AI(人工知能)の開発サービスを提供しております、株式会社SIGNATEの高田朋貴と申します。AIを開発・運用するために必要な人材の条件や、AIを適切に活用していくためにビジネスパーソンが身につけるべきリテラシーについて紹介していく本連載。第8回は「AI初心者が開発の知識や技術を学ぶための方法」についてお話させていただきます。
オンライン講座で基礎から学べる
ここまでの連載では主に「AIとは何か」「AIが機能するためには何が必要か」といった点を説明させていただきました。しかし、「実践に勝る経験なし」というように、知識を体得するためには、やはり、頭で考えるだけでなく、実際に手を動かしてみるのが一番です。
幸いにして、インターネットには初心者向けからプロのエンジニア向けまで、受講者のレベルに応じたさまざまなAI開発の講座があります。
当社も「SIGNATE Quest(シグネイト クエスト)」というAI・データサイエンスのオンライン講座を運営しており、経済産業省の実証事業「AI Quest」や広島県のAI開発人材プラットフォーム「ひろしまQuest」にも採用されています。
SIGNATE QuestはPythonなどのプログラミング言語の知識がない人も対象にしています。解説動画を見たあとに、現実のビジネス課題に即して出題されるタスクを解く、というケーススタディ形式で、AI開発の基礎を身に付けることができます。
また、「Udemy(ユーデミー)」というオンライン教育プラットフォームも初心者の方におすすめできます。こちらはアメリカ発のサービスで、日本ではベネッセが提携しています。
Udemyは学びたい人と、教えたい人を結びつけるプラットフォームです。動画を使ったオンライン家庭教師のマッチングサービスのようなものとイメージしていただくといいでしょう。当社もUdemy上で初学者向けのAI講座を提供していますが、個人や企業が提供する講座の中から、受講者が自分に合ったテーマを自由に選んで学ぶことができます。
ここではITに関する講座も充実しており、AIやデータサイエンスに関する講座もたくさんあります。その幅は広く、AIどころか、プログラミングとはなんぞや?という人に向けた講座も見つけることができます。
完璧に理解するより、まず作ってみよう
さらに専門的なものや、海外のものまで含めると、AI開発を学べる講座はオンライン上に無数にあります。ただ、こういった学習サービスを利用する際に、あらかじめ意識してほしいポイントがあります。
それは「いきなり完璧を目指さない」ということです。
実はAI開発はリアルなものづくりと近いところがあります。動く原理を理解していなくても、見よう見まねでプログラミングしていけば作れてしまう。そして、開発の現場では「知識の量」よりも「経験の量」のほうが重視されます。
そもそも凄腕のエンジニアでも、万能に何でもこなせる人なんていません。私も得意・不得意があります。しかも、AIはまだまだ発展途上の分野です。技術は日々進化しており、極端な話、昨日の正解が今日の不正解になってしまうこともあります。
現状のAI開発に「唯一の正解」はありません。プロのエンジニアたちも、「この課題解決には、あのときのあの技術が応用できそうだ」「これでうまくいかなかったから、あっちを試してみよう」というトライ&エラーの発想で開発に取り組んでいます。
だから、「AIとは何か」といったことを100%理解しようとする必要はないのです。それよりも、たとえやり方が拙くてもいいから、「実際にデータを分析してみる」「予測モデルを作ってみる」といった経験を積むほうが、ずっと役に立ちます。
当社のSIGNATE Questが、実践的なケーススタディの形式で学べるようになっているのは、ここに理由があります。講座を通じて擬似的に課題解決に取り組んでもらうことで、ビジネスの現場でAI開発に取り組む際にヒントとなる経験を身に付けてほしいのです。
難解な分野だからこそ、少しの経験がアドバンテージに
ケーススタディを通して作り方を学んだら、次はあなたが勤める会社の課題を解いてみてください。例えば小売り企業なら、実際の会社の商品のデータで売上予測をしてみる。それがうまくいけば、AIに関する知識は、立派なビジネス上のスキルになります。
もし、社内に使えるようなデータがなかったとしても、それはそれで自社が抱える大きな問題に気付いたことになります。そのときあなたは、AI開発者やデータサイエンティストの目線で社内の課題を見つめているのです。
私は、教育とはあくまで「きっかけづくり」にすぎないと思います。
企業研修で講師をするときも、1から10まで説明しようとすると、かえってうまくいきません。参加者の「やらされている感」が抜けないからです。
そういうときはいきなりコンペをやってもらいます。理解してもらうよりも先にAIを作ってもらい、分析や予測の精度を競ってもらいます。
私はやり方だけ教えて、「1週間後に結果を発表してください」とあえて放置します。すると、当初はやる気がなかった参加者が、次第に前のめりに開発に取り組んでくれるようになります。もちろん、ところどころサポートはしますが、手取り足取り教えられないことで、自分の力でAIを作っているのだという実感が得られ、本人のやる気につながります。
それにAIに限ったことではないですが、分からなかったことが分かるようになったり、ゼロからものを作ったりできるようになるのは、誰にとっても楽しい経験なのだと思います。教育する側ができることは、その楽しさで、最初の一歩を後押しすることです。
だからこそ、みなさんには「AIは難しい」と身構えずに、ぜひ気軽に開発に挑戦してみてほしいと思います。
本気でAIエンジニアを目指している人はともかく、「AIとはどんなものか知りたい」くらいならば、基礎の基礎ができるようになるだけでも、ビジネス上のアドバンテージになります。とかく難解だと思われている分野だからこそ、経験ゼロの人と、少しでも体験したことがある人には、雲泥の差が生まれるのです。
【仕事で使えるAIリテラシー】は、AI開発、AI人材の育成・採用を手がけるSIGNATEのデータサイエンティスト・高田朋貴さんが、ビジネスパーソンとしてAIを正しく理解し、活用する方法を解説します。アーカイブはこちら