最強のコミュニケーション術

離婚リスクが高い夫婦 「うちは会話があるから大丈夫」の危うさ

藤田尚弓

 あなたは離婚しやすい人?

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第14回は「夫婦のコミュニケーション」がテーマです。仕事に集中するためにも、パートナーとのよい関係を維持したいと思う人は多いのではないでしょうか。どのようなコミュニケーションが離婚リスクを高くするのか。円満な夫婦はどのような会話をしているのか。この機会に確認しておきましょう。

 あなたの離婚リスクをチェック

・趣味について

  • A 自分(夫)に合わせてもらう派
  • B 妻に合わせる派

・同棲経験ついて

  • A 現在のパートナーとは同棲してから結婚
  • B 同棲はせずに結婚

・喫煙について

  • A タバコを吸う
  • B タバコは吸わない

・結婚経験

  • A 現在のパートナーとは再婚
  • B 初婚

・両親について

  • A 親に離婚経験がある
  • B 親に離婚経験はない

・パートナーとケンカしたとき

  • A 侮辱してしまったことがある
  • B 侮辱したことはない

・トラブルへの対処

  • A 我慢できなくなるまで放置
  • B 早めに対処

※チェックテストは先行研究をもとに筆者が作成

 Aが4つ以上あった方は、離婚リスクが高い可能性があります。今日から夫婦の会話に気をつけてください。リスクが低かった人も、引き続きパートナーといい関係を維持するために、円満な夫婦の会話について見ていきましょう。

 夫婦円満のコツは「会話」と「○○」

 明治安田生命保険相互会社が2019年に「夫婦」をテーマにおこなったアンケート調査で夫婦間でのコミュニケーションの実態を見ていきましょう。

 調査によると、夫婦円満のために必要なことは何かという質問への回答で最も多かったのは「よく会話をする(66.4%)」で、2位は「感謝の気持ちを忘れない(57.7%)」でした。

  関係維持のコツが会話と感謝だなんて、あたりまえ過ぎると思ったあなた。十分な会話量がとれていますか? あなたの感謝はパートナーに伝わっていますか?

 夫婦円満であると答えた人の会話時間が「平日121分」なのに対して、円満でないと答えた人たちは「同39分」と、なんと3倍近くの差がありました。さて、みなさんはパートナーと、普段どのくらい会話をしているでしょうか。

 長時間勤務でなかなか会話をする時間がとれないという人にもオススメなのが、メールやSNSを使った会話です。「これから帰る」「何か買っていくものはある」といった何気ない会話も、相手を思いやる気持ちを表現する方法といえるでしょう。

 つづいて夫婦で話す内容を見てみましょう。円満のグループ、円満でないクループともに第1位は「子供のこと」。しかし「ニュース」「仕事のこと」「休日の予定」「夫婦のこと」では両者に大きな開きがありました。「うちは会話があるから大丈夫だ」と思っている皆さん、子供こと以外の会話はできているでしょうか?

 次に夫婦間での感謝について考えてみましょう。多くの人が配偶者への感謝の気持ちは持っていると思います。しかし、せっかくの気持ちも相手に伝わっていなければ意味がありません。あたりまえだと思うことでも「ありがとう」「助かるよ」「嬉しいな」といったリアクションをとるように心がけましょう。

 「自分は嫁に感謝を行動で伝えている」と思ったあなた。もしかすると男女のギャップに気づかないまま、いつかトラブルに発展してしまうかも知れません。その理由を解説しましょう。

 男女のギャップ 「大事にしていること」に違い

 先ほどの夫婦円満に必要なことに関するアンケート調査結果で、夫と妻のギャップが見られる項目がありました。夫は「結婚記念日・誕生日などにプレゼントをする」「一緒に食事に行く」「家事に協力する」など、円満のために行動を重視する傾向がありました。それに対し妻は「相手を尊重・信頼する」「感謝の気持ちを忘れない」「お互いの健康を気遣う」など、円満のために気持ちを重視する傾向があるのです。

 家事を手伝うことやプレゼントをすることで妻に感謝の気持ちを伝えられていると思っている男性は、今日から考えを改め、ぜひ気持ちを言葉に表すこと、つまり“言葉のプレゼント”にも挑戦してみてください。照れがある人はSNSやメールを活用すればいいのです。

 「最近呑みすぎじゃないの?」「早く寝て」「ちょっと食べ過ぎだよ」といった妻の小言に、不機嫌になるのも黄色信号です。妻からすれば健康系の小言は相手を気遣うコミュニケーション。不快に感じても「気遣ってくれてありがとう」と感謝の言葉で返したほうがよいのです。

 今日からできる 夫婦関係をよくする言い換え術

 最近1週間の、夫婦でした会話を思い出してみてください。二人の間にはどんなやりとりがあったでしょうか。

 先行研究によると、夫婦関係が円満でない夫婦では批判や皮肉などの否定的な会話が多くなっています。「なんで○○しないの」「そんなこともわからないの?」など、否定的な発言が思い浮かんだ人は要注意。その多くは悪気なく発言していたものだと思いますが、今後は否定的な言い方は避けるようにしましょう。

 円満なカップルの場合、嬉しい悲しいなどの感情表現が多く、相手を肯定する発言も多くなります。話す時間や量のバランスがとれているというのも特徴です。否定的なことを言いたくなったときに、それを言わないことでストレスが溜まることもあると思いますので、否定を感情表現に置き換えるというテクニックも覚えておきましょう。

  • なんで○○しないの
  •  →○○しないのは残念だな
  •  →○○してくれたら嬉しいんだけど
  • そんなこともわからないの?
  •  →知らないのはちょっと驚いた
  •  →興味を持ってくれたら楽しいのに

 ちょっとした工夫で、夫婦のコミュニケーションは向上させることができます。仕事に集中できるのも、安らげる家庭があってこそ。ぜひ毎日のコミュニケーションの中で意識してみてください。

藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら