CAのここだけの話

CA内定通知から3週間で中東移住 必死に学んだ訓練生に教官が最後にかけた言葉

森ほなみ

 SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第102回は中東系航空会社で日本人CAとして乗務3年目の森ほなみがお送りいたします。

中東系エアラインでCAとして働く森ほなみさん。提供:本人
ドバイは一年中気温が高く、冬は「暖かい」と感じる程度なので過ごしやすいです。休みの日はボーダレスなCA友達とお洒落なカフェでお茶をすることが多いです。提供:執筆者
訓練が終わってフライト歴2カ月の頃に飛んだデンマーク。同国最古のスーパー・イヤマ(Irma)で買った食品。お肉はかなり高いと感じましたが、雑貨はとても豊富。コペンハーゲンの街は広すぎないのでタクシーを使わずに徒歩でまわれます。提供:執筆者
私たちは参観フライトのことを「スーピーフライト」と呼んでいますが、そのスーピーフライトで飛んだ南アフリカ・ヨハネスブルク。新鮮なお肉が安く、ジャーキーやルイボスティーが美味しいのでオススメ。提供:執筆者

 CAになるための最初の難関は「訓練」です。今回はその訓練において私が苦労した点を、SankeiBiz読者のみなさん、そしてCAを目指すみなさんにご紹介したいと思います。

内定通知からわずか3週間でドバイへ移住

 CA志望者のあいだで内定通知の電話が「ゴールデンコール:GD」と呼ばれているのをご存じでしょうか。私たちはまず、そのゴールデンコールで「内定」の旨を伝えられ、入社日もそこで提示されます。提示された入社日の都合が悪ければ変えてもらうことも可能ですが、私はゴールデンコールから3週間後にドバイへ移住しました。

 入社日に合わせて移住するのですが、たいていはその2日前から前日までに引っ越しを済ませます。日曜日に本社にあるホールで入社式をして、訓練で使う分厚い教科書や訓練中の制服となるポロシャツを数枚受け取ります。そして翌日の月曜日からさっそく訓練が始まるのです。

序盤から徹夜の毎日

 まずは機体の勉強です。航空会社によって使用している旅客機の種類は違いますが、私が勤める航空会社ではB777とA380について学びます。それぞれ1週間ずつ時間が設けられていました。私は、この機体の勉強の段階で既に徹夜生活を送るほどに大変な思いをしていました。毎日深夜まで機体について勉強し、早朝に当日習う範囲を予習する具合です。

 機体の訓練は座学もあれば、皆さんが想像するようなシミュレーターを使った緊急時の対応を学ぶものもあります。習うごとにその範囲のテストがあり、合格するには80%以上のスコアをとらなければなりません。習ったことを復習するために、インストラクター(教官)や同期の前で一人ずつ実演することも多くありました。

同期との助け合い 本当に必要な英語力とは

 もちろん訓練は、すべて英語で行います。私の同期は全員、国籍や第一言語が違うので、授業態度や質問するタイミングが異なり、訓練時からインターナショナルな雰囲気を感じました

 その同期たちとの仲は良好で、訓練の時間以外でも一緒に過ごしました。トレーニングカレッジ(訓練所)か本社のコンピュータールームで勉強をする事が多かったのですが、私に付き合って毎日隣に並んで一緒に勉強してくれたり、分からないことはチャットグループに投稿して全員でカバーし合ったり。

 実演訓練の際、緊張で手順や注意点をド忘れしてしまったら、インストラクターに教わるより先に同期同士で「ここ、こっちだよ!」「そこに手をついてはダメ」と助け合った記憶があります。

 訓練で必要な英語力は、IELTSやTOEICの点数が重要ではなくリスニングやスピーキングといった英語力が重要になるのではないかと個人的に思います。もちろん分厚い教科書を読み切るためにはリーディングも必要ですが、訓練ではインストラクターの話を聞いて理解するだけでひとコマが終わる場合がほとんどで、教科書はクラス終了後に読むためにページに付箋を貼る程度でした。

テストで時間のかかった訓練生に教官がかけた言葉

 機体のテストは同期の誰一人として欠けることなくクリアすることができました。機体の後には薬の知識、ハイジャック時の対処法、サービスなど約2カ月の訓練が待っていました。同期と協力し合って全員で合格し、空を飛べたことが本当に嬉しかったです。

 最初の頃の私は、同期の誰よりもテストで時間がかかるうえ満点をとることもできませんでした。しかし、一番最後のテストでは100点満点。さらにそのテストでは同期の誰よりも早く終えられたことで、インストラクターから「あなたをここ(トレーニングカレッジ)から送り出せることを嬉しく思う」というお言葉をいただくことができました。

 私は機体の訓練で苦労しましたが、同期のウクライナ人はサービスで苦労していました。どこでつまずきそうになるかは人それぞれですが、「先輩方はこの訓練を乗り越えて一人前のCAとして飛んでいるんだ。自分もやればできる」と思いながら乗り切りました。

 ちなみに、テストの点数が80%以下の場合は2回目の追試があり、さらにその追試にも不合格となるとリバッチと呼び訓練をやり直すことになります。これまで共に訓練を受けてきた同期たちと離れ、一週間後に入社した後輩たちのバッチ(一団)に入って訓練をやり直すそうです。また、そのリバッチ(訓練をやり直す)を3回繰り返すと強制帰国させられると聞いています。

なんと、訓練終了3日後には空へ

 すべての訓練を終了した後、私は3日後に飛び始めたと記憶しています。

 1便目と2便目は「スーピー(supernumeraryの略)」と呼ばれる参観フライトです。制服を着て乗るものの乗務はせず、先輩方の動きを見たり、離陸と着陸時にはコックピット内でパイロットがどんな風に仕事をしているのか、コックピットからの風景を見たりします。私の勤務する航空会社ではそのスーピーの機会を二便もらえるのです。

 それ以降は、しばらくは半人前ですが、乗務員として空を飛びます。私の経験談でよろしければ、またの機会にその後の話ができたらと思います。

 最後までお読みくださりありがとうございました。皆様と空の上でお会いできることを、または同じ会社で客室乗務員として一緒に飛べることを楽しみにしています。

兵庫県出身。高校卒業後にイギリス留学を経て某中東系エアラインに入社。内定から3週間で拠点を日本からドバイに移す。現役CAとして、乗務歴3年。最近はカレーが好き。Instagram:y.h_116

【CAのここだけの話】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら