【話の肖像画】もっと文化の教育を、中国とのつきあい ファストリ・柳井正氏(14)

 
中国・マカオのユニクロ

 中国とのつきあい

 〈平成24年秋、日本政府による尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化を受け、中国全土で反日デモや暴動が発生。上海郊外のユニクロの一部店舗では、現地従業員が「支持釣魚島是中国固有領土(釣魚島=尖閣諸島の中国名=は中国固有の領土であることを支持する)」と書いた張り紙をショーウインドーに掲示していたことが、日本国内で問題視された〉

 従業員が独断で張ったもので、40分ほどで撤去しましたが、その後にインターネットにその写真が転載されました。ジャーナリストの人がブログにあげた。われわれは「一私企業が政治的外交的問題に関していかなる立場もとるべきではないと考えており、このような行為があったことは大変遺憾」とのコメントを出しました。

 あの張り紙は、ユニクロが入っていたショッピングセンターの全ての店舗に張ってあったんです。公安担当者から「全店で張れ」との指示があった。でも、ユニクロだけ撮影されて、問題視された。うちは最後まで抵抗していたんですが、公安担当者が店にやってきて「お前のところ、なぜ張っていないんだ」と言われ、仕方なく従った。公安には公安の言い分があって、これを張らないと「デモ隊が来て、店を打ち壊します」ということでした。

 〈中国の政治の安定とビジネス環境は〉

 僕は、そんなに悪いとは思っていません。日本のジャーナリストの中では、懸念を強めている人も多いようですが。13億の民を、あれだけリードして安定させている。これまでの中国の歴史では、あまりなかったことだと思います。

 近代に入って中国は西欧に侵略されて、植民地化されていった。彼らにとっては屈辱の歴史だと思うんです。日本とも悲しい歴史がある。中国が言っていることは、「今の中国を評価してくれ、中国を大国として扱ってくれ」ということだけだと思います。だから、私たちもそういう声に耳を傾けたら良いのではないかと思います。

 〈ユニクロは、中国でも人気の米アーティスト、KAWS(カウズ)氏とコラボしたTシャツを発売。6月に中国で販売したところ、ユニクロが入る各地のショッピングセンターでは開店前から客が殺到し、客同士が商品を奪い合って殴り合ったり、展示用のマネキンからもTシャツをはぎ取ったり、何十着も1人で抱えた転売目的の客の様子などが、SNSで拡散して問題視された〉

 ああいうことをやるから、「大国」じゃなくなる。中国文明も良いけれど、もっと文化の教育をやらないと。マナーというところをもっと尊重しないといけない。

 昨年8月にスウェーデンのストックホルムに出店した北欧1号店では、開店当初に1千人ものお客さまに並んでいただいたが、お互いに譲り合って会話しつつ、お買い物を楽しまれる余裕のある態度が印象的でした。世界の先進国の成熟した文化に触れました。(聞き手 吉村英輝)((15)は来週月曜日、10月7日に掲載します)