【お金で損する人・得する人】コロナ禍で勤務先に利用してもらいたい 従業員の収入減を緩和できる仕組み

 
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、人影もまばらな東京・新宿の繁華街=4月7日午後

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、勤務先や行政の要請で自宅待機状態の人や勤務時間・勤務日数の大幅削減となった人、会社の都合で失業し収入が途絶えた人など影響が出ている人もいるでしょう。複雑で難解な社会保障制度について「所得補償」という観点で収入減少を緩和できる仕組みについて解説いたします。

 子育て世代のための小学校休業等対応支援金

 今回新たに創設された制度です。学校が臨時休校したり放課後児童クラブから利用を控える依頼があったりする状況下で、保護者として子供の世話を行う必要がある場合、有給休暇を取得させた会社に対する助成金です。従って、子供の世話のために仕事を休んだ人が国からお金をもらえるわけではありません。勤務先が社員を有給の休業扱いにすると勤務先に給与の補填としてお金が支払われる制度です。条件を詳しく見ていきましょう。(参照はこちら

 (1)臨時休業等

 新型コロナウイルスへの対応として、

(1)小学校等が臨時休業、休校した場合、

(2)自治体、放課後児童クラブ(いわゆる学童)、保育所から利用を控える依頼があった場合、

とされています。そのため、親が心配だから学校を休ませる場合 は対象外となります(※例外規定あり)。

 (2)小学校等

 小学校等の範囲についてはどうでしょう。小学校、義務教育学校(いわゆる小中一貫校)の前期課程(小学校1年生から6年生までに相当)、特別支援学校、放課後児童クラブ、放課後等デイサービス、幼稚園、保育所(いわゆる保育園)、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子供の一時的な預かりを行う事業、障害児の通所支援を行う施設等、が対象となっています。障害をお持ちのお子さんは、中学校、高校も対象となります。

 (3)感染した子ども

 (1)で説明した以外にも、新型コロナウイルスに感染したお子さん、発熱等の風邪症状がみられるお子さん、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触したお子さんがいる場合も、休業補償の対象となります。学校が休校にならなくても、お子さんが感染したり、感染の疑いが濃かったりするような場合で、保護者が仕事を休む場合は対象となる可能性があるということです。

 (4)保護者

 親だけではありません。親権者、未成年後見人、里親、祖父母で子供を監護する人、子供の世話を一時的に補助する親族が対象です。親だけではないという点を覚えておくといいでしょう。

 (5)有給休業の範囲

 学校の場合は平日や土曜日など、もともとの休日以外の日が対象です。春休みや日曜日などは対象外となります。放課後児童クラブなどは、本来施設が利用できる日が対象となります。お子さんが感染した場合や濃厚接触の場合は学校の休みにかかわらず、令和2年6月30日(令和2年4月5日執筆時点の情報で今後変化する可能性あり)までに取得した休業が対象となります。

 まとめると、

・お子さんが中学生未満で学校や預け先が休校状態、

あるいは

・お子さんが感染か濃厚接触した場合、

であって、

親を含めた保護者が子の世話のために6月30日までに有給休業を取得した場合、

が対象となります。条件が沢山あって難しいですね。

 子供が心配だから学校を休ませて、親も一緒に休むという状況は対象外となるのでご注意ください。

 では肝心の支援金の額はいくらになるのでしょうか?

 この支援金は保護者に対して直接支払うのではなく、勤務先に支払われます。勤務先が対象期間中の休業中に支払った賃金の100%、ただし1日8330円を上限として支払われます。つまり、時給1000円の場合は8時間相当です。パート社員やアルバイトであれば、時給1000円前後となる対象者は多くいるでしょう。しかし、正社員の場合は時給換算するともう少し高くなりますので、時給が1500円だとすると、有給扱いで1日8時間休む場合は、企業負担は1万2000円となります。支援金が8000円強支払われても、会社の持ち出しは4000円残ります。

 従って非正規社員の人が、子どものお世話のために家にいる時間の給料を保証しようという取り組みであることがわかります。正規社員の場合は、会社の負担が日額8000円強減らせる制度となります。パート、アルバイト社員の多い会社の方が使いやすい制度と言えるでしょう。

 なお、業務委託等で仕事を受けている個人事業者の場合は、委託の条件はありますが、就業できなかった日について1日あたり4100円支払われます。(参照はこちら)

 社長に知っておいてほしい雇用調整助成金

 続いて勤務先の経営状況に関連する制度である雇用調整助成金です。新型コロナウイルス感染症特例措置となります。

・売り上げなどが下がった場合で、

・雇用の維持のために社員に休業させ、

・休業の間休業手当を支払う場合

を想定しています。いくつか条件があるので見ていきましょう。

参照はこちら

 (1)対象となる事業主

 新型コロナウイルスの影響を受ける全業種

 (2)生産性指標要件

 1カ月の売上が10%以上低下した場合に対象となります。ただし、感染拡大防止のため、令和2年4月1日から6月30日までの間は緊急対応期間として、1カか月の売上が5%以上低下した場合を適用要件とします。

 (3)対象となる被保険者(社員)

 緊急対応期間では、雇用保険の被保険者でない社員(主に週20時間未満の労働)の休業も助成金の対象となりますが、緊急対応期間以外では、雇用保険の被保険者のみ(主に週20時間以上の労働)となります。

 (4)助成率

 休業期間中の休業手当の額に対して、どの程度の助成金を支払うかを定めているのが助成率です。大企業では1/2(50%)、中小企業では2/3(約67%)ですが、緊急対応期間中は大企業2/3(約67%)、中小企業4/5(80%)となり、解雇等を行わない場合は、大企業3/4(75%)、中小企業9/10(90%)と上昇します。

 (5)計画届

 通常は事前に労働局やハローワークに提出しますが、新型コロナウイルス感染症特例措置として、5月31日までの事後提出を認めています。また、緊急対応期間中は6月30日までの事後提出を認めています。

 他にもいくつか条件がありますが、2008年のリーマンショックと同等の要件緩和となっており、政府の強い危機感が表れています。

 以上が、勤務先が知らないと利用できない休業補償です。

【プロフィール】高橋成壽(たかはし・なるひさ)

ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役

1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら