受付嬢だったころには考えられない働き方
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、話題になっているのが「テレワーク(リモートワーク)」です。オリンピック開催時の対応や働き方改革の一環としても推奨されてきましたが、新型肺炎によって、非常時の対応としても注目されているのです。
ご存じのとおり、テレワークとは、ICTを活用した場所や時間にとらわれない働き方のことです。テレワークは、勤務を行う場所により3種類に分けられます。
- ・在宅勤務:自宅で仕事をする
- ・モバイルワーク:移動中にPCや携帯電話などを使って仕事をする
- ・サテライトオフィス勤務:勤務先以外のオフィススペースで働く
弊社では5年前の創業時からテレワーク(弊社はリモートワークと呼んでいます)を取り入れており、社員は、在宅勤務とモバイルワークを活用しています。私もテレワークで対応することが少なくありません。移動が多く、時間を問わず仕事する必要があるなどの理由で、家でも外出先でも仕事をします。実際、今この原稿を書いている場所は会社ではありません。受付嬢だったころには考えられない働き方です。受付嬢は業務のほとんどが「受付」という空間に紐づいていましたから。
今回は、実際にテレワークを活用している企業の経営者という観点で、生産性を下げずにテレワークをうまく取り入れるコツを提案したいと思います。
同じ企業の中でも「向く仕事」と「向かない仕事」がある
受付嬢がテレワークで働くことが難しいように、弊社においても、テレワークが適した仕事と適さない仕事があります。そのため、職種によってテレワークを「取り入れてよい量」を分けています。
「いつでも」テレワークOKにしているのは基本的に、クリエイティブ系の仕事をする人たちです。エンジニアやデザイナーのように黙々と作業に向き合うような仕事(いわゆるコミュニケーションが主ではない)は自分が集中できる環境でやってもらうほうが効率がいいと思います。出社は基本的に、週1回の開発会議に参加するときだけです。弊社は東京・渋谷にオフィスを構えていますが、地方に住み、「フルリモートワーク」を選んでいる人には出社の義務がない人もいます。コミュニケーションにはテレカン(テレカンファレンス)やビジネスチャットアプリなどのツールを活用します。
一方、弊社の中でも、人とのコミュニケーションを頻繁に必要とする仕事につく人にはオフィスワークを義務付けていますが、「テレワークが認められなければ休まざるをえない日」に限って、テレワークを許可しています。「小さい子供がいる」「家族の看病のため」といった場合は、数日にわたり、短期間のテレワークを認めることもあります。
台風や育児などの都合で、「明日は出社できないかもしれない」という可能性がある日に、会社が貸与している端末を持ち帰ります。弊社では常にクラウド上で作業が可能なようにしていますが、社内LANにアクセスする場合は、セキュリティに配慮してVPNでアクセスする仕組みを整えています。
転職メンバーを直撃 テレワークって実際どう?
テレワークは私にとってすでに当たり前の働き方です。そこで、テレワークが許可されていなかった職場から弊社に転職し、あまりまだ馴染みのない社員に、テレワークを体験してみての率直な感想やコメントを聞いてみました。
- ・通勤・移動時間を削減できるので、プライベートとビジネスタイムを通して時間の効率化ができる
- ・台風などの非常時は環境や状況に応じて、出勤するか否か判断できるようになった(前の職場では、会社側による判断のタイミングが自宅を出る時間よりも遅いことがあった)
- ・テレカンなども組み合わせられるのでより有効にテレワークできる
- ・成果が見える仕組みが作られているので、評価にも不安がない
- ・出社かテレワークかという選択肢があると、自分で仕事の仕方を選んでいるという認識があり、責任を持って従事できる
- ・今はテレワークが選べない環境が考えられない
このような声を聞くことができました。社員の声を聞く限り、弊社ではテレワークがうまく機能しているようです。
テレワークははっきり言ってサボれます
しかし、テレワークの「課題」や「デメリット」を前に、その導入に二の足を踏む企業も多いようです。
「テレワークってふつうにサボれるんじゃないの」「〇〇は今日、在宅勤務のはずだが、本当にきちんと働いているのだろうか」。この勤怠管理についての疑問や不安は、おそらく経営者や管理者の方々が一番気になる部分だと思います。
結論から言うと、テレワークは「サボれます」。しかしそれはテレワークに限ったことではないのです。出社していてもサボる人はサボりますし、テレワークでも一生懸命仕事をする人はします。「サボる=テレワークだから」ではありません。環境はたしかに行動を左右します。もちろん、自宅にいるより会社にいるほうが環境的な圧力や緊張感があるゆえ、仕事へ向かわせる強制力は働きやすいでしょう。しかし強制力が生産性にも影響するかいうとそうではないと思います。
弊社では、テレワーク作業の際は必ず、開始前にチャットで「勤務時間と勤務内容」を報告してもらい、終了時にも同じように報告をしてもらうことを義務付けています。課題と進捗状況を社内で共有したうえで、当該上司が成果を判断します。
企業側はテレワーカーの勤怠に不安をおぼえますが、一方で、上司がいないところで作業をするテレワーカー側は人事評価に不安をおぼえるかもしれません。「業務の可視化」と「成果主義」は、勤怠管理と人事評価というテレワークの課題や不安を同時に解消できる有効な手段だと思います。
裁量を与えると生産性も上がる?
さきほど、テレワークについて弊社内の声をご紹介しましたが、社員のコメントを通じて感じたことは、「自分の意思で働き方を選ぶこと」が自律性を高めるということです。これが、テレワークでも非効率にならずに、生産性を維持する・上げる動機になるんだと思いました。企業側が一方的に制度を押し付けるより、最終的な判断は各々で下してもらうことがテレワークを成功させる鍵なのかもしれません。
そしてもう一つ、テレワークで生産性を維持するために、「普段からテレワークでの仕事の仕方に慣れること」が重要だと思います。例えば地震や感染症などの緊急時に、テレワークに慣れていない人がいきなり「数日間テレワークで対応を」と言われても、効率よく仕事ができるはずがありません。訓練だけでなく、日々の業務に少しでもテレワークを取り入れて慣れておく必要はありそうです。
やっぱりテレワークできない人もいる、だからこそ
テレワークは働き手が少なくなる中、活躍する人々を増やす上で有効な手段です。しかし取り入れ方次第では、会社への不満に繋がるリスクもあります。
私の前職である受付嬢もテレワークでは対応できない業務です。同じ企業でも、テレワークで対応できる人と、業務上テレワークができない人が必ずいるのです。テレワークを導入するのであれば、特に非常時や緊急時にテレワークで対応できない人向けの行動基準を用意しておくなど、企業としてどういったフォローをするのかを事前に周知すべきだと思います。テレワーク導入が加速する中で、「出社しなければいけない人たち」を見落としてはいけません。
【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら