CAのここだけの話

A380の「上空ラウンジ」と「隠れ部屋」 CAがご紹介する機内設備

松岡至宝

 SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第87回は中東系航空会社に勤め乗務7年目の松岡至宝がお送りいたします。

中東系航空会社に勤務する松岡至宝さん。乗務でステイしたというセーシェルは、東アフリカ沖のインド洋に浮かぶ島国。提供:本人
「マディナ・ジュメイラ」はドバイのリゾート。広大な敷地内に、3棟のホテルや水路、プライベートビーチ、レストラン、スークなどさまざまな施設が詰め込まれています。提供:執筆者
南フランスのリゾート都市ニースは、至るところに、地中海をのぞむ絶景スポットがあります。提供:執筆者
旅行で訪れたアイスランド。観光の醍醐味はやっぱり大自然に触れること。提供:執筆者

 航空会社によって保有する機材のデザインや機内のインテリアは様々です。実際に搭乗すると、それぞれの会社のコンセプトや各国の文化を感じることができるので、飛行機好きの方はワクワクするのではないでしょうか。今回は私が乗務する中東系航空会社の2つの機内設備についてご紹介させていただきます。

A380に完備された、空の上のラウンジ

 私たちの会社が運用するA380の機体では、ビジネスクラス、ファーストクラスのお客様には飛行中、機体の2階後方部分にあるラウンジをご利用いただけます。温かいお飲み物からワイン、シャンパン、ウイスキー、お洒落なカクテルなど様々なドリンクと、それに合わせてサンドイッチ、フルーツ、スイーツ、柿の種などもご提供しております。メニューには日本では馴染みのないカクテルもあるので、ご搭乗の際はぜひ試してみてください。

 ラウンジは、乗務員の準備後にご利用可能になりますが、乗務員がラウンジの準備を始めるのは離陸後にシートベルトサインが消灯してからです。消灯後はすぐに準備を始めますが、搭乗直後や離陸直後はまだすべてのドリンクなどが整わず、ラウンジも閑散としております。おすすめは離陸後のシートベルトサインが消灯してから15分後以降です。その頃にお越しいただくと、すべてのドリンクの陳列も終え、インスタ映えする写真を撮っていただけると思います。

 ラウンジは、気流の悪いエリアを通過し揺れが激しい状況でもご利用いただけます。ラウンジのソファーにはシートベルトも備え付けてありますので、揺れが増した際には、そちらに座って引き続き空のラウンジの雰囲気を思う存分楽しんでいただけます。

 ラウンジは、着陸に向けて降下体制に入るまでお好きなだけご利用いただけます。

サウジ便ならでは ノンアルが充実

 私たちの航空会社のベースであるドバイから中東近辺にも、この空のラウンジを備えたA380の機体が運航しております。ただし、特にイスラムの規律に厳格な国、サウジアラビア線にはお酒を持ち込むことは違法のため、載せておりません。その代わりに充実させているのが、イスラム圏のお客様が好まれるスパークリングジュース(ホワイトグレープジュース、ザクロジュースなど)やライムレモンジュースといった多くの珍しい飲み物で、ラウンジにも並べています。

 この路線だけ、ラウンジのディスプレイが唯一異なるので、1時間半から3時間ほどの短いフライト時間ですが、もしサウジアラビアへご出張の際にはぜひチェックしてみてください。

“中東系”はフレンドリー ラウンジでも会話を楽しんで

 また中東の航空会社は多国籍な客室乗務員が在籍していることも特徴の一つです。出身国は150カ国以上。その乗務員たちが毎フライト、乗務前のブリーフィングルームで初めて対面するということが日常です。

 なので、社交性も高くフレンドリーさは抜群。ぜひ機内でサービスの合間などの時間がある時はラウンジへ来ていただき会話を楽しんでみてください。日本では普段出会えない国籍の乗務員も乗っているかもしれません。

 中東から日本線のような長いフライトだとこちらも「お客様はどちらへご旅行されているのかな?」と興味津々でお話してみたいときもあります。私たち日本人客室乗務員も日本路線には6人乗務するように規定されているため、お会いする機会があるかもしれませんね。

乗務員たちの隠れ部屋

 機内ではお客様が立ち入れない部屋、クルー・レスト・コンパートメント(「CRC」と私の会社では呼んでおります)が設備されている機体があります。長時間のフライトになると航空規定により乗務員に休憩時間が設けられているので、乗務員はそこで休憩します。

 形はいたってシンプルで、カプセルホテルのようなものです。休憩時間は、路線にもよりますが、9時間半以上のフライトだと1時間半~、また中東から北米・南米やオセアニアへの路線は13~17時間ほどかかるので、3時間程度の休憩がそのフライトの状況によって決められます。

 B777では機体の後方部に10名、A380では一階の後方部に9名の乗務員が休憩を取れるCRCがあります。最新のA380にはエコノミークラスの下方部、ちょうどカーゴの前方にCRCがある機体が導入されました。この最新機材だと一度に12人のクルーが休憩を取れるため、基本的に長期フライトで運用しています。

ベッドめぐり争奪戦

 各乗務員、クルー・レスト内にお気に入りのベッドの場所があるため休憩前はちょっとした争奪戦です。

 なかなか眠れない時には、お客様の座席と同じスクリーンがそれぞれのベッドに設置してあるので映画を観て過ごす乗務員もいます。仮眠を取ることで乗務員は長時間フライトでも頑張ることができ、その後、到着地の街にすぐに繰り出すことが可能なのです。

お手洗いとCRCを混同?

 またCRCの入り口はお手洗いの近くにあるので、うっかり、CRCの扉の前で長い間待っているお客様をお見かけします。CRCの前には鍵が付いてあるので、お手洗いの扉とは少し異なります。特に飛行機の後方のお手洗いをご使用される際にはぜひ確認してみてくださいね。

機内デザイン鑑賞も旅行の醍醐味

 航空会社で異なる機内のデザインを見られることも旅行の醍醐味の一つではないでしょうか。

 まだまだ自由に空の旅は楽しめませんが、いつか飛行機に乗る機会がありましたら、クルー・レストの場所にも注目してみてくださいね☆

高知県出身。同志社大学経済学部卒業後、証券会社で営業職として2年間勤務。日本人でも全路線に乗務できる中東系航空会社に惹かれて転職。現在7年目。旅行、各国のお酒を現地で試飲することが趣味。

【CAのここだけの話】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら