【ビジネスパーソン大航海時代】会計士からマネーフォワードCSOへ 「ファーストペンギン」の心意気~航海(17)
2020年1月に入ってから「お金の見える化アプリ」のTVCMを目にした方も多いのではないでしょうか?提供元はマネーフォワード社です。今回は、その「お金を前へ。人生をもっと前へ。」で知られる、個人向けの家計簿アプリ・法人向けバックオフィスサービスを手がけるマネーフォワード社の執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニーCSO(チーフストラテジーオフィサー・最高戦略責任者)山田一也さん(34歳)についてお話させてください。
山田さんは大学在学中に公認会計士となり、いまはこの会社でサービスの企画開発・新規事業・資本業務提携と、大車輪の働きをなされています。公認会計士という、なんとなく保守的なイメージがあるお仕事から、なぜ、どのようにして上場企業のCSOという攻めの最前線のキャリアへ進まれたのか。お話を伺ううちに、それは必然だったと理解しました!みなさまの気づきになりますと幸いです。
それではインタビューをご覧ください。
教育方針は「勉強ができる不良になれ」
保守的な仕事から攻めの仕事へシフトされた山田さんはどのような生い立ちを送ってきたのか。まずそれから紐解いてまいります。
どのような子供時代を過ごされていたのですか?
「ウチは親が変わりものでして。教育方針が“勉強ができる不良”でした(笑)。たとえば中学時代に母親が“髪を染めろ”と言ってくるくらいに」
それは尖った親御さんですね(笑)。高校・大学時代はどのようにすごされていたのですか?
「理系の学生だったのですが、親にバランス感覚をもって育てられたからか、高校の先生から『山田くんはビジネスが向いているね』と言われまして、文系に転向し、大学では経営学部に入ったのです」
おお、とても柔軟に変化できる方ですね。
「いまもそうですが、あまりこだわりはないのです。大学に入ったのは良いものの最初は遊んだりしていました。でも人生を考えるとこのままモラトリアムをしていても何も身に付かないなと」
さすが!俯瞰力といいますか、バランス感覚がありますね。
「良いビジネスマンになろうというのはぼんやりとした目標でしたからね。最初は簿記を勉強しようと思ったのですが、出来るだけ難しい方が挑戦しがいがあるなと思って公認会計士の試験勉強をはじめました。そして大学3年生の時に合格したのです」
それはすごい。
「当時は珍しかったかも知れませんね。でも私は勉強をしたかったわけではなく、ビジネスマンを目指していたわけですから公認会計士の資格を得たらすぐにトーマツという監査法人に正規雇用で入所したのです」
えっ。大学生の時にですか?
「はい。3年生でした。トーマツ同期の平均年齢が28歳でしたのでこれも珍しかったようですね。大学を卒業した後もそのままトーマツにお世話になりました」
大学時代に公認会計士の資格を取ったり、トーマツで働いたりといわゆる大学生活とは違いますね。
「あまり自分の心にハードルを設けたりしないかも知れません。既成概念に沿って生きるというよりも自分が信じる道を歩みたいタイプですね。振り返ってよくよく考えると親の教育方針の影響があるのかも知れませんね。恵まれたと思います」
「会計士のロールモデル」がビジネスの原動力
トーマツでは若手としてどのように心がけていたのですか?
「自分から機会を得るようにしました。4年間居たのですが充実していたと思います。自分が優秀というよりもチャンスを与えてもらったのが大きいです」
トーマツ時代は4年と短いのですね。
「はい。ちょうどこの時期は会計士業界全体的に閉塞感がありました。私は運良くいろいろと挑戦はできたのですが、他の若手は新しいことに挑戦がしづらい状況でもあったのです。その状況を見て私は転職することにしました」
どういうことでしょうか?もう少し教えてください。
「当時ふと会計士業界を見渡した時に若手のロールモデルになるキャリアの方がいないと思いまして。もし私が外に出て活躍できたとしたら、業界の若手に勇気を提供できるのではないかと雷に打たれた気持ちになったのです。ですから、どこかの会社に行くことが決まっていたのではなく、先に退職することを決めました」
次のキャリアはどうなったのですか?
「父が小規模な会社を経営し四苦八苦していた姿を見ていたこともあって、やがては事業再生の仕事をしたいと思っていたのですが、よく考えると自分が会社の経営をしたことがないことに気づきました(笑)。そこで、まず会社を成長させる経験をしないといけないなと思い、スマホゲーム関連のスタートアップでCFO(チーフファイナンシャルオフィサー・最高財務責任者)として働くことにしました」
なるほど。このあたりから攻めの感じになっていかれるわけですね。
「それが、今振り返るとそんなことはなかったのです。当時財務・経理・総務・労務などバックオフィス全般を管掌していただけであって、会社の成長に寄与出来た実感は資金調達くらいでした。自分の中で“バックオフィスで入ったのだからバックオフィスだけ”という感じで業務に線引きをしてしまっていましたね。今振り返るとイケていないなと。いまはその反省を活かして線引きをしないように努力しています」
なるほど、その会社はどのようになったのですか?
「転職直後は10名くらいの規模でしたが40名ほどに成長し、上場企業に売却しました。売却先は体制も整っていたので私は退職することを決意し、バックオフィスを0から立ち上げた経験をもとに、フリーランスとしてスタートアップ支援を開始しました」
フリーランス経験もあるのですね。そして次はいよいよマネーフォワードに入られるわけですね。
「はい。2014年に入社しました。フリーランス時代にマネーフォワードのユーザーだったこともあり、導入事例としてHPに掲載いただいたりしていました。ユーザーとしての視点で“クラウド会計はもっとこうするとより良くなる”という自分なりのイメージもありましたし、なにより今までの自分のキャリアの集大成だと腹落ちしてきたので参画することに決めました」
マネーフォワードでの最初のお仕事はなんだったのですか?
「まずセールスの部署に配属されました」
いままでのキャリアとは畑違いですね!
「そうですね。ただ、会社からは『しばらく社内全体を見渡してからどの仕事に挑戦するか決めて良いよ』と言われていたのでセールスありきで配属されたわけではなかったのですが」
ペルソナユーザーとして招聘されたわけですものね。
「当時のマネーフォワード は人数も少なく、そういう面もあったと思います。ただ、自分としては過去スタートアップを成長させられなかったという反省から、セールス部署に配属されたらちゃんと取り組んでみようと思っていました」
なるほど。セールスいかがでしたか?
「実は、私自身は全く売ることができなかったのです(笑)。悔しさもありつつ、“商品に課題があるな”とポジティブに頭で切り替えていました(笑)」
ワイルドですね(笑)。その後どのように動いたのですか?
「やることはひとつです。プログラミングも勉強しながら、自分も企画開発側にコミットしました」
なるほど、“仕事に線引きをしない”ということですね。
「はい。過去の反省からですね。開発以外にもIPOを目指して体制構築をしているときでしたので“社内経理の内製化”のプロジェクトの立ち上げを行なったりしました」
フットワーク軽いですね!
「冒頭申し上げた、“公認会計士のロールモデルになる”ことが常に念頭にありました。冷静に会社の様々な経営課題や事業課題を俯瞰し、いまの自分の役割に線引きせずにファーストペンギンとして取り組むことだと、自分の中で感じていたのです」
“ゼネラリストという専門家”を目指して
今までのキャリアを振り返ってみてどう思われますか。
「そうですね、いま世の中は副業・リモートワークなど働き方の多様化の話が出ることが多いですが、職種も多様化していると思います。たとえば営業職やマーケティング職も細分化され分業化・専門性・体系化されてきていますよね。そうなると俯瞰して全体最適を提案し意思決定する価値が増します。この流れは不可逆でしょう。私はマネーフォワードのビジネス領域事業のCSOという仕事を通じて、“ゼネラリストという専門家”を目指したいのだと自己分析をしています」
当初は公認会計士のロールモデルを目指されていたわけですが、“ビジネスマン、とくにマネージメント層にとってのロールモデル”へアップデートされておられると理解しました。その視点からゼネラリストとして課題に感じているところはどこでしょうか?
「社内向けの仕事は磨けているとは思うのですが、外の人とのつながりや外に向けた仕事においては十分とは言えません。事業成長させるという点では必要不可欠ですからね」
なるほど、明確ですね。どのように解決されていかれるのでしょうか?
「実はゼネラリストのロールというのは経営者そのものだと思っています。マネーフォワードはまさに経営人材を増やそうとしているところで、私が目指すところと一致しています。ですから私自身やりがいがあります。経営者が持つ全体を俯瞰し課題解決する力を磨いていけますし、CSOとして経営の素養がある人材の獲得も図れています」
うーん、美しい。では今後新たに取り組まれたいことを教えてください。
「若手含め社員にどんどん挑戦してもらうことに取り組みたいです。ただし、頭ごなしにそれを求めるのではなく、相手に合わせて促していきたいと思います。働き方の多様化とともに画一的なマネジメントをする時代は終わっていますし、マネジメントされる側に合わせて挑戦を促す最適化をしていきます」
最後にSankeiBiz読者の方にメッセージをお願いいたします。
「自分は20代の頃にチャレンジしたいという気持ちをもってコトにあたってきました。ですから過去に自分で仕事の線引きをしてしまったことは反省していますし、いまは出来るだけ線引きせずに挑戦するようにしています。これが自分の信じる道です。しかし、みなさんにとってこの道が心地よいものかどうかは別だと思います。仮に挑戦しなくても仕事ができているのであればそれは実力がある裏返しでもあります。本質的に突き詰めると挑戦する、しないは重要ではなくて、その時々で自分が信じているものに心から取り組めていれば良いのではないでしょうか」
山田さんありがとうございました。
【プロフィール】小原聖誉(おばら・まさしげ)
1977年生まれ。1999年より、スタートアップのキャリアをスタート。その後モバイルコンテンツコンサル会社を経て2013年35歳で起業。のべ400万人以上に利用されるアプリメディアを提供し、16年4月にKDDIグループmedibaにバイアウト。現在はエンジェル投資家として15社に出資し1社上場。
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【ビジネスパーソン大航海時代】は小原聖誉さんが多様な働き方が選択できる「大航海時代」に生きるビジネスパーソンを応援する連載コラムです。更新は原則第3水曜日。アーカイブはこちら
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