人生を考える好機
お盆である。夏休み期間の人も多いことだろう。なんせ、今年の夏休みは新型コロナウイルスショックで騒がしい。感染拡大防止の観点から、お盆の帰省をどうするかが問題となった。今年は帰省を控えた人も多いようで、メディアでは新幹線のホームや空港が閑散としている様子が伝えられた。
帰省した人も、帰省しなかった人もこの時期はこれからの人生を考えるために、立ち止まって考えるよい機会だ。ずばり、こんなことを考えてみよう。「実家に戻るとしたら、それはいつか?」「移住するとしたら、いつ、どこに移るか?」である。
人生、何が起こるか分からない
「いや、実家に帰るなんて、ありえない!」「地元が東京だし」「マンションを買ったばかりだし」など、そもそもUターンや移住などありえないという人もいることだろう。しかし、立ち止まって考えてほしい。人生、何が起こるか分からない。特にUターンは、家族の健康や、事業承継、遺産相続などにより、突然、起こり得るのである。新型コロナウイルスショックで移住に注目が集まっている。こんな時期だからこそ、選択肢としてのUターン、移住を検討しておこう。
私はここ数年、転職を考えていなくても、今の自分の勤務先や仕事を見直すためにも、将来の選択肢を増やすためにも、「エア転職」を推奨してきた。具体的には、人材紹介会社や転職サイトに登録し、カウンセリングを受けたり、どのようなオファーを受けるものか確認してみるというものである。「転職する気がないのに、登録なんて」と思うかもしれないが、これらの人材サービスは転職潜在層へのアプローチが課題となっており、むしろ歓迎されるかもしれないのである。
同様に私は、「エア移住」を提唱したい。今すぐ本気で考えていなくても、将来に備えて移住を検討する行為である。自治体にとっては、いかに移住者を増やすかが課題となっているからだ。
「でも、今は移住にしろ、旅行にしろ、都市から人が来ることを快く思わないのでは?」という不安もあることだろう。このあたりも冷静になってほしい。確かに「自粛自警団」「自粛ポリス」の存在が話題となる。ただ、この手の話はネガティブな話が大きく取り上げられる傾向があるということを冷静になって認識しておきたい。さらに、移住にはそれなりに準備が必要なのである。仕事探し、物件探し、引っ越しの準備などを考えると、納得のいく、さらに無理のない移住のためには、検討し始めてから1年はかかる。今、新型コロナウイルスショックで移住ブームだと伝えられているが、これはもともと検討していた層への決定打となったのではないかと私は見ている。今すぐ移住して、地元の人から叩かれるという図自体が実はレアなのではないか。
移住を考えたときに、検討するべきことは、一にも二にもその地域のことを知ることだ。仮に地元にUターンするにしても、よく調べるべきである。よく帰省していたとしてもである。生活者視点と、ビジネスパーソン視点では大きく異なるからだ。特に地元の経済の実態や、優良企業、成長企業のことなどは意外に知らないものである。
地方で暮らすデメリットも解消
ここで立ち止まって考えたいのが、「悠々自適な田舎暮らし」なる幻想を捨て去ることである。移住により得られるものは、実は仕事の面白さである。地方にありつつも、都市部に、世界につながっている企業は存在する。また、自分の仕事の責任も増す。「田舎でスローライフ」なるものは存在しなくはないが、幻想かもしれないと認識しておきたい。一方、いまはネットがあるし、交通網も発達している。以前ほど地方で暮らすデメリットも解消されていることも認識しておきたい。
地元で今、流行しているものについても敏感になっておきたい。労働者は生活者でもあるのだ。生活者視点で、その地域は楽しいのかということを考えておこう。家族のことも考えよう。教育、保育、医療、介護などに関する情報はチェックするべきだろう。
生活費の実態についても調べておこう。「地方は物価が安い」という話がある。たしかに、物価は安いのだが、それでもその地域の中での都市部では高くなる。さらには、地方ならではの出費というものもある。たとえば、クルマ移動が前提で、ガソリン代や維持費がかかる、冬の寒さを凌ぐために灯油代がかかるなど、都市部での生活では考えられなかった出費も増えることもある。
手っ取り早いのが、地元の家族、友人・知人に相談にのってもらうことである。その地域で働く上での醍醐味、魅力と課題を確認することができる。生きた情報を大切にしよう。
移住先は慎重に
移住を本気で考えるなら、「時期」の問題についても考えておきたい。林修先生の「いつやるの? 今でしょ!」が流行語になってから7、8年が経過した。今、言うのはなかなか勇気がいる言葉ではある。ただ、私は移住に関しては「いつやるの? 今なの?」理論を提唱している。いつ移住するのかを冷静に考えよう。自分や家族の年齢、いまの仕事でやり遂げたいことなどを考えて決断したい。
移住先も慎重に考えたい。自分にとって合いそうかどうか、仕事と家庭の両立は可能かどうか。自分が実現したいと思っていたことを叶えられるかどうか。問われるのは、就職・転職活動とまったく変わらない。「あなたは、何を大切にしたいですか」ということだ。
なお、最近では、オンラインツアーや相談会まで実施されている。たとえば、私がUIターン応援団長を拝命している石川県では、オンラインツアーやオンライン相談会を開いている。
■8月29日開催 オンラインツアー・能登で見つける新しい自分 #七尾市 #羽咋市( https://ishikawa-note.jp/event/357 )
■石川県移住オンライン相談( https://iju.ishikawa.jp/news/6592/ )
その他、各自治体が移住相談センターを開設している。「○○県 移住」などのキーワードで検索すると出てくるので、ぜひ相談してみてほしい。
もちろん、エア移住の過程でいくらリモートワーク時代といえど、東京など都市部で働き、生きることの魅力を再確認できるかもしれない。それはそれで大きな収穫だ。これからの人生を考えるために、エア移住をし、地域間移動という選択肢も考えてみよう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら