伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。
第23回は「仕事納めまでに確認しておきたいこと」がテーマです。激動の2020年も残すところあと僅かになりました。来年も混乱は続きそうですが、やはり新年は部下に良いスタートをきってもらえるようサポートしたいものです。混乱が予想される状況では、どんな点を意識して準備をすればいいのか。仕事納めまでに確認しておきたい3つのポイントをご紹介します。
目標設定の前に! 12月中に終えておきたい「価値観の確認」
厚生労働省の調査によると、目標管理をしている企業は全体の70%以上(*1)。目標管理をしていない職場の人でも、新年に目標を立てるということを、習慣にしている人は多いと思います。
仕事での目標、趣味やプライベートでの目標などを立てることは素晴らしいことです。しかし中には、達成できないどころか「先延ばしにして手をつけていない目標がある」という人もいるのではないでしょうか。
先延ばしをしてしまう理由を「意志が弱いから」だと片付けてしまう人もいますが、これでは改善は見込めません。手をつけられない理由の一つに「心から同意した目標でなかった」という理由があります。「こうするべきだ」という社会規範などに縛られて目標を設定するよりも、自分が心から同意できる形で目標を設定したほうが、目標は達成しやすくなります。
2020年はCOVID-19の登場で世界が激変した1年でした。日本でも働き方や生活様式が変わりました。これに伴い、価値観も大きく変わっているはずです。この部分を無視して、従来のような目標設定をしてしまうと、心から同意できないために、未達に終わりやすくなることが予測されます。仕事納めまでに、価値観の確認をしておきましょう。
「質問で」部下に価値観の確認を促す
新年の目標設定に役立ててもらおうとして「コロナで価値観変わった?」というような質問をしても「そんな部分もあるような…」といった曖昧な回答しか得られないと思います。そこでお勧めなのが、「○○さんにとっての、今年の5大ニュースは何?」という質問です。そのとき「なぜ、そのニュースを選んだか」という理由も訊いてみてください。この理由の部分に、現在の価値観が現れやすいからです。
【例】
- 部下にとっての重大ニュース:「リモートワークになったこと」
- その理由:「家族と過ごす時間が増えたから」
家族と過ごす時間に価値を見いだしている場合、その価値観にあった目標設定をするようアドバイスをするとよいでしょう。
【例】
- 従来の目標:仕事の効率をあげて、よりよい成果を上げる
- 価値観にあった目標:仕事の効率を上げて、家族との時間を増やせるようにする
働きがいに関する調査では、「上司と気軽に話せる」という項目もよく挙げられます。「今年の5大ニュースは何?」という質問は、部下の話を聴くチャンスでもあり、働きがいにも繋げられるよい機会だと思います。特にこの一年は、価値を感じるものが大きく変わった可能性があります。部下への質問だけでなく、自分の5大ニュースとその理由を書き出すという作業も、ぜひ仕事納め前にやってみてください。
「頑張ります」と言う部下に注意 改善につなげる「原因の確認」
12月は一年の振り返りをするのに適した時期です。勝場でも「できなかったこと」「失敗してしまったこと」など、反省する機会もあるでしょう。このとき、ぜひ部下の言動に注目してみてください。振り返りをした後に「頑張ります!」とだけ言う部下、特にその部下がマジメな性格なである場合には注意が必要です。
ご存知のように、気合いや根性だけで解決できる問題は、そう多くありません。過去に失敗したケースでも、部下はそれなりに頑張っていたはずです。同じような失敗を繰り返させないためには、精神論だけではない具体的な改善策が必要なのです。そこでやってほしいのが、今後の改善に繋げる「原因の確認」です。
原因を○○だと言う部下はまた失敗する
部下と振り返りをする機会があったら「なぜ失敗したと思う?」と訊いてみてください。
このとき、失敗の原因を「景気」や「COVID-19」などの“自分では変えられないこと”だけを挙げる部下の場合、また失敗を繰り返してしまう可能性が高くなります。
逆に「プレゼンの仕方が悪かった」「状況に合わせた動きができなかった」などの“自分で変えられる部分”を挙げる部下の場合、次回は同じ失敗をしない可能性が高いと言えるでしょう。
失敗の原因について訊くときは、責めているような口調にならないよう、十分留意してください。責められたように感じると、失敗を正当化するような理由を引き出してしまうからです。ソフトな口調、やわらかい表情で質問するようにしましょう。
景気など自分では変えられないことばかり理由に挙げる部下の場合でも、責めるような口調はNGです。「同じ失敗をしないために、自分で変えられる部分があるとすれば、どんなことがあると思う?」といった質問を、できるだけ穏やかにしてみてください。
時代が変わった今年はマスト 「必要かどうかの確認」
探しものに関する調査(*2)によると、私たちが探しものに費やす時間は年間145時間で、約8割の人が「探しものをしている時間は無駄」と感じているそうです。12月には大掃除をする職場も多いと思いますが、その前にデスクの整理整頓をしておきましょう。
今年は働き方が大きく変わりました。これまで必要だったものが必要でなくなったり、新たに買い足したり、物に関しても変化が多かった1年となりました。この機会に、必要な物、必要でない物の見極めをしませんか?
整理整頓のコツはいろいろありますが、まずは物を減らすというのが大前提です。新たな働き方によって不要になったものは処分しましょう。物を減らせば、探しものにかかる時間も減らせます。
モノの取捨選択 必要かどうかはこのフレーズで見極められる
捨てるべきか、いや、いつか使うかも…。迷ってしまう時点で不必要な確率が高いと思われますが、そんなときには自分にこう問いかけてみてください。
「今、これをなくしたとして、自腹で新しいものを買うだろうか」
なくても影響がないもの、新しく買おうと思わないものは、必要でない物と認定してよいでしょう。いつか使うかもという保険的な考えのせいで失ってしまう、年間145時間もの時間を考え、思い切った整理をしてみませんか。探す時間が浮くことで、新たな時間が生まれ、できることも増えるかも知れません。
*1 働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書 厚生労働省 平成26年
*2 探し物に関する調査 TrackR, Inc. 2017年
【最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら