働き方ラボ

流行る「オン飲み」に注意 カメラ前の醜態、ゲスな会話…ネットゆえの問題点

常見陽平

 宴会自粛が相次ぐ

 春は宴会の季節である。花見や歓迎会、結成会など、なにかと乾杯する機会が多い。宴会芸の準備も大変だ。幹事さんも。……例年は。

 今年は、新型コロナウイルスショックの影響で、宴会の中止・延期が相次いでいる。居酒屋での宴会は「密閉」「密集」「密接」の「三密」そのものとなり、クラスター発生や集団感染が懸念される。実際、報道されているように集団感染は主に宴会で発生している。

 飲食店は売上ダウンが確定的だ。テイクアウトやデリバリーに活路を見出そうとしている店もある。自粛を国が求めるならちゃんと補償するべきだという論も噴出している。これを機会に、行きつけの店が閉店してしまうのではないかと思うと、本当に切なくなる。ただ、感染しないためにも、させないためにも、できるだけ人に会わないのが得策である。

 盛り上がり見せるオンライン飲み会

 筆者はすっかり「アポなき子」になってしまった。厳密には、人とリアルな場で会う機会がほぼなくなってしまった。家族と、保育園の先生にしか会っていない。少人数での会食も3月下旬からすべてキャンセルとなったし、学内外の打ち合わせもすべてオンラインとなった。

 さて、そんな中、盛り上がりを見せているのが、オンライン飲み会である。各種ビデオチャットツールを用いて宴会を開くのである。これなら三密を避けられる。家庭との両立の関係で普段は宴会に参加できない人も、これなら少しだけでも参加できる。忙しい経営陣、管理職も少しだけでも顔を出すことができる。距離が関係ないので、地方や海外の拠点にいる人も参加できる。「春は宴会が連続して出費がきつい…」という人も、これなら一律の会費を取られないので、缶チューハイ1杯のお金で、いや最悪、家にある焼酎やウイスキーを水割りにして参加できる。

 このオンライン飲み会は、実はもう10年くらい前から存在しており、メディアでも取り上げられていた。いまは皆がスマートフォンを持っているし、チャットアプリも多様化している上、進化しているので実施しやすい。手軽にまったりと、つながっていられるのがポイントだ。

 一方、すでに、このオンライン飲み会の問題が起こり始めている。一つは泥酔問題だ。オンライン飲み会は、終電を気にすることなく飲むことができる。しかも、安く参加できる。その分、飲みすぎてしまうのだ。買いだめしていた缶チューハイを一気に全部飲み干してしまったなら、泥酔は必至だ。しかも、エンドレスに続いてしまう。

 多様な参加者がいるにも関わらず…

 短時間だけでも参加できるのがオンライン飲み会のメリットだ。中には一晩にオンライン飲み会を何軒(件)もハシゴする猛者もいる。やはり、飲みすぎてしまう。情報漏洩の問題もある。いや、居酒屋での飲み会でも、実社名入りで、進行中の案件から、社内の人事の話まで大声で話す輩はいる。オンライン飲みはこれに比べると安全かというと、そんなことはない。逆にクローズドな場だと思ってしまい、多様な参加者がいるのにも関わらず、ポロリと話してしまうこともある。家族だって近くにいる。昔の彼女の話や、それ以上にゲスい話などをし、それが家族に聞かれてしまうと、国難だけでなく、家難までやってきてしまう。ただでさえ、在宅勤務で家庭内不和が広がる問題が指摘されている中、トドメをさす事案になりかねない。

 オンライン飲み会になっても、酒癖が悪い人の問題はほぼ解決されない。身体の接触は避けられるものの、酔って絡む者、潰れる者はいるのである。もちろん、自宅なので終電を逃すこともない。介抱する必要もない。もっとも、一人暮らしの人が飲みすぎ、潰れた場合も、介抱することができない。洒落ではなく、命に関わる状態になることもある。だから、参加者は「飲み過ぎじゃない?」と警鐘を乱打する必要がありそうだ。

 画面越しのカオス

 先日、友人が開催したオンライン飲み会では、酔って爆睡した参加者がいたそうだ。寝ている参加者がずっと画面に映り続けるのはカオスそのものだったという。マナーにも注意したい。ハラスメントの問題だ。たとえばアルハラだ。居酒屋では現在、コールが禁止されているし、従業員はコールを発見したら駆けつけて止めるようにマニュアル化されている。ただ、オンライン飲み会は気をつけなくては無法地帯になる。気をつけたい。

 コール自体、もう20年くらい前から禁止されているので、20代、30代のビジネスパーソンは存在すら知らない人もいるだろう。一気飲みを盛り上げるためのコールが存在するのだ。「森のくまさん」の替え歌に合わせたものなど、様々なコールが存在した。やや余談だが、橋本聖子一気になるものも存在した。彼女が政治家になるずっと前、スピードスケート選手だった頃のムーブを真似し、両手にジョッキを持ち「聖子、聖子、橋本聖子!」というコールに合わせて交互に飲むのだ。私もやっていた。すでにスピードスケートの強豪選手は多数いるのに、時間が止まっている。さすが橋本聖子、レジェンドである。

 なお、オンライン飲み会はツールによっては記録を残しやすい。ちゃんと証拠が残ってしまうことを理解して、自制しよう。結局のところ、オンラインになったところで、飲み会は飲み会なのである。今年こそ、かっこいい飲み方、上品な酔い方を身に着けたい。もちろん、オンライン飲み会にはプラスの側面も多数ある。ついに緊急事態宣言が発令された。不安も高まる。気持ち良いつながりで乗り切ろう。

常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら