最強のコミュニケーション術

インフルエンザで気兼ねなく欠勤する方法 休まれる側のモヤモヤを解消する

藤田尚弓

 2割がインフルエンザ完治しないまま出勤

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第12回は「病気での欠勤」がテーマです。風邪やインフルエンザなどで会社を休むとき、皆さんはどのように連絡を入れ、どのようなフォローをしているでしょうか。ほとんどの人が会社のルール、一般常識に沿った伝え方はできていると思います。とはいえ、休んだ人のフォローをしなければならない人たちは、病気への理解は示していても心の中にモヤモヤを抱えてしまうことがあります。

 休まれる側への負担や心情を気にしてか、昨年の冬は、インフルエンザが完治しないまま出勤したという人が約20%いたようです。インフルエンザは一般的に、「発症してから5日、かつ解熱した後2日」という出勤停止期間がありますが、医薬品製造会社の調査では、完全に治らずに出勤した人が18.9%、罹患しても休まず出勤した人は3.3%いたことがわかりました。

 休まれる側に配慮した結果、感染拡大を招いては逆に迷惑をかけることになります。再び元気に働くためにも休養は欠かせません。同じ職場で働く人たちに気持ちよく協力してもらうためには、どう伝えればいいのか。この機会に確認しておきましょう。

 モヤモヤ増幅 「休まれる側の心理」

 風邪やインフルエンザなどにかかってしまうのは仕方のないことです。休まれる側もそこは理解しているのですが、一方で「フォローが大変」「嘘かも知れない?」「自分は体調がよくないときも頑張って出たのに、それくらいで休むなんて…」といったネガティブ感情が頭をよぎってしまうこともあります。

 私たちは自分の仕事への取り組み、それによって報酬を得ています。この取り組みと報酬が同じ職場の同僚と同程度であれば問題ありません。しかし、同僚の欠勤などで自分の負担が増え、不公平だと感じた場合、私たちはネガティブ感情を持ちやすくなります。

 大抵の場合、それらの感情は一時的なものですが、風邪が流行る季節などには欠勤者も増えるため注意が必要です。モヤモヤした気持ちが解消されないうちに、また誰かが休むといった状況では、普段は流せるようなことにも過度に反応してしまうことがあるからです。

 「始業時間の前に」「電話で」「直接上司に」といったマナーを押さえた連絡はできていると思いますが、職場の人の感情を配慮した、もう一歩進んだ声がけについても考えてみませんか。

 言い方が65% 「申し訳なさ」のにじませ方

 「申し訳ない」と言われたけれど、相手の声のトーンや表情がまったく恐縮していない…。そんな経験を皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。コミュニケーション研究で有名なレイ・L・バードウィステルによると、言葉で伝えられるメッセージはわずか35%であり、残りの65%は話しぶり、ジェスチャー、間の取り方など、言葉以外の手段で伝えられるといいます。病欠の申し訳なさを伝えるためのポイントを「言葉」と「言葉以外の部分」から見ていきましょう。

 まずは35%の言葉の部分です。休む必要があると直感的に理解してもらえるよう「○度の発熱」「昨晩から○回下痢をしていて」など、症状を具体的に伝えましょう。申し訳なく思っているというニュアンスを加えるためには「休ませていただきます」など、確定済みのように聞こえる言い方を避けることが基本です。その代わりに「休ませていただけますでしょうか?」とった疑問文を使って、意志を伝えましょう。この言い方であれば、相手が休むことを認める形式になります。そのため、「休みます」と自分で決めたことを伝えるときに比べ、「穴埋めをしなければならないのか…」といったネガティブ感情を抑える効果が期待できるのです。

 次に65%を占めるという言葉以外の部分です。病欠だということを疑っていないケースであっても、私たちは相手の声の感じから病状がどの程度なのかといった情報をキャッチしようとします。電話の場合、表情や身振りが見えません。病気が辛いということをわかってもらうのにも、休むことを申し訳なく思っていることをわかってもらうのにも、話し方が重要なポイントになります。「しっかり伝えなくては」と頑張りすぎずに、辛さはそのまま声にのせましょう。相手の顔を思い浮かべ、申し訳ない表情をしながら話すようにすると、申し訳ないと思っている気持ちが相手に届きやすくなります。

 途中経過の報告をしたほうがいい3つの理由

 インフルエンザやノロウイルスなどの検査をした場合、検査結果が出たタイミングで一報を入れるのもお勧めです。そうでない場合は、翌日も休むのか出勤できるかの判断ができたタイミングで連絡するのがよいでしょう。経過報告をお勧めする理由は3つあります。

 1つは、休んだ分のフォローをしてくれている人が、いつ頃復帰できるか知ることができるということです。明日から復帰できるのか、それとも数日かかるのか、目安を知ることができると職場の人は対策をとりやすくなります。

 2つめは、迷惑をかけている人たちに、ダメ押しで申し訳なさを伝える機会だからです。現代の日本に生きる私たちは、言葉の不感症に陥っています。マニュアル通りの「いらっしゃいませ」や「またお越しください」に何も感じないように、朝の一報で申し訳ないと伝えても、気持ちは伝わりにくいものです。途中経過の報告の際に、改めて迷惑をかけて申し訳ないと思っていることを伝える、復帰するときにもう一度伝えるなど、繰り返しのアプローチをしましょう。

 3つめは、仕事への本気度を伝える効果が期待できるということです。検査の結果を伝える電話は本気度や仕事への責任感を伝える機会でもあります。報告に加えて「仕事でわからない点などがないか」「今困っていることはないか」といったことを尋ねましょう。

 復帰後はお詫びとお礼に「○○」を付け加える

 先に説明したように、私たちは不公平だと感じたときにネガティブ感情を持ちやすくなります。同じチームに欠勤者が出た場合、休まれた側は状況によって、「同じ報酬なのに自分だけがこんなに働いている」「自分だけに負担が集中している」と感じることもあるでしょう。

 休んだことで自分の仕事をカバーしてもらった後は、一時的に勤務体制のバランスが崩れた状態ともいえます。復帰後は休んで迷惑をかけたお詫びとフォローしてもらったお礼に加え、相手が休んだときにはできる限り自分もサポートするつもりであるという趣旨の一言を付け加えましょう。みんなで気持ちよく働くためには、ルールだけでなく、感情にも配慮したコミュニケーションが必要です。風邪やインフルエンザなどが猛威をふるう季節になりました。病気で欠勤するときには、ぜひ思い出してみてください。

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら