【5時から作家塾】在留資格「特定技能」は、コロナウイルスを恐れる技能実習生の救いとなるか

 
WEBサイトから簡単に問い合わせができる。青森本社から日本全国サポートに駆けつける
「新型コロナから一人でも多くの実習生を救いたい」と突進する工藤さん。高校時代はラグビーに明け暮れる毎日だったという

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。感染者数は4月7日(日本時間、夜の時点で)現在、世界で135万人を超え、死者数は7.4万人を超えている。日本でも感染者数は4400人を超えた(チャーター機の帰国者、クルーズ船の乗船者を除く)。

 そんな中、実は困った状態にある人々がいる。海外からの技能実習生だ。

 「技能実習」とは、海外から来日した研修生が日本で技術を身につけ、帰国後に祖国でその技術を生かすための「実務研修」として1993年から始まった制度だ。

 1年、3年、5年と在留資格には種類があるのだが、実習生には、在留期間が終了するとともに帰国することが義務付けられている。再度実習に参加したくても、一旦は帰国しなければならない。新型コロナウイルスが猛威を振るっていようがいまいが、在留期間は在留期間だ。

 しかし、技能実習生の祖国も非常事態となっており、日本からの入国は制限されている。

 そう、在留期間が終わっても帰れないのだ。出入国在留管理庁は、在留期間が切れても新型コロナウイルスの影響で帰れない実習生については、在留期間を30日延長するという措置をとったが、30日後に新型コロナウイルスが終息しているとは限らない。仮にウイルスが終息していても、生活環境まで復旧している可能性は極めて低い。

 帰国せずとも在留資格を5年延ばせる特定技能

 そこで今回注目したいのが、2019年4月から始まった新しい在留資格「特定技能」だ。介護や農業、飲食業など14業種に限定されているものの、実習生は3年の技能実習を修了すると日本語の試験と実技試験が免除され、かつ帰国せずに在留資格を移行することで、在留期間を5年延長できる。実習を目的とするのではなく、日本の労働力不足を解決するために国が定めた制度だ。

 さらに技能実習と違うところは、監理団体と呼ばれる紹介機関を通して受入れるのではなく、受入れ企業の直接雇用となることだ。実習生から従業員になれるということだ。

 従業員となると、雇用側が責任を持って日本での生活サポート等を行う必要が出てくる(と思われる)。しかし、特定技能の従業員を雇用する企業は、日本語学習の機会提供や日本文化とのふれあいといった外国人従業員サポートを、登録支援機関という機関に外部委託することができる。

 今回、フィリピン人実習生に「特定技能」在留資格を取得させることに成功した実績を持ち、現在も登録支援機関として青森県の農家で働く実習生をサポートしている株式会社蒼日(青森市)の代表取締役・工藤慎也さんに話を聞くことにした。

 「働いてほしい」と「働きたい」をマッチング

 「契約にない重労働や危険な労働を強いられた」「パスポートを取り上げられた」「差別を受けた」という実習生の声は、よくテレビなどで報道されている。

 一方で、「コミュニケーションが取れない」「突然いなくなった」など、受入れ企業からの不満の声も聞こえてくる。

 しかし、受入れ企業との関係が良好な技能実習生だってたくさんいるはず。

 「実習が終盤に差しかかるタイミングで、受入れ企業から『仕事も真面目にやってくれるし、うちでずっと働いてほしいんだよね、何とかならない?』と直接相談されることがあります。そういったところでは、実習生側も『もっと日本で働きたい』と思っていることがほとんどです。ただ、今までは、もう一度実習するにも一度は帰国しなければなりませんでした」(工藤さん)

 実際に工藤さんの会社がサポートしているフィリピン人実習生もそうだった。当時、期限は2019年6月に切れてしまう予定だった。

 まだ誰も運用していない在留資格だった

 そこで工藤さんは、2019年4月にできた「特定技能」に目をつけた。とは言え、制度ができたからといって、実際に運用している会社や団体はどこにもない。何人もの行政書士に相談してみたが、詳しく知っている書士は一人もいなかった。

 「この状況に負けたくない!」、工藤さんはフィリピン大使館内にある海外労働事務所の情報を精査し、さらに、その労働事務所に直接電話を掛けて手順などを尋ねるのだが、けんもほろろ、門前払いだったという。

 日本で制度ができても、フィリピンではガイドラインが確立されていなかったため、フィリピンサイドの誰にもわからなかったのだ。

 それでも工藤さんは諦め切れず、何度も何度もフィリピンの出先機関に連絡をとり、やっとのことで「特定技能」在留資格取得に成功した。

 技能実習生から特定技能に在留資格を変更する場合、在留期限が切れても4カ月間は日本在留を認められる。工藤さんが資格取得に成功したのは、期限が切れた2019年6月からギリギリ4カ月後の10月だった。

 その後、フィリピンが特定技能に関するガイドラインを発表したのが2019年12月のことである。もし、当時の工藤さんが諦めていたら、フィリピンの特定技能制度はまだ確立されていなかったかもしれない。

 「実習生の暗いニュースもたくさんありますが、受入れ側の『もっと長くうちで働いてほしい』、実習生側の『もっと日本で働きたい』に真っ直ぐに向き合いたかったんです」(工藤さん)

 コロナウイルスが蔓延する今こそ、特定技能に変更することが有効

 あえて繰り返すが、今、世界中で新型コロナウイルスが蔓延しており、人々は恐怖の真っ只中で暮らしている。

 出入国在留管理庁が延長期限を多少延ばしたとしても、実習生が祖国に帰った時、労働環境が安定しているとは考えにくい。

 もしも実習生が、「特定技能」に在留資格を変更して、日本で従業員として安定した仕事を得られるとしたら、受入れ企業は実習生の生活を守れて自社の戦力を確保できる。いくつかの面でメリットは大きいのではないか。

 今この時、日本でも様々な経済活動が制限されている。数カ月後にはリーマンショック時以上の不景気がやってくるかもしれない。

 その一方で、介護や農業、漁業は不景気でも一定以上の人手は必要だ。たとえ不景気が続いたとしても、日本では労働人口が減っていくため、長期的な人手不足は避けられない。

 新型コロナウイルスが猛威を揮う今だからこそ、この「特定技能」という制度を利用することは、有効な選択肢になるはずだ。(吉田克己5時から作家塾(R)

【プロフィール】5時から作家塾(R)

編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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