」といった印象になりがちです。

 挨拶や表面的な会話を何回かした後に、個人的な話が少しずつ入るようになると「プライベートの話をするような関係になれた」「自分には個人的な話もしてくれる」といった感情が好意に繋がりやすくなります。

 自己開示の大切さは話し方の本やコラムなどでもよく触れられるポイントですが、効果的に使うにはタイミングも重要。出会ってすぐスグは挨拶や表面的な会話にとどめ、心理的距離を縮めてもよさそうなタイミングで、自己開示をしたほうが、より効果的に距離を縮められるということを覚えておきましょう。

 次に、自分の話をするときにどんな話題を選べばいいのか、注意点とお勧めトピックをご紹介します。

取扱注意! 自虐ネタは損をする

 自分を良く見せようと思う気持ちが強いと、ちょっとした雑談も自慢話のようになってしまう。これは皆さんご存知のよくある失敗です。そうならないように、自分の話をするときに自虐ネタを選ぶ人も多いのではないでしょうか。

 自虐ネタは、付き合いが長くなってどんな人かよくわかってからなら良いのですが、人間関係を構築する初期の段階ではお勧めできません。まだよく知らない相手に対して、私たちは限られた情報から印象を形成し、相手がどんな人かを判断するからです。

「印象なんて後から変わる」と思うかも知れませんが、私たちには予測したとおりの行動に注目し、そこを記憶してしまうという傾向があります。「A型はやっぱり几帳面だな」「ジャズ好きは、やっぱり気難しいところがあるな」など、大雑把で寛容な面がたくさんあっても、予測に合致したところは印象に残りやすいのです。

 自虐ネタでは、自分の失敗や弱い部分に関する話題が主になります。そこから「そそっかしい人」「〇〇に弱い人」といった先入観念を持たれ「やっぱり」と合致部分に注目されてしまうのは残念です。そこでお勧めしたいのが、ワンフレーズを付け加えるというやり方です。

学びと成長のワンフレーズで印象チェンジ

 以下の文を読んで、皆さんはどう感じるでしょうか。

  •  A 高いけれど機能がいい
  •  B 機能がいいけれど高い

 提示の順番は解釈に影響を与えます。Aでは機能がいいという面が強調され、高くても機能性が高い商品だと感じる人が多くなります。Bでは値段の高さが強調され、機能はいいものの値段が高すぎるように感じる人が増えます。

 情報を2つ提示するときは、後半の方が印象に残りやすいという特性を活かし、謙遜や自虐ネタの後にはもうひとつ情報を提示しておきましょう。お勧めは「自虐ネタ+そこからの学びや成長」です。

 例 「いやー、手痛い失敗でしたが、今後は多少のことでは驚かずにリカバリーできる自信がつきました」 

 自虐ネタだけではマイナスな印象が残ってしまいがちなケースでも、そこからの学びを付け加えることで緩和できます。

 大きな失敗や重大な問題などについて打ち明ける場合には相手を選ぶ必要があります。いわゆる雑談の中での自己開示は、相手もお返しで話せる程度の軽めの話題から始めるのがセオリーです。

話し下手でも失敗しない鉄板スタイルとは

 自分の話をするとき、タイミングや内容と同じくらい大切なのが「話す量」です。しゃべり過ぎは嫌われますし、あまりにも自分の話をしないのでは親しくなりません。失敗しない簡単な方法としては「自己開示+質問」がお勧めです。相手が話すきっかけを提供するというスタンスで、自分の話は短めを心がけ「~さんはどうですか?」など、質問で終えるようにしましょう。話す量は相手よりも少ないくらいが適量ちょうどなのです。

 よく性格が社交的でないことや、話し下手なことを気にする人がいます。しかし話し好きな人は早い段階から必要以上の自己開示をしたり、自分ばかりが話してしまったりというミスを犯しがちです。話し下手の人は無理をせず、自分のメリットを生かす形で少しずつ距離を縮めましょう。

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら