働き方ラボ

あなたが今やるべき副業 コロナ後の社会に向け“助走”を

常見陽平

 「副業」に注目が集まっている。もともと、ここ数年「働き方改革」の流れから、国も企業も副業(複業)・兼業を広げようとしてきた。ネット上での案件獲得も容易となり、働き方を選びやすい環境も整ってきている。

 その流れを、新型コロナウイルスショックがさらに加速させた。収入減を補うために副業せざるを得ない人もいる。リモートワークが普及したことにより、自由な時間が増えたことも要因だ。社会、会社、自分の将来に不安を感じて始める人もいることだろう。

 私自身、副業歴は16年になる。会社員時代から副業に取り組んでいた。現在も大学の専任教員をしながら、執筆、メディア出演、講演、コンサルティングなどの仕事に取り組んでいる。

 現在の企業や個人の取り組み、現状の問題など副業に関する論点は多々あるが、本稿では、「新型コロナウイルスショックの今、あなたがやるべき副業は何か?」という点に絞って論じることにする。あなたが今、副業を始めるべき理由、やっていいこと、悪いことについて説明する。

 「今の収入」が必要な人の副業

 いうまでもないことだが、前提として副業については、目的も手段も様々である。収入をどこまで重視するか、本業とどれくらい関係するのか、自分の力や経験が活きるのか、まったく新しいチャレンジなのか、社員やフリーランスなどどの立場で関わるのか、などである。

 メディアで報じられる通り、大企業においてもボーナスのカットを始め、劇的な収入減となっている。住宅ローンの返済や教育費の捻出など、やむを得ない事情を抱えている人もいることだろう。こうした人々は収入のために、いますぐ自分でできることで稼ぐ必要がある。

 企業の副業に関する「下心」も「進化」していると考える。金融機関や航空会社なども副業を推進する方針を打ち出した。一見すると「おかたい会社がよく変わったな」という話に聞こえるが、職種によっては労働市場から柔軟に採用することが困難であるため、副業をして生活を維持してもらいつつ、つなぎとめようとするしたたかさを感じる。

 もちろん、生きていくためにはお金が必要だ。切羽詰まって副業をする人を、私はまったく否定しない。新型コロナウイルスショックは自己責任論ではすまされない。苦しい環境にある方に、私は激しく同情する。

 一方、もし、いまお金と時間に余裕があるならば、立ち止まって考えたい。いま、するべき副業とは何か。本当に自分のためになるのか。自分、さらには社会の未来につながるものにするべきではないか?

 未来へつなげる副業の選択

 前述したとおり、副業には様々な意義がある。私は、副業は「バンドのボーカル、ギタリストのソロ活動」「次の自分の予行演習」と捉えるべきだと考えている。

 前者については、バンド活動においてはその音楽性、イメージなど様々な制約がある。普段はできないことやることによって、ストレス解消にもつながるし、バンドの活動にも新たな風がもたらされる。やりたかったが、できないことをやるというものだ。コロナにより何かとストレスがたまる時期である。仕事上の制約も多々あることだろう。現状の職場ではできない活動を副業で実行し、自分の中の閉塞感をぶち破ろう。

 そして、それ以上に意義があるのが後者の「次の自分の予行演習」だ。自分のありたい姿、やりたいことを胸に手をあてて考えてみよう。起業したい、飲食店を経営したい、自分の書いたブログを書籍化したいなど、様々な夢があるかもしれない。この予行演習だと捉えてみる。

 お金と時間の余裕があるならば、いますぐ成果を出すのではなく、数年後に自分が輝くにはどうすればいいのかを考えるとよい。新型コロナがどのように収束するのか。仮にワクチンが開発され、普及したとしても、新しい社会が待っている。どのような社会になるかを想像しつつ、そのときに自分が輝いているためにはどうするかを考えよう。

 社会の変化を意識…コロナ後に向け“助走”を

 少しだけ自分語りをする。私が会社員時代に副業でライターを始めたのは、単にそれがやりたいことだったからだ。幼い頃から新聞記者か作家になりたかったのだが、その道はいつの間にか諦めてしまっていた。しかし、その想いはいつも心の中に「忘れ物」「落とし物」のように存在していた。

 たまたま、盟友・中川淳一郎がウェブ編集者としての活動を始めたころ、当時は書き手が少なかったので、声がかかり、書き始めた。がむしゃらに書き続けた。いつかは単著を書く、論者としてメディアでコメントするという夢を抱きつつ。ただ、物書き一本で食べていくことは無理だと感じていた。夢に向かった予行演習期間だと考えた。

 意識したのは、現状の分析と数年後の変化である。今後、どのような論客が引退していくのか。いま、空席のポジションはどこか。がむしゃらに書きつつも、どうやったらゴールに近づけるかは意識していた。ちょうどリーマンショックがあり、雇用問題が深刻化した際に、その分野で専門的な発言ができる論者の一人としてメディアから声がかかり始めた。

 これはライターの世界での事例であり、自分語りにすぎない。ただ、社会の変化、さらには自分自身の強みや足りないものを意識しつつ、考えたい。

 コロナがあけた際に、一気に新しい社会が動き出す。そのときに、どんな人が必要とされるのか。そんなことを考えつつ、コロナ後に向けた助走を始めたい。そんな姿勢で副業に取り組むことをおすすめする。

常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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