社会・その他

はやぶさ2カプセル帰還、部品製造の町工場も成功願う

 小惑星リュウグウの土壌が入ったカプセルの帰還成功を祈るような気持ちで待つのは、「はやぶさ2」のプロジェクトを支える日本の町工場も一緒だ。

 特殊ねじ開発や製造を手掛けるキットセイコー(埼玉県羽生市)。従業員約20人ほどのこの町工場で作られる「六角穴付きボルト」約500本がはやぶさ2で使われている。はやぶさ2の本体に取り付ける機器を留めるためのもので、直径3~6ミリを中心に長さは数センチから30センチまでのものなどさまざまだ。

 特徴なのはその材質。64チタン合金と呼ばれるもので、インプラント(人工歯根)と同じ材質で、ゴルフクラブで使われている純チタンよりも硬い。しかも軽くて壊れにくいという。

 ねじの製造はほぼ全てが手作業。手書きの図面を見ながら、長さ3メートルほどの棒状の材料を必要な分だけ、切断したり、削ったりしながら形を整えていく。

 最近のモノづくりの世界では当たり前のCAD(コンピューター支援設計)やCAM(同支援製造)といったソフトウエアを使わないアナログな世界。若手従業員が一人前として育つまでには時間がかかるが、田辺弘栄社長は「育ったときは相当高度なスキルを持った職人になっている」と話す。初代はやぶさで活躍した先輩職人が若い従業員をマンツーマンで育成。今回は若い職人が中心となって開発にあたった。

 キットセイコーは1940年の創業以来、大手航空機メーカーから特殊ねじを中心に数多くの部品の開発や製造を請け負ってきた。70年に打ち上げられた日本初の人工衛星「おおすみ」を始め、数多くの人工衛星の部品を担当している。

 一方、横浜市金沢区の住宅街の一角にある下平製作所。従業員30人ほどのこの町工場も約半世紀にわたり、航空機や人工衛星の部品を手掛けている。同社は、初代はやぶさに続き、はやぶさ2の土壌採取装置「サンプラーホーン」と、試料が入ったカプセルを地球に送り出す「カプセル分離スプリング」のばねをつなぎ合わせる部品約800個を製作した。

 97年のある日、取引のある大手航空機部品メーカーの担当者から「こんなものを作れないか」と図面を渡されたのがはじまりだった。その当時は「はやぶさ」という名称ではなく、「MUSES(ミューゼス)-C」とのプロジェクト名で呼ばれることが多く、川口伸児社長も「数ある受注案件の一つとの認識しかなかった」という。

 初代はやぶさの打ち上げから7年後の2010年6月、小惑星イトカワの表面物質を持ち帰ってきたことは、多くの日本人に感動を与えた。川口社長は「今年は暗いニュースが多かっただけに、リュウグウから試料を持ち帰って、みなさんとあのときの興奮をもう一度味わいたいよね」と笑顔を見せた。キットセイコーの田辺社長も「この種のミッションは最後がとても大事。ぜひ有終の美を飾ってほしい」と願いを託す。(松村信仁)

 ■はやぶさ2に関わっている主な中小企業や町工場

 (会社名/所在地/はやぶさ2での役割)

 ・キットセイコー/埼玉県羽生市/本体に取り付ける機器を留める特殊ねじ

 ・下平製作所/横浜市金沢区/土壌分離装置とカプセル分離スプリングをつなぐ部品

 ・光電製作所/東京都大田区/落下したカプセル探索のためのレーダー

 ・ミヤタエレバム/神奈川県海老名市/試料採取時に点灯するランプ

 ・タマテック/福島県鏡石町/採取前のクレーターを作る衝突装置の銅板を製造

 ・日本工機白河製造所/福島県西郷村/衝突装置に使われる爆薬部分

 ・東成エレクトロビーム/東京都瑞穂町/衝突装置の銅板の溶接

 ・スーパーレジン工業/東京都稲城市/構造部材(サブストレート)

 ・クロスメディア/相模原市緑区/耐熱材「サーマルブランケット」

 ・ウエキコーポレーション/東京都大田区/燃料となるキセノンガスの供給