レストランや小売店、各種サービスなどのビジネスが営業を再開しているが、ソーシャルディスタンス、消毒、マスク着用といった、新型コロナウイルス流行前とは全く異なる対応が必要となっている。こうした状況において注目されているのが感染の心配がなく、距離を取る必要もない「ロボット」の活用だ。
ロボットをウェイター・ウェイトレスとして導入したのが、オランダ・レネッセにある中華レストラン「ロイヤル・パレス」だ。同レストランのオーナー、シャオソン・フーさんは、昨年秋に中国でロボットのウェイターを見て以来、自分のレストランでも活用したいと考えていたという。
ロイヤル・パレスはコロナの影響で長らく閉店を余儀なくされていたが、7月1日より営業を再開。5月に導入した2台のロボットは食べ放題形式の店内で、皿を片付けたり、飲み物を運んだりと大活躍している。
韓国ソウルにあるバー「コーヒー・バーK」では、2017年からロボット・バーテンダー「カボ」が働いている。客の注文に合わせてカクテルを作るのはもちろんだが、一番の得意ワザは四角い氷から球体の氷を削り出すことだ。カボはウイスキーなどに入れる丸い氷を目の前で作ってくれる。バーKによると、導入当時は物珍しさから注目を集めていたカボだが、新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてからは、安全性という点で再度注目を浴びているという。
ロボットたちは飲食店のキッチンにも進出している。ハンバーガー・チェーン店「カリ・バーガー」は2018年、カリフォルニア州パサデナの店舗に、バーガーパテを焼くロボット「フリッピー」を導入した。2019年にはフライドポテトを揚げる役割を担う2台目のフリッピーを追加している。
当初はコスト削減、また質の均一な料理を提供する目的で導入されたミソ・ロボティクス製のフリッピーだが、現在は従業員や顧客間での新型コロナウイルスの接触感染を避け、かつ安全な食事を提供できるとして、再評価されている。
大手ハンバーガー・チェーン店の「ホワイトキャッスル」も今年9月から、シカゴ周辺の店舗のひとつに、フリッピーを試験的に導入すると発表した。フリッピーを開発・販売するミソ・ロボティクスによると、ロボットは赤外線画像を使って肉の焼け具合を判断するため、生焼けによる食中毒が防げるという。また調理場で働く従業員数を減らせるため、ソーシャルディスタンスにも役立つ。
調理を支援するロボットは、スーパーマーケットでも活躍している。チョウボティクスによれば、同社が開発したサラダ調理ロボット「サリー」の売上が伸びているという。サリーは家庭用冷蔵庫の大きさで、22種類までのサラダ用具材を冷蔵することができる。消費者は自分が好きな具材を選び、サラダを作ることが可能だ。カスタマイズが可能なサラダの自販機、といったところだろうか。
新型コロナウイルス流行以前は、サリーの主な購入先は病院や大学だった。ところがコロナが猛威をふるい始めてからは、特にスーパーマーケットからの問い合わせが大幅に増え、売上台数も昨年は通年で約125台だったのが、今年は現時点で前年比60%以上の伸びを記録しているという。
オハイオ州を中心に店舗展開するスーパーマーケット・チェーン「へイネンズ」は7月中旬、オハイオ州ペッパーパイクの店舗にサリーを導入した。コロナの感染拡大防止のために閉鎖したサラダバーの代替とするのが目的だ。へイネンズは当面、具材の組み合わせが決まっている5種類のサラダと、顧客が自由に選べるカスマイズのオプション1つのみとし、顧客が機械の操作に慣れてきたら、より自由に具材を選べるようにする予定という。
米国東部で300店舗以上を展開する大手スーパーマーケット・チェーン「ショップライト」も7月末、ニュージャージー州カートレットの店舗にサリーを試験的に導入した。顧客の反応がよければ、導入店舗を増やしていく計画だ。
ロボットの活用はコロナ禍を機に、一気に拡大していく可能性がある。特にファストフードのようなシェフの腕が問われない飲食産業では、機械化が進むかも知れない。(岡真由美/5時から作家塾(R))