7年8カ月、憲政史上最長の政権となった第二次安倍政権が終幕した。自民党の総裁選で前官房長官の菅義偉氏が圧勝。菅政権がスタートした。
菅内閣は例えると○○内閣か?
あるラジオ番組でこんな質問をされた。「菅内閣は、例えると○○内閣ですか?」というものだ。私は「ラスボス政権」と答えた。菅義偉首相の見た目が、『ドラゴンクエストシリーズ』のラスボスの変身前に似ているから、というだけではない(竜王やハーゴンの変身前に似ている、気がする)。「令和おじさん」「苦労人」などと称され、総裁選においては「ダークホース」とされた彼だが、怖い方向に化けるのではないかと私は捉えている。「安倍路線の継承」を打ち出しているが、実際はそうではなく、小泉政権のような「壊し屋」ではないか。官僚に対しても、メディアに対しても引き締めを厳しく行いそうだ。中継ぎ役では決してなく、案外、長期政権になるのではないかと私は見ている。
一方、彼がやめたあと、次の総裁・首相をどうするか(もちろん、今回の総裁選も対抗馬はいたし、出馬しなかった有望株もいたが)。そして、野党の合流新党も誕生した。菅首相こそが現在の政治において、ラスボス的な存在であり、彼が退陣したあとに、新たな世界が広がるのではないかと私は見ている。
ただ、いざ振られてみて嬉しくて、キャッキャと「菅内閣はラスボス内閣」と答えてしまったが、新しい内閣が立ち上がったときの報道は、茶番だらけだ。この「新しい内閣は○○内閣」に関しては、あくまでスタート時の印象をもとにした、妄想にすぎない。「菅内閣は○○内閣」は、むしろ退陣したあとにこそ総括して実施するべきである。
毎年、発表される「今年の新人は○○型」「今年の新人が選ぶ理想の上司」などに近い。前者はその世代内の多様性を無視し、特徴を列挙し、その年に流行っていることをうまく持ち出して例えたものである。後者は、まだ働き始めていない人に質問したものであり、やはりそのときに認知度の高い芸能人、スポーツ選手などを取り上げて妄想したものである。
閣僚たちの似顔絵入り紹介文などもそうだ。いかにも人間くさいエピソード、ユニークな話が紹介される。「パンケーキが好物で議員会館でも毎日、食べる」「とんかつが好き」「カラオケの持ち歌は矢沢永吉」などのエピソードが連呼される。西村経済再生担当大臣の「東大ボクシング部」という話を何度、読んだことか(だから、叩かれても平気なのか、批判をスルリとかわすのかと納得したが)。「苦労人」「叩き上げ」という(ことになっている)菅首相の紹介文などもそうだ。人物像を紹介するなら、より多面的に深いものを知りたいし、掲げる政策について詳しく知りたいのではないか。
既存組織の分析は有益
さて、この「○内閣は◎○内閣」は茶番そのものだが、既に存在する組織を何かに例えて分析するのは、まだ有益だ。情報量が十分あるからだ。いま、組織が向かっている方向性も確認できるからだ。あなたの勤務先の経営陣や、所属する部や課は「◎○型」だろうか。
このあたりを調べてみると、意外に深い。現在の経営陣はどのようなキャリアを築いてきたのか。出身部署、職種はどこなのか。年齢や性別の構成はどうなっているのか。どのようなタイプなのか。これを読み解いていくと、組織の方向性や課題が見えてくる。
世代交代、多様性重視など見える
私はいまだに会社員時代の勤務先の人事を毎年、チェックしている。上場企業は、経営トップ層だけでなく、幹部の人事までHPに掲載されたり、新聞に人事情報が載ったりする。これにより、方向性がわかる。テクノロジー重視、グローバル重視、世代交代、多様性重視などが見えてくる。バランス、配慮を感じることもある。ある年、ベテランのしかも数字にうるさいハードマネジメントをするタイプと、気鋭の若手が同時に取締役となった。経営の意思決定に関わる者の多様性という意味でも、様々な社内の心情に対する配慮という意味でも、バランスを大事にしたものだと感じた。
この件は、取引先の人事に関しても言える。どの方向に向かっているのか。人事を通じて考えよう。
なお、今回の菅内閣においては、女性閣僚が2名で、しかも2人とも経験者だったことが批判された。いかにもこの手のことについて批判しそうな私だが、やや冷静に見ている。まずはスムーズな政権の移行を目指したということを色濃く感じる人事である。新型コロナウイルスショックへの対応が続く中での新政権なので、トラブル回避、実行力、即戦力を意識したとみるべきだろう。一方、デジタル担当など新たなポジションの設置などのチャレンジは見られる。
この女性閣僚については、私は増やすべきだと考えているし、閣僚人事は、極論、民間登用という手もあるわけなので、意志の問題ではある。ただ、そもそもの女性議員比率をあげなくてはならないし、その議員の中でも閣僚候補生を育てなくてはならない。この内閣ではなく、次の内閣で何人女性閣僚が生まれるか、初入閣者は何人いるのか、重要なポジションを任されるかどうかに私は注目している。
これは男女関係なく、次の世代が育っているかという点にこそ注目するべきだろう。次に担うべき人がどれだけいるのか。おじさんだらけ、男だらけという批判もあった菅政権だが、次に控え選手がいるのかどうかも気になる。
もっとも、閣僚人事は女性比率が少ないだけでなく、「若手」比率も少なかった。30代、40代の閣僚は小泉進次郎氏1人だ。これを層が厚いとみるのか、硬直化しているとみるのか。
菅政権をウォッチしつつ、自社の人事のこれからを考えてみよう。菅政権と同じように、男だらけ、おじさんだらけになっていないか。さらには、自分が首相になったら、入閣したら、経営陣になったらということも妄想してみよう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら