【5時から作家塾】地方活性に一助、「旅をしながら働ける」新サービスが大反響

 

 旅費、交通費ゼロで地方に行ける。

 旅先では食事や宿泊が無料になる。

 その代わりに1日6時間、現地で働く。

 なかなか魅力的な求人だが、これは実際に存在する案件だ。

 2019年10月に始まった「タイミートラベル」というサービスが、こんな画期的な求人を募集して話題になっている。立ち上げたのは、アルバイトアプリで知られるタイミー。地方と都市部の人材をつなぐために始めた、新しい形のワークシェアリングサービスである。

 タイミートラベルの求人は、現地の滞在は1週間程度、1日6時間の労働以外は自由に行動できるようになっており、観光や他の体験をするのも可能だ。そのため、多数の応募者があり、これまで最高12倍になった案件もあるという。

 どんな求人があるのか一例を紹介しよう。地方の農業をはじめ、スーパー、飲食業、ホテル・旅館などのサービス業が多い。農業では、鹿児島県の種子島で特産の安納芋の収穫や岐阜県高山市でパプリカの収穫、日本最南端の波照間島で農家の手伝いなど。サービス業では、沖縄のリゾートホテルやスキー場などがある。確かに交通費が無料なら行ってみたい気がする。

リゾートバイトと違い、働くのは1週間程度。1日6時間の労働以外は現地で自由な体験ができるのが人気の一因だ(イメージ)

 試験的な求人、50倍で手応え

 なぜ、この事業を立ち上げたのか。株式会社タイミー取締役副社長の川島諒一さんに取材をした。

 「アルバイトアプリのタイミーを運営する中で、地方のお客様からの問い合わせが増えてきました。タイミーを使って求人をしたいとの希望が多かったのですが、求人エリアが都市部に限定されており、すぐに希望に添うことが難しい状態でした」(川島諒一さん、以下同)

 ここ数年、全国的に人手不足の傾向が強くなっている。とりわけ地方では高額な賃金を出しても働き手が集まらない厳しい現状がある。

 「タイミーを全国展開すればいいのですが、それではどうしても時間がかかってしまいます。そこで、都市部の人が旅をしながら地方で働くというサービスを考え、立ち上げました。2019年4月に試験的に求人を行ったところ、50倍もの応募倍率となり、事業化への手応えを感じて、10月に本格的にスタートしたのです」

 「採用者にはタイミーより事前に交通費が支給される。現地での宿泊については、ホテルや社宅などが提供され、食事もすべて支払い不要となっている。賃金はこれら滞在費に充てられることとなるが、実働時間は6時間と比較的短いため、滞在地で興味ある体験なども満喫することができる。これが人気の一因でなっている」

 どんな応募者が多いのか

 スタートして3カ月余りだが、すでに数千人が登録をしているという。どんな応募者が多いのだろうか。

 「登録されている方は、大きく2つに分かれます。1つは学生さんです。1週間程度の休みを取らねばならないので、やはり時間に余裕のある学生が多いですね。様々な職業を経験して、自身の仕事感を養っていきたいという方が多いです。もう1つは、地方への移住を考えている方。旅行で地方へ行っても表面的な情報しか得られません。しかし、現地で働いたり、コミュニティーに入ったりしてみると、住みやすい土地なのかどうかが把握しやすくなります。移住希望者は30代の方が多いのですが、皆さん、お試し移住という形でサービスを利用しているようです」

 とりわけ人手不足に悩んでいるのが、地方の農業である。都市部には農業を体験してみたい若者が多いが、アルバイトで働くとなると「数週間以上」という条件が多い。本業を持ちながら、そこまでの長期休暇を取るのは難しい。1週間程度なら初めて農業を体験するには適当な期間ではないだろうか。

 積み重ねが地方活性の一助に

 2014年に実施した内閣府の世論調査によると、「都市地域と農山漁村地域の間で相互に理解を深めるために,両者の間で交流を進めることが必要だと思うか」という質問に対し、89.9%の人が「必要だ」と回答している。

 ここ数年、「関係人口」という言葉を耳にする機会が多くなった。これは「観光以上、定住未満」という新たな地方の活性化のひとつである。都市部の人が、地方に何度も足を運んで親密な関係を築き、支援をしていく。場合によっては現地のコミュニティーに入り、何らかの活動に参加するケースも少なくない。その積み重ねが地方活性の一助となっていくのである。

タイミートラベルでは、農作業の求人が人気を呼んでいる。こちらは日本最南端の島「波照間島」でのサトウキビ収穫の様子

 「地方では労働者人口が不足しています。しかし最近は、あえて拠点を地方に置くスタートアップ企業が登場するなど、移住者も徐々に増えています。こういった人々は、新しい視点で地方を盛り上げていく可能性を秘めていると思っています。地方の人にとっては当たり前に感じることも、都会の人にとっては斬新に映ることもあるでしょう。そこからイノベーションにつながっていく展開は大いにあります。タイミートラベルを利用する方は、単にお金を稼ぐのが目的ではなく、地方に興味を持ち、体験を通して関わりを持ちたいと考えている方が多いのです」

 始まったばかりのサービスだが、求人件数は増えており、地方の活性化という点で大きな可能性を秘めているように感じる。移住を考えている方、様々な仕事を体験してみたい方、一度利用してみてはいかがだろうか。(吉田由紀子/5時から作家塾(R)

【プロフィール】5時から作家塾(R)

編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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