働き方ラボ

家で快適に働き、気持ちよく暮らす 生活を変えて長期コロナ戦に備えよ

常見陽平

 旅行特集に感じる虚しさ

 GWがやってくる。これほどワクワクしない大型連休も珍しいだろう。なんせ新型コロナウイルスショックによる緊急事態宣言が発令されている。

 私は雑誌読み放題サービスを契約しているのだが、旅行、グルメ関連の特集や記事を読むと虚しくなる。ちょうど今週はGWに向けた特集号がリリースされたのだが、もう絶句するのみだった。ここで紹介されている場所のほとんどには行くことができないのだ。雑誌を発行する側も出さざるを得なかったのだろう。涙が出てくる。

 そうか、おしゃれをして遊びに行く、そのためにも仕事を頑張るという、数カ月前まではすぐそこにあった幸せが、少なくともこの瞬間はないのだ、と。昨年は異例の11連休だったが、あれはGWの最後の輝きだったのか。

 モノ系雑誌の姿勢に思わずナイス!

 そんな中、読み放題サービスで雑誌をパラパラ読んでいてナイスだと思ったのは、モノ系、スポーツ・ヘルス系雑誌である。何が良いかというと、「新型コロナウイルスショック」関連の言葉を使わずに、楽しいおうち生活を提案していたのだ。そう、コロナで在宅というのは言わなくてもわかる(と言いつつ、この記事でも触れているのだが)。現実的にこの問題には、感染症を広げないためにも、経済を壊さないためにも立ち向かわなくてはならない。精神論は意味がない。もっとも、同じ精神論でも「耐えろ」「頑張れ」という話ではなく「いかに楽しむか」という精神論なら、まだワクワクするのではないか。もちろん、それが強制になってしまっては楽しくなくなるのだけど。

 この状態があと何カ月続くのか不安になる人もいるだろう。私の場合、最低3カ月は続くことが確定した。勤務先の大学が、少なくとも夏学期が終わるまで、教員は原則在宅勤務で、講義はオンラインとなったためだ。先は長い。いかに、快適に働き、生きるか。そのための、体制づくりに力を入れることにした。

 モノを減らそう

 快適に暮らすためにするべきことは何か? まず、モノを減らすことである。部屋の中にあるものを大胆に手放そう。捨てる、売る、譲る。このアクションが必要だ。部屋の中にあるすべてのモノの存在意義を問い直してみよう。実は場所だけとって、生活に何も貢献していないものも多数あるはずだ。「まだ使える」「もったいない」と思うかもしれない。ただ、よっぽどの思い出の品や、保存する必要がある書類は別として、たいていのものは必要がないものだ。特に、1年間、一度も取り出さなかったものなどは手放そう。別に「捨てろ」とは言っていない。今どきの手放し方は「捨てる」だけではない。売ったり、譲ったりするという手もある。各種オンライン売却サービスを活用しよう。

 ちなみに、私たちの家で特に活用しているのは、メルカリの他、本の売却に便利なバリューブックス、CDなど音楽ソフトの売却に便利なディスクユニオンである。メルカリは妻が出品名人なので、要らないものはとりあえず渡すことにしている。バリューブックスとディスクユニオンは査定の納得感が高い。特に今回、感動したのは、ディスクユニオンだ。丁寧に1つ1つ「名盤」「廃盤」などコメントが書いてあり、丁寧に査定していることが伝わってくる。しかも、4月中は買い取り額アップキャンペーンをやっている他、大量に手放した際のボーナスまで加算される。納得感のある金額で売却することができた。

 さらに、私はSNSなどに要らないものの写真を「これ、いる?」と投稿することにしている。メルカリならぬ、ツネカリと呼んでいる。少し大きなものは粗大ごみ扱いになり、処分するにもお金がかかる。もらってくれる人がいると、捨てる罪悪感も減る。これらの努力により、我が家はコロナとの戦闘モード、緊急事態モードになってから、タンス1つ分くらいの不用品を処分した。お陰様で、すっきりしたし、お金も入った。

 部屋のレイアウトを見直そう

 モノを減らした上で、取り組んだのは部屋のレイアウト変更だ。夫婦で在宅勤務だ。それぞれ、ウェブ会議などが入るので、会話内容が聞こえない状態にしなくてはならない。しかも保育園が休園になり、常に部屋にもうすぐ3歳になる娘がいる。この3人で閉鎖された空間で快適に暮らすためには、部屋のレイアウトに一工夫が必要なのだ。

 リビング、書斎、子供部屋、寝室などのすべてのレイアウトを見直した。とにかく閉鎖的な雰囲気にしないこと、窓をあけたときに空気が気持ちよく流れることにこだわった。ストレスゼロの生活環境を手に入れることができた。

 グルメをサボるな

 休業する飲食店も多い今日このごろだが、グルメをサボってはいけない。健康的な食生活を送らなくては、心身ともに参ってしまう。美味しいもの、栄養があるものを食べることはサボってはいけない。

 ここ数週間、グルメ生活が楽しくなっている。飲食店がテイクアウトやデリバリー、通販を始めたからだ。美味しいものを手軽に楽しむことができる。飽きないように、様々な店のテイクアウト、通販を試すことにしている。プロの味が、びっくりするくらいのお得料金で楽しめる。これは使わない手はない。自炊をする機会も多いが、これもやりすぎると疲れてしまう。楽をして、美味しいものを自宅で食べるという工夫も必要だ。

 実に当たり前のことを書いてしまったが、長くなることが想定されるコロナ戦を闘い抜くには、当たり前の、気持ちいい、丁寧な暮らしが大切なのである。緊急事態宣言も2週間となった。自粛モードになってからは1カ月半になる。そろそろ疲れがたまっている人もいるだろう。だが、気持ちよく生き抜くことこそ大切なのだ。

 ひょっとすると、このままの生活が一生続くのではないか、いや、まるで宇宙服のようなものを着て歩かないといけなくなるのではないか、宇宙への移住を考えないといけないのではないかとすらたまに考える。ただ、きっと乗り越えられると信じたい。今度、リアルな場で会社の上司や同僚、取引先に会ったときに「変わったね(いい意味で)」と言われるためにも、気持ちいい生活、進化は必要なのだ。

常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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