SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第77回はアメリカ系航空会社に勤め乗務4年目の井清桜がお送りいたします。
CA業界は意外に転職組が多いのが現実です。かく言う私もそのひとり。私は金融機関の総合職からアメリカ系航空会社のCAへ転職しました。その経験をもとに、アメリカの航空会社の魅力をお伝えします。
なかなか「手の届かなかった」CAという職業
新卒で都内金融機関の総合職に採用された私は、早朝から深夜まで外回り営業と事務作業に追われる日々を送っていました。そんな中、海外でCAとして働く双子の妹に影響を受け、CAへの転職を決意します。外資系航空会社の採用情報が出るたび、履歴書を送っていました。しかしどの会社も書類選考止まり。
やっとの思いで書類審査を通過した某中華系航空会社でのこと。「身長制限が160cm、またはアームリーチで規定の高さまで届くこと」が条件でした。アームリーチとは、靴を脱いだ状態で腕をまっすぐ伸ばす動作やそのときに手が届く高さを指します。私は身長157cm。家でアームリーチの練習(腕を伸ばす練習)をするも、家での練習だけでは規定の高さには届かず。
面接日まで週3で整体に通いました。整体師さんに事情を説明し、できるだけ腕の可動域が広がる施術をしてもらいました。加えて、毎朝毎晩、公園の鉄棒にぶら下がりました。
しかしその努力も虚しく…面接当日もアームリーチで規定の高さには届かず、即面接終了。悔しさのあまり、帰路の電車の中で涙を零しましたが、今となっては良い思い出です。そしてその時に誓ったのです、「絶対、CAになる!」と。
採用後もつきまとう失業の恐怖
念願叶って受かったのが、アメリカの大手航空会社。と言っても、数週間のトレーニング(訓練)に耐え、試験に合格しないと採用は取り消しとなります。
毎日、会社のトレーニング施設で缶詰め状態で勉強をし、2日おきに実施されるテストおよび実技試験に合格してやっと卒業できるという過酷なものです。内容は、会社が保有する機体ごとの安全面についてで、実際の深夜便を想定して真夜中に訓練をすることも。
合格基準は各テスト80点以上(100点中)で、その点数を2度下回ると内定は即刻取り消しとなります。「80点」と聞くと簡単そうに思えるかもしれませんが、「このテストに合格しないと失業」というプレッシャーからミスをしてしまう人もいます。知識をつける事ももちろん重要ですが、この緊迫した状況下で最高のパフォーマンスを発揮できるかどうかが試されているのです。一緒にトレーニングを頑張ってきた同期生がテストに合格できず、途中で家に帰される姿を見るのはとても辛かったです。
ちなみに、飲み物の注ぎ方やお客様対応についての講義はほとんどありません。仕事のやり方は現場で見て学ぶのです。
7週間の厳しいトレーニングを終えてやっと「卒業式」を迎えることができました。そう、アメリカの航空会社では入社前に卒業式があります。式典では今までの過酷な日々を思い出して涙してしまう人もいました。
飛行機通勤は当たり前
トレーニング卒業後は、国内・海外に数箇所ある主要ベース(ハブ空港)に配属されます。しかし必ずしもベース付近に住まなければいけないというわけではありません。勤務日に、規定時間までに出社をすれば国内・海外問わず、どこに住んでいても構わないのです。アメリカは国土がとても広く、国内の移動手段として飛行機を使う人がとても多いです。航空会社で働くCAともなると、通勤手段として飛行機を利用することもふつうです。
皆さまは、アメリカの国内線に乗った時に、制服を着たまま一般座席に座ってているCAを見かけたことはありませんか? 彼女・彼らの多くは他の州から飛行機通勤をしているCAなんです(私服で通勤をする人もいます)。
私の知り合いは、朝から5時間かけて所属ベースまで通勤をし、自分の担当する便に数日間乗務し、また5時間かけて家に帰っています。日本や台湾からアメリカへ通勤をするCAもいます。他のお客様と一緒に座っているCAを見かけた際には、勤務時間外ですので、どうぞ声は掛けずにそっとしておいてあげて下さいね。
風通しの良すぎるオフィス環境
アメリカの大手航空会社で働く上で一番気に入っているのは、毎回一緒に働くクルーが違うところ。
日本の金融機関に勤めていた時は、毎朝同じ部所のメンバーと顔を合わせるのが当たり前でした。それが一転、現在私が働く航空会社では、CAだけで約2万5000人が所属しています。
毎回、一緒に働くクルーが異なるのはもちろんのこと、ひとつの仕事が終われば次に同じクルーと会うのは3年後…なんてこともよくあります。なので、万が一、乗務中に口論になったり、空気がギクシャクしてしまっても「次に会うのは3年後だからまあいっか!」と開き直れたりもします。そういう意味では、とても働きやすい環境と言えますね。
外資なのに年功序列!?
世間的に「外資系企業は実力主義」というイメージが強いかと思いますが、アメリカの航空業界はセニョリティ(seniority=社歴)がすべてです。勤続年数によって、給料や乗務する路線が決まります。いわば年功序列ですね。中には社歴40年、50年なんて人も。
しかし「年功序列」と言えど、ここはアメリカ。皆CAとしての立場は対等です。それゆえに若手CAと先輩CAが喧嘩をすることもあります。(日本からみれば)外資系企業、なのに年功序列、けれど立場はみな対等…なかなか不思議な社風ですよね。
いかがでしたでしょうか。今回はCAとして感じたアメリカの航空会社の魅力をお伝えしました。少しでも魅力を感じて頂けると幸いです。機内にて皆さまのご搭乗、心よりお待ちしております。
【CAのここだけの話♪】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら