CAのここだけの話

ウィズコロナ時代の航空業界 ニューノーマルな空の旅をCAがご案内

山崎秋菊

 SankeiBiz読者のみなさんだけにCA(客室乗務員)がこっそり教える「ここだけ」の話。第81回はアメリカ系航空会社に勤務し、乗務2年目の山崎秋菊がお送りいたします。

アメリカ系航空会社に勤務する山崎秋菊さん。アメリカの大学を卒業後、一度は現地の多国籍テクノロジー企業に就職するも幼い頃からの夢だったCAへ転職。提供:本人
仕事で訪れたメキシコシティ。メキシコの首都で本場のタコスを実食。提供:執筆者
ベトナムの首都ホーチミン(旧サイゴン)を訪れました。提供:執筆者
カナダのバンクーバー国際空港のホテル。部屋から見える景色は飛行機好きには堪りません。提供:執筆者

 日本をはじめアメリカでも経済活動の全面再開に向けて動き出しています。経済活動を、新型コロナウイルス感染の「第2波」を招かないように、どう軌道に乗せていくかということが問われている今、業界を問わず様々な職場で、試行錯誤ののち「ニューノーマル(New Normal=新しい当たり前)」が導入され始めていると思います。

 私が勤務する航空会社でも、少しずつではありますが、航路によってはお客様の予約数が右肩上がりになってきています。しかし、まだまだ油断はできないのが現状です。今回は航空業界におけるニューノーマルの一部をお話しします。

 マスクがないと乗務すらできない

 アメリカでは少し前まで任意だった機内でのマスク着用が、今では必須となりました。CAは、マスクの在庫を切らしていたり忘れてしまった場合は乗務できない会社もあるほどマスク着用が徹底されています。日本のようにマスク文化が定着していないアメリカでは、このマスク着用必須は大きな社会的変化なのです。

 アメリカでは笑顔で挨拶を交わすのがマナーですが、CA職においては、白い歯、満面の笑顔でお客様をお迎えすることも大切な業務の一部です。そのため、マスク着用によってそれができないことには少し歯がゆい思いもしますが、お客様の安全と健康を第一に守るために、万全な環境でお客様をお迎えするという使命のもと、CAも新しい業務体制に柔軟に対応する能力が求められています。

 ソーシャルディスタンス保つために便や出発日変更も

 また、機内でソーシャルディスタンスを保つための工夫もされています。予約が少ない便では、できる限り席の移動を行い、お客様を機内に分散させることで、乗客同士のソーシャルディスタンスを保っている航空会社が多くあります。

 ほぼ満席が予想され、席の移動などが困難になると思われる便に予約されたお客様には、事前にご連絡し、便や出発日が臨機応変に変更できるよう配慮している航空会社もあります。

 このように航空会社によって様々な工夫がされていますので、今後飛行機に乗る機会があれば、それぞれの航空会社がどういった対策をとっているのかに注目すると良いかもしれませんね。

 体温チェックと分散搭乗・降機

 CAのマスク着用が必須になっても、万が一熱や症状があってはお客様も安心できませんよね。そこで、私が勤務する航空会社でも、勤務前の体温チェックが必須になりました。ある一定体温以上の熱があった場合は、その日の勤務を辞退しなくてはなりません。

 またアメリカでは、TSA(米国運輸保安局)が全乗客に対して行う出国審査に、乗客の体温チェックも追加で義務付けるようにするための準備を進めているようです(6月上旬現在)。空港は様々な国と地域から人が集まる場所ですので、念には念を入れて事前にチェックすることで、機内でより安全な環境で、快適に移動できるようにします。

 また、お客様が飛行機に搭乗する際も、混雑を防ぐため、座席番号ごとに少人数で搭乗し、降りる際も一斉に降りるのではなく、グループに分けてグループごとに降りてもらうなど、工夫と試行錯誤がなされています。

 見栄えよりも安全性 普段と違う機内サービス

 皆さんは機内サービスといったらどんなものをイメージされるでしょうか?

 エコノミークラスなら、さまざまな飲み物の種類を、ビジネスクラスやファーストクラスなら、各食器にきれいに盛り付けられた食事を想像する方も多いと思います。

 新型コロナ感染拡大防止に伴って、機内でのお食事やお飲み物のサービスも、今まで以上に安全と清潔に配慮している航空会社が少なくありません。これらも航空会社によってさまざまな対策がとられていますが、私が勤務する会社では、お食事やお飲み物の見栄えや、華やかさももちろん大切ですが、いかに感染防止を図れるかということに重きを置いたサービスに移行しています。

 例えばエコノミークラスでは、お客様のお好きな飲み物を、缶からプラスチック製のカップに注いで提供するのが主流でしたが、缶のままでの提供が始まりました。また、ファーストクラスでのお食事のサービスは、きれいに盛り付けられたコース料理風のサービスが主流でしたが、現在はなるべく空気に触れないようにラッピングされたお料理が、全てワンプレートにまとまって提供されます。

 安全性を重視したサービス形態に変わっただけで、お料理や飲み物の質はもちろん全く変わっていませんが、このようにお客様がより安心して機内での時間を過ごせるよう、各航空会社そして機内に乗務するCAが工夫をしています。

 ウィズコロナ時代の空の旅 体験のチャンス?

 いかかでしたでしょうか? 今、世界中で様々な変化に対して柔軟に対応する事が求められる日常が続いており、空の旅も今までの既存の物とは異なってきているかと思います。ですが、言い換えれば、今までと違う一見変わった空の旅を体験してみるチャンスでもあります。近い将来、また世界中のお客様で溢れる飛行機で、皆さまの空の旅にご一緒できることを願っています!

中学・高校時代に行った海外一人旅を機に、留学に興味を持つ。アメリカの大学を卒業後、現地採用で多国籍テクノロジー企業に勤務するも幼い頃からの夢であった客室乗務員(CA)への夢を捨てきれず転職活動を始める。何度もの落選を経て、晴れてアメリカ系航空会社に入社。現在2年目。好きなことは空港に行くこと、温泉旅行、美味しいものを食べること。Instagram: syukikubear

【CAのここだけの話♪】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら