経営者同士で集まると、必ずと言っていいほどこんな話題が出ます。「御社は採用に困っていない? いい人を採れなくて困ってない!?」
今、どこの会社も人材不足。売り手市場とも言われていますね。確かに、面接させていただく方に他社の選考状況などをお聞きすると、「すでに数社内定を頂いています」なんて答えが返ってくることが多いです。私の就活時の氷河期が嘘のようです。
人手不足ゆえ、企業は様々な「努力」をしている話を耳にします。
- 福利厚生に力を入れる
- 女性が活躍できる会社というアピールをする
- 「ホワイト企業」「働きがいがある企業」などの称号を取得する
- 特別給与体制を作る
確かにこれらを充実させることは、採用には直接的な効果が得られると思います。しかし、これらのことを実施していくには実は結構なコスト(費用面・検討面・導入面)やリスクが発生します。
我々も様々な福利厚生や制度は取り入れていきたいですが、なかなかそうもいかないのが現実です。弊社も大企業ほどの充実度は実現できていません。
しかし、「採用に苦労しているの?」と聞かれると、それがそうでもないのです。いろんな要因はあると思いますが、ひとつ大きな理由があることが最近わかりました。
それは、オフィスに「ベビーベッドが置いてあるから」という話なのです。今回は採用に一役買っているベビーベッドについてお話ししたいと思います。
なぜベビーベッドが設置されているのか
弊社オフィスにベビーベッドが置かれるようになった経緯は、実は非常にシンプルです。妊娠し、出産した女性社員がいるからです。
出産後は産休・育休をとり、保育園に預けられるタイミングになってから仕事に復帰する。これが一般的かもしれません。しかし、出産後もなるべく早く復帰をし、育児と仕事を両立したいと考える人も少なくないと思います。女性の活躍には、「育児と仕事の両立」は切っても切り離せません。彼女もそんな考えのひとりでした。
弊社ではそういった働き方や考えを歓迎しています。そうは言っても、オフィスに赤ちゃんが来られる環境がなければ、実現しません。そこで、弊社ではベビーベッドを設置しました。ベビーベッドの設置に反対する社員は一人もいませんでした。オフィスに赤ちゃんを連れてきて嫌な顔をする人もいないですし、みんなが癒されています。
いろんな意味で、「子育てを母親だけがやる」という時代ではないと思っていますので、みんなで順番に抱っこしたり、会議室が空いていれば子供とに一緒に入って母親はそこで仕事をすることもあります。
ベビーベッドがまさかの効果
弊社は比較的女性の社員が多いです。面接時に「ぜひ入社して、一緒に頑張って欲しい!」と思ったメンバーにジョインしてもらっています。
入社後に懇親会などで「どうして弊社を選んでくれたのか」という質問をした時に、「ぶっちゃけた話、ベビーベッドがあったことが大きかったです」と言われたんです。正直、驚きでした。もともと戦略的に置いたわけでもなく、当たり前と思って置いていたベビーベッドの存在がそんなインパクトを与えていたとは! と。
彼女はこう続けました。「ベビーベッドがあるってことは、自分が出産しても長く働ける会社なんだろうなって思ったんです」。
私が面接などで説明しなくても、ベビーベッドの存在からそこまで汲み取ってくれていたのはとても嬉しかったです。そして、そう考えてくれるということは、「うちの会社に腰を据えて働いてくれるつもりなんだ」と知ることができ、経営者としても嬉しいとともに安堵もありました。ベビーベッドはどうやら、採用だけでなく離職率を下げることにも貢献してくれると言えそうです。
影響は女性の採用だけではなかった
実は男性社員にも響いていたことがわかりました。エンジニアを募集した際に、「会社にベビーベッドがあるということは、この会社にも子供を持つ人がいて、子育てに理解を得られるはず。それは安心して働ける条件のひとつだ」と言われたのです。
そのエンジニアは、もともと地方出身だったのですが東京で仕事をしていました。しかし結婚し子供が生まれるという過程で、両親の近くで、また自然のあるのびのびとした環境で子育てをしたいと考え、弊社の「Uターンエンジニア(上京→帰郷)」となりました。フルリモートワーク(フルタイムでテレワーク)で働いてもらっています。
子育てにはトラブルがつきものです。子育てをサポートしてくれる親元で働くことに理解を示してくれる会社だからこそ、仕事にコミットし、自分にしか発揮できないバリューを出そうと思えるのかもしれません。
私たちにとっては当たり前である「オフィスにベビーベッドがある環境」。新しく採用した社員からの言葉をきっかけに、来訪される方も最初は必ず驚かれていることに気づきました。取材していただく時にも必ずと言っていいほど話題に上がりますし、「写真を撮らせてください!」と言われたりもします。
企業ごとに採用戦略や離職率低下の施策はあると思いますが、実はこういった、私たちも小さい頃お世話になった子育て道具が一番ストレートに刺さるのかもしれないと思ったエピソードでした。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら