台風復興へ「ライダーズ神社」を引き受け 千葉・鴨川の宮司の取り組み

 
天津神明宮の岡野哲郎宮司=千葉県鴨川市(永田岳彦撮影)

 源頼朝がこの地で源氏の再興を祈願し、鎌倉で再興を果たした後の寿永3(1184)年、伊勢神宮の神々の霊を分ける分霊を行い招請した神々と、神話の時代に出雲国(現在の島根県)から海を渡りこの地を訪れたとされる、「えびす様」として有名な事代主神(ことしろぬしのかみ)を合わせて祭る千葉県鴨川市の天津神明宮(あまつしんめいぐう)。伊勢神宮ゆかりの「房州伊勢の宮」として知られ、初詣やパワースポット巡りなどで地元はもちろん、関東一円から多くの人が訪れる。由緒あるこの神社の66代目の宮司を平成7年に継ぎ、約25年。地域に根差しつつ、さまざまな取り組みを行ってきた。

 「地域に根差した神社として伝統と格式は守りつつ、地域の活性化にも貢献したい」と静かに語る。

 神職の家に生まれ育ち自然と神職の仕事に関心は向いたが、子供のころは特に後を継いでほしいとはいわれなかった。「でも父も本心では後を継いでほしいとずっと思っていたのではないかな」と振り返る。

 いったんは神職の世界から離れようと大学卒業後、縁もゆかりもなかった日本プロボウリング協会に就職したものの、神職の道に戻った。神職の面白さややりがいを「普通の会社員だといろいろ話しても気に留めてくれる人は少ないけど、由緒ある神社の宮司さんのいうことだからと参拝者や地域の方が一目置いてくれる」ことだと話し、「おごることなく振る舞いに気を付けないといけない」と気を引き締める。

 最近特に気にかけているのは昨年の台風15号、19号と同年10月25日の記録的大雨で被災した地域の復興。神社の建物にこそほとんど被害はなかったが、周囲を囲む森の巨木が何本も倒れた。台風被害の復興と房総半島の地域活性化イベント「チバイク」に協力したのもそのためだ。大型バイクで房総半島のツーリングを楽しむライダーたちも他の参拝者たちに気兼ねなくお参りできるようにと、県内初のライダーズ神社になることも引き受けた。

 「安全運転のお参りをしにこの地域を訪れてくれて、地元のお店で食事をしたり、買い物をしてくれたりすればいい」と前向きにとらえる。

 近隣の神社でも神職の後継者がいなくなり、地域と伝統や格式を全て知りつくしている数少ない神職として頼りにされることも多い。自身の子供も神職となっており、いつでもバトンタッチはできるが、まだやりたいことは多いという。

 「多くの人が立ち寄り、お参りできたことを誇れるような神社にしたい。まだまだこれからです」と控えめに話しつつ、自らが理想とする神社と宮司を目指して、これからも日々歩み続ける。(永田岳彦)

 おかの・てつろう 昭和23年、千葉県天津町(現同県鴨川市)出身。国学院大卒。源頼朝にゆかりがあり、「房州伊勢の宮」といわれ800年以上続いている天津神明宮の第66代目宮司。台風被害からの復興や地域活性化のため、昨年11月から県内初のライダーズ神社も引き受けている。