会社愛深めて! 売り手市場続く中、「内定式」で各社工夫凝らす
来春入社の大学生らに向けた採用内定が1日、主要企業で解禁され、各地で内定式が開かれた。売り手市場を意識してか、各企業は会社への愛着を深めてもらうプログラムを実施するなど工夫を凝らした。
36人が内定を得た製粉大手の昭和産業。同日午後2時過ぎ、東京都千代田区の本社会議室には香ばしいにおいが立ちこめた。同社が3年前から実施する「天ぷら研修」。経営トップらが自社製品を使った天ぷらの揚げ方を手ほどきした。
「学生から社会人に、さくっと意識を“衣”替えしてほしい」。新妻一彦社長のあいさつで研修がスタート。内定者は7人程度に分かれ、油に具材を投入。内定者は「一緒にやると同期の性格も分かる。4月からはいいチームワークが築けそう」と話した。
JR西日本は大阪市の本社で開いた。倉坂昇治取締役が訪日外国人客の増加や25年大阪・関西万博に触れ「成長の機会として力を発揮しないといけない」と呼び掛け、約110人が聞き入った。飯塚晴菜さん(22)は「将来は観光に携わりたい」と意欲を見せた。
全日本空輸は今年から式典を開かず、内定通知書を郵送する形に変えた。遠方に住んでいる人や、研究などで多忙な人に配慮したためという。
一方、競争環境が厳しさを増す携帯電話業界では、内定式でもトップの叱咤激励が飛んだ。NTTドコモの吉沢和弘社長は「今日、楽天が第4の携帯電話事業者として参入し、さらに競争が厳しくなる。挑戦心と行動力で進化に挑んでほしい」とハッパをかけた。
就職情報会社マイナビによると、8月末時点の大学生と大学院生の内定率は82.6%で人手不足を背景に売り手市場が続く。経団連は会社説明会を3月1日、面接などの選考活動を6月1日に解禁する自主ルールを定めてきたが、昨秋に廃止を表明。2021年入社からは、政府が現行日程の順守を要請している。