最強のコミュニケーション術

5人に1人はHSP 「敏感すぎる人」をコミュ障で片づけてよいのか

藤田尚弓

 感受性が強すぎる人たち

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第13回は「感受性が強すぎる人」「敏感すぎる人」がテーマです。「HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼ばれる感受性が強すぎる人たちが注目されています。皆さんは、人よりも敏感なせいで生きづらさを感じている人たちがいることをご存知でしょうか。一説によると、HSPは人口の20%いるとも言われています。彼らはどのような特徴を持っているのか。またどのように接すればいいのでしょうか。

 HSPの4タイプ 「普段は〇〇なのに…」

 心理学者のエレイン・アーロンは、HSPの人を以下の4つに分類しています。

 ・情報を深く処理するタイプ

 微妙なことにもよく気づき思慮深い反面、非HSPなら考えが及ばないところまで考えすぎるため、結論を出すまでに時間がかかる

 ・刺激を強く感じやすいタイプ

 繊細にキャッチできるため、音、人混み、複雑なタスクなどに圧倒されやすい

 ・感情反応が強く、共感力も高いタイプ

 感情の振れ幅が大きく、他者の喜びや悲しみも自分のことのように感じやすい

 ・小さな変化や刺激にも敏感なタイプ

 五感が敏感で、細かいことにもよく気づくため、過度に気にしてしまうことも

 このように具体的にグループ分けすると、5人に1人とも言われる感受性が強すぎる人たちについてもイメージしやすいのではないでしょうか。

 筆者の周りにも、優秀なのに深く考え込んでしまい決断ができなくなってしまう人がいます。シャイなわけでもないのに初対面の人や場所が極端に苦手な人、気分屋というわけではなく制御しようとしているのに感情の差が激しい人、しっかりしているのに変化に敏感過ぎて傷ついてしまう人もいます。単なる弱い人ではなく、ふとしたきっかけで、敏感さのせいで大きなダメージを受けてしまう。そんな「普段は〇〇なのに…」と感じさせる人がいたら、HSPかもしれません。

 敏感過ぎて大変なものの、彼らはその敏感さを活かすことで一般の人にはない力を発揮することもできると言われています。HSPの特徴をチェックリストの形で、もう少し具体的に見ていきましょう。

 あなたもHSPかも? 感受性が強すぎる人チェックリスト

 先行研究をベースに、筆者が日本に多いと感じるHSPの特徴を表す質問を加えたチェックリストを作成してみました。自分にあてはまらないか、また部下や同僚などにこういう人がいないかイメージしながらチェックしてみてください。

  • 一度にたくさんのことを頼まれるとイライラする
  • うるさい場所や混みあっている場所が我慢ならない
  • 他者の喜怒哀楽に影響されることが多い
  • 察することが得意で、察してほしいと思うことも多い
  • 初めての場所は苦手でなるべく避けたいと思う
  • 人と急に仲良くなることはできない
  • 空想をすることが多い
  • 相手の顔色を優先して自分のキャラや意見を変えてしまうことが多い
  • 表情から直感的に悪意や嫌悪感を察知してしまうことがある
  • 些細なことで傷ついて自分でもびっくりすることがある
  • 寛容になりたいが自分の話ばかりする人に耐えられない

 「まさに当てはまる!」という項目が複数あった場合、HSPを疑ってもよいかもしれません。HSPは病気のようなものではなく、生まれもった性格や体質のようなものです。生きづらさを感じやすいというデメリットはあるものの、自分に合った環境であれば一般的な人よりもよいパフォーマンスができることも報告されています。治すというよりは、伸ばすべきだという専門家もいます。周りにこのような人たちがいる場合には、彼らが辛くならないような工夫をしながら、適切な環境下で働けるようにしていくといいでしょう。

 感受性が強すぎる人への接し方

 HSPの研究はまだ浅いのですが、特徴を踏まえたうえで、以下のような点に気をつけたコミュニケーションをとることをお勧めします。

 ・自分の経験を押し付けない

 「このくらいできるだろう」「我慢すれば慣れる」「じきに出来るようになる」など、自分の経験をベースにした押し付けはやめましょう。敏感さは人によって違うものです。受けるショックや抱える不安の大きさに違いがあることを考慮し、多様性を認める余裕を持てるのが理想です。

 ・決めつけない

 例えば、対人コミュニケーションに繊細という理由だけで「あいつはコミュ障だから」、緊張が強い傾向があるだけで「気が弱い」といった決めつけや評価をしないように心がけましょう。筆者の友人には「本来は対人能力があるのに、相手の表情などを敏感に察知し過ぎて遠慮してしまう人」も「外向的で度胸もあるのに、条件が揃うと緊張傾向が強く出てしまう人」もいます。むしろ「〇〇なのに、××してしまうことがある」という矛盾こそがHSPを見つけるポイントなのかなと思うくらいです。

 ・見守る

 これは個人的な見解なのですが、HSPの人たちが常に感受性が強い状態ではないように見えます。「過敏になっている」と気づいたときは、それについて批評したり、治そうとしたりせず、まずはそっと見守ってはどうでしょうか。無自覚かもしれませんが、彼らは過敏な状態から抜け出そうと様々な行動を試みています。時間が経てばショックや混乱から回復するケースがほとんどなので、辛いときにさらにタスクを与えてしまうような助言や議論は避けたほうがよいでしょう。

 「強み」として活かすための想像力

 協調性や察することを大事にする日本は、他の国に比べHSPの人が暮らしやすいという意見もありますが、無理解な職場やパートナーに苦しんでいる人も見受けられます。前向きで外向性が高い人ばかりが評価されやすい社会ですが、内省的な視点や繊細さも素晴らしい個性であり強みの一つに違いありません。忙しい毎日の中では難しいかもしれませんが、敏感である彼らの強みを生かし共存するためにも、一人一人が想像力を働かすことができる余裕を持ちたいものです。

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら