【5時から作家塾】インポッシブル・フーズや水耕栽培 CES 2020で見た新たな「食」への取り組み

 

 今年1月に米国ラスベガスで開催されたCES 2020において、植物由来の材料から作った「肉」で急成長中のインポッシブル・フーズが、「インポッシブル・ポーク」を発表した。同社はこれまで牛肉に味や食感を似せたハンバーグを開発、レストランやファストフード・チェーン店に供給してきたが、今度は「豚肉」を出してきたのである。

 同社はCESで記者会見を開いたほか、昨年と同様に会場であるラスベガス・コンベンション・センターの屋外展示スペースにブースを設置、来場者に新しい「インポッシブル・ポーク」と、米大手ハンバーガー・チェーン店ホワイト・キャッスルが実際に販売している「インポッシブル・スライダー(パテはインポッシブル・フーズ製の「牛肉」)を、交互に無料配布した。インポッシブル・ポーク・バーガーはベトナムのサンドイッチ、バインミー風で、やや固めのパンに「ポーク」、そしてキュウリと甘酸っぱい人参・大根(なますに近い味)が挟んであった。「バインミーだよ」といって出されれば、信じたと思う。そのくらいレベルの高い味だった。またスライダーのほうも、昨年初めてCESで食べたときよりも味が改善されているように感じた

豚肉ではない「豚肉」を使ったインポッシブル・ポーク・バーガー

 こうした植物由来の「肉」は、ベジタリアンやビーガンをターゲットにしていると思われるかもしれない。しかし、動物の肉を用いない「肉」の生産工程は、環境にも優しいことがわかっている。例えば、インポッシブル・フーズのバーガー製造は一般的な牛肉のバーガー製造と比べ、使用する水が87%も少ない。また同社と競合する、同じく植物由来の肉を生産するビヨンド・ミートがバーガー・パテを作るのに必要とする土地は、牛肉パテの生産に要する土地よりも93%も少なくて済むという。

 CES 2020ではまた、水耕栽培や植物工場の展示も複数見られた。例えば、韓国のエヌ・シングは、屋内にずらりと並べられた小さなキューブにひとつずつ野菜の種をまき、温度、湿度、LED照明などを、すべてコンピューター制御する野菜育成システムを開発した。情報はセンサーによって取得、湿度や温度などの調節はスマートフォン1台でできるため、世界中どこにいても野菜の管理が可能だ。また、個々のキューブは小さいため、小さなスペースから広大な施設まで様々な設備内に設置可能で、エヌ・シングはその1つとして、大型トラックの荷台サイズのコンテナ内にキューブを並べ、さらにそのコンテナを二段重ねにした実例写真を紹介していた。

韓国のエヌ・シングが開発したキューブ・システム

 日本を含む先進国では人口減少が始まって久しいが、全世界的に見ると人口は確実に増えている。しかも人口増加地域には貧しい国が多く、より持続可能な方法で、食糧生産性を高める必要がある。米ヴァンダービルト大学の教授で環境ジャーナリストのアマンダ・リトル氏は、著作『食物の運命(The Fate of Food)』において、近年の気候変動による自然災害の多発が食糧生産に悪影響を与えており、今後はインポッシブル・バーガーのような肉の生産、水耕栽培や植物工場が増えていくだろうと記している。

 CES 2020において、もうひとつ興味深い展示があった。日本のプランティオが提唱する、農業とソーシャルネットワークを結びつけた「アグリテインメント」だ。ユーザーはプランティオの専用アプリで、同社が運営する都市型農園を探し、スマートロックで専用キーを発行して農園に入園、野菜の世話や収穫をすることが可能だ。アプリはSNSのように機能するため、同じ農園に通う者同士でコミュニケーションを取り合い、協力して農園の野菜を育てることができる。農園といっても一般的な農園とは異なり、その様子はセンサーと通信モジュールで常時チェックされており、人工知能が水不足を通知したり、収穫期を予想したりする。なお、利用には会費が必要で、サブスクリプション形式となっている。

 今年5月には、さらに都市型農園を拡大するための総合サービス「グロー」を立ち上げる。こちらは、気温・湿度、土壌水分量、土壌温度、日照を測定可能なセンサーとカメラを備えた専用デバイスを発売、同デバイスを購入すれば、個人でも自分のプランターを「農園」にし、前述の専用アプリを利用して、メンバーと協力して野菜作りができるというものだ。デバイスはまず5月に日本、追ってシンガポールと台湾、次いでアメリカ、最終的には欧州でも発売予定という。(岡真由美/5時から作家塾(R)

【プロフィール】5時から作家塾(R)

編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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